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パメラの考え

 ティステはテリベル公爵令嬢。そんな彼女の優しさと人柄はテリベル公爵家の評判を押し上げるのに大いに一助したが、それは人を取り込んで反乱を起こすための下地だった――それがティステに適用された罪目。


 正確には反乱を図ったのはテリベル公爵であり、ティステは公爵の娘としてそれを積極的に助けたという名目で審判された。


「でもティステ様はテリベル公爵の逆心を全然知らなかったじゃないですか」


「それはそうでしたけれど、セイラさんはどうしてそれを知るんですの?」


「言ったじゃないですか。ティステ様は〝ゲーム〟の第一作目の悪役でしたからね。思ったより描写が詳細だったんですよ」


 そもそもティステは父と仲が良くなかった。他人を権力のための道具と見て、威勢を拡張することだけに血眼になっていた父を好きになる理由などなかったから。ティステを王子の婚約者にしたことさえその一環に過ぎなかった。


 パメラは額を指先で触ったままため息をついた。


「でもあの時の父上……公爵の逆心は本物でした。私自身がやられたことを許したり理解してくれるつもりはありませんけれど、そこまで否定することはできません」


 パメラとして受けた教育の中には当然歴史の教育もあった。その時学んだが、ティステが死んだ後テリベル公爵は実際に反乱を起こした。罪目が罪目だから、ティステの処刑は公爵を追い詰めることになったのだろう。


 もちろん、娘をそのような濡れ衣で失った公爵が窮地に追い込まれ、本来の計画になかった反乱を起こしたと弁解することもできるが……前世で彼の娘だったパメラなので、むしろその言い訳が話にならないということを知っていた。逆心を抱いたという話を聞くやいなや納得するほどの人間だったから。


 改めてイライラしたが、パメラはいったんその感情を紅茶一口に溶かして流した。建設的な話が少ないこのようなテーマよりは、他に話すことがあったから。


「それより先の話に戻りましょう。アルニム侯爵家の令息についてですが……ゲームではストーリーが始まってからようやく暗躍が明らかになったと言いましたわね?」


「はい。ストーリーは私とパメラ様が十六になった年に始まりました。まだ何年か残っています」


「彼がもっと早くからリヴィに介入した可能性は?」


 セイラは拳を口に当てたまましばらく考えた。目を閉じて眉間にしわを寄せたまま「うぅぅぅぅん」と悩む姿は少し可愛かった。パメラは思わず微笑みながらその姿を見た。


 結論はすぐに出た。


「多分十分あると思いますよ? そもそもベイン殿下のその性格を形成した最大の要素はカーライル先生の魔法でした。そしてカーライル先生がその程度の影響を及ぼすためには攻略対象者ハゴールの協力が必須です」


「……どうやら私も知らないうちに大変お世話になったようですわね。これはちゃんと返してあげる必要がありますわ」


 セイラの肩が上下した。


 パメラの口は笑っていたが、目が全く笑っていなかった。その上、もぞもぞと漏れる魔力から殺気さえ感じられた。


 セイラは嫌がるはずの攻略対象者ハゴールに少し同情した。




 ***




 セイラとの話が終わった後、パメラはアレクシスを連れて皇城の廊下を歩いていた。


 もちろん沈黙したままではなかった。


「アレクシスさん。先ほどのお話、どう思いますの?」


「意外な情報が多すぎて正直混乱しています。パメラ様とセイラ様の転生については特に」


 何も言わなかったが、当然何も考えなかったわけではない。前世だとかゲームだとか信じがたい話の連続だったと思ったし、率直に言って呆れるというのが彼の本心だった。


「もしお二人に初めて会った時そんな話を聞いたとしたら……無礼を冒して怒鳴りつけたはずです。とんでもない妄想はやめてくださいと」


「あはは。仕方ないですわね。正直、私自身も混乱していました。ところで今そうおっしゃるということはもしかして信じるという意味ですの??」


「……まだ混乱していますが、信頼と疑念のどちらに近いかというと信頼に近いです」


「あら。意外ですわね」


 パメラは目を丸くして心からそう言った。しかしアレクシスは正面を凝視したまま冷静に話した。


「パメラ様は自分を見るやいなやアルラザール・テルヴァを思い浮かべました。それ以外にもパメラ様が感じている不思議な既視感や違和感などの原因が転生だったというのであれば一応納得はできます。証拠は乏しいのですが、少なくともそんなことを冗談でおっしゃる御方ではないと判断しましたので」


「あら、ありがとう。そう言ってくれて嬉しいですわ」


「ですが一つ伺いたいことがあります」


「ええ、どうぞ」


 アレクシスは歩きながら視線だけ動かして周りを見回した。普通の廊下は秘密の話をするにはあまり良くなかったが、人の気配は飛び飛びパトロールをする衛兵程度だった。


 この程度ならパメラが自分でうまく話を選ぶと判断し、アレクシスは一番聞きたかったことを尋ねることにした。


「これからどうなさるご計画ですか? 結構複雑な状況だと思いますが」


 パメラはそれだけで彼が何を質問しようとしているのか理解した。


 パメラにとって、アディオン皇帝が前世の仇であり現生の父であることは自明な事実。それについてセイラの前では適当にごまかしたが、アレクシスは彼女に何か考えるところがあると感じた。


 それが事実かどうかの確認を含めて質問したのであり、パメラもその意図を理解した。


「まだはっきりとすべてを決めたわけじゃありません。けれどどちらの〝私〟の気持ちも無視するつもりはありません」


「……了解致しました」


 アレクシスは理解した。パメラは少なくとも前世のことをただ許すつもりはないと。


 それを理解した以上、アレクシスとしても必ず言っておかなければならない言葉があった。

読んでくださってありがとうございます!

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