決着と過去
――用兵魔法〈十字砲火〉
――変化魔法〈百花繚乱〉
パメラの砲門が翼のように並び、カーライルに向かって発砲した。カーライルは数百発の魔弾を撃ち、そのすべてを多様に変質させる魔法で応酬した。
火、水、氷、稲妻、岩、風。そんなわかりやすいものから、幻覚や呪いや空間操作など複雑な効果に至るまで。あらゆる力を秘めた魔剣と魔弾が交差し続けた。二人の間の空間はあっという間に数百種類の魔法が狂って暴れる地獄に変わった。
その中を、パメラは一片の迷いもなく突進して横切った。
「はあっ!」
閃光のような突進と一閃。カーライルはまさかパメラが正面から突進してくるとは思いもしなかったし、そのため対応が少し遅れた。慌てて反った頭の前を刃が擦れながら前髪を数本切り取った。
先端が切られた前髪から雷電が噴き出した。
「うおぉっ!?」
カーライルは前髪を〝変化〟させて雷電を押し出した。しかし雷電は瞬く間に巨大な放電を起こしながらカーライルを脅かした。
「小細工を!」
――変化魔法〈妖精の刃〉
カーライルはパメラの魔法の一部を奪い変質させた。無作為に変化する数多くの刃が雷電を相殺した。同時に周辺の空気もカーライルの力で変質してパメラに浴びせられた。
「小細工の塊である適性を持ったくせに何を言うのよ」
パメラは魔法陣を描いた。カーライルの〈妖精の刃〉が醸し出す数多くの魔法の刃を完璧に相殺する効果があふれ出た。
するとカーライルは〈妖精の刃〉を微妙に変化させた。無作為だったパターンがパメラの魔法に対応する形で再構築され、いくつかがパメラの頬をかすめた。
本来は使用者さえまともに把握できない魔法である〈妖精の刃〉を思い通りに変化させる姿にパメラは感嘆した。予想通りとはいえ素晴らしい実力だったから。
その思いを敬意として込め、最速の次手を放つ。
――斬撃魔法〈残響の線〉
さっきパメラの剣が切った空間が鋭く閃き、カーライルの魔法が両断された。最初からこの状況を前提にして斬撃の魔力を空間に残留させた罠だった。
カーライルはすぐに空いた空間を埋めるために魔法陣を描いたが、パメラの追撃がもっと早かった。
単純明快な拳だった。
「がはぁっ!?」
パメラの迅速かつ正確な正拳がカーライルのみぞおちを強打した。彼女の手を起点に魔法陣が描かれた。
――拘束魔法〈封魔の鎖〉
魔力を封じる魔法の鎖がカーライルの全身を縛った。華麗に暴れていた〈妖精の刃〉が跡形もなく消えた。
カーライルは鎖に縛られたまま歯ぎしりをした。
「くっ、こんな野蛮な拳振るいなんて……」
「これは戦いでしょ。正直に魔法の勉強だけをする講義室の実習のようにしてくれるはずがないじゃない」
カーライルは悔しそうに歯を食いしばった。その表情を見て何を感じたのか、パメラは失笑しながら彼の頭を手で握った。
「また『万能』がなんとかティステがなんとか言いそうだから、その前に貴方に現実を教えてあげる」
「何を……」
「見ればわかるわ」
――記憶魔法〈回想〉
記憶を巻き戻して見せる魔法。パメラはそれで自分の記憶をカーライルに一方的に注入した。
カーライルの目に見えたのは――。
「罪人ティステ。最後に残す言葉はあるのか?」
信じられない。――それがティステ・ハリス・テリベルの率直な考えだった。
広場全体が見渡せる高い壇上。縛られたままひざまずいた自分と、自分の鋭さを発揮する犠牲者を待っている巨大な刃。そしてその刃を解放するための執行人。
これらすべてが自分の首を切るために用意されたことも、厳正な目で自分を審判する者が自分の婚約者である王子であることも。ティステには信じたくない現実だった。
「殿下、私は本当にないです! 女神に誓ってそんなことはしていません!」
「すべての証拠がそなたを指している。この状況でどうやって潔白を信じろというのか?」
「殿下、私は決して……!」
「もういい。すでに判決は下された」
王子の傍に一人の少女が近づいてきた。彼女は悲しそうな表情で王子の手を撫で、王子も同じ表情で彼女の手を取り合った。だが王子の眼差しはティステを振り返ったとたん再び厳しくなった。そして少女は暗い表情でティステを眺めるだけだった。
お前が私にどうやって。そんな気がして、ティステの頭の中に怒りが込み上げてきた。
友達だと信じた。王子にとっても、自分にとってもいい理解者だった少女。だがティステが友達だと純粋に信じていた間、あの少女は後ろで王子と二人だけの時間を持った。そしてティステを今この場に来させた濡れ衣もあの少女から始まった。
「こッの……貴方たちがどうして私にこんなことをするんですの!? 信じたのに!」
忌まわしい裏切り者たち。
政略結婚の婚約者。愛してはいなかったが、未来の王妃として一生懸命尽くした。そして王子と自分の役に立ちたいと思う少女にも役に立とうと努力した。二人も自分の心に応えてくれていると信じた。
〝そなたが王妃になってくれれば、この国の未来もより良い方向に進むだろう。楽しみにしている〟
〝ティステ様こそ王子殿下の伴侶になるべき御方です〟
そう言ってくれた二人が、今は自分の処刑を主導していた。信じたくない裏切りだった。
だがいくら糾弾しても、訴えても、怒っても……何も変わらない。偽りの罪に王子は断固とし、民は怒っていた。この場に集まった皆が彼女の死を叫んでいた。
まるで世の中の皆が自分の死を望んでいるような状況。逃げられないことに気づき、ティステは結局諦めた。
「……ええ、いいですわ。貴方たちがずっとしらを切るのなら……仕方ないでしょう」
「受け入れるのか?」
「いいえ。でも私が助命される余地がないようですから」
死ぬ前の最後のプライドと虚勢。心では呪いの言葉を浴びせかけていた。
呪ってやる。死んでも呪ってやる。未来永劫、貴方たちの子孫まで不幸になることを願う。
ギロチンに体が固定され、処刑が執行される最後の瞬間まで――ティステは裏切り者たちを呪い、また呪いをかけた。
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