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乱入

 ――斬撃魔法〈世界に刻む線〉


 巨大な斬撃がスリーブロスの背中を切り裂いた。


「クルァッ!?」


 大事な臓器には届かなかった。しかし一撃で岩の甲殻を切り、骨にも少し届くほどの威力だった。巨体に相応しく大量の血があふれた。


 斬撃を放った人影はセイラの防御魔法の中に着地した。ベインとセイラはその人を見て目を見開いた。


「姉君……!?」


「パメラ様? ここはどうして……」


「どうしてって、当たり前なことを聞くんですわね。弟のバカなことを防ぎに来ました。アレクシスさん、ちょっと防いでください」


「御意」


 防御魔法の外に現れたアレクシスは地面に剣を刺した。そこを起点に巨大な魔法陣が展開された。


 ――氷結魔法〈極地の城壁〉


 巨大な氷の壁がスリーブロスを閉じ込めた。スリーブロスは苦痛と怒りで激しく暴れ抵抗したが、アレクシスの氷壁は強力な魔力と堅固さでスリーブロスのもがきを遮断した。


「自分の力では長くは持ちこたえられません」


「ありがとう」


 パメラはベインを見た。感情が全く感じられない無表情だった。だが眉をひそめて不満を露骨に表わすベインの顔を数秒間黙って見て、ふとため息をついて視線をそらした。


「……やっぱり貴方は父上とは違うわ」


「今俺を侮辱しているのですか?」


「褒めてるのよ、バカ」


 パメラはスリーブロスを睨みつけた。討伐に参加するという意思をうかがわせる態度だった。その姿がベインをさらに怒らせた。


「邪魔しようとしているのですか? あいつは俺が討伐します!」


「ほっといたら死んでいたはずよ、貴方」


「俺が倒せます!」


 その瞬間、パメラの右手が輝いた。その手を模した魔法の拳がベインの頬を殴った。彼が倒れるほど強く、ベインとセイラが反応する暇もないほど速く。


「がはっ!? 何が……」


「パメラ様!?」


「これ以上私を怒らせないでほしいんだけど」


 魔法の拳がベインの胸ぐらをつかんで持ち上げた。


 パメラは再びベインに視線を向けたが、今回はさっきの無感情な表情とは違った。今回は非常に複雑に感情が入り混じって、本音を察しにくい様子だったが……ベインの態度に対する苛立ちは明らかだった。


「分別のない話はやめなさい。直接出会う前から魔力を見れば分かったでしょ? スリーブロスは貴方とセイラさんの力だけで耐えられる魔物じゃないのよ」


「いいえ、できます。だから乗り出したのです。俺が討伐しなければなりません!」


「私とアレクシスさんも二人でスリーブロスを討伐することはできないわよ。模擬戦の時、圧倒的に負けた貴方が何の自信でそう言えるの?」


「姉君こそ専門家のふりをするのはやめましょう。あいつは、俺が、倒します!」


「貴方本当に……」


 ベインが目を血走らせながら叫ぶと、パメラの目はますます冷たくなっていった。輝く手に力が入ると、ベインの胸ぐらを握っていた魔法の手にも力が入った。ベインの顔は苦しそうに歪んだ。


 その時、セイラがパメラの腕をつかんだ。


「ちょ、ちょっと待ってください! ベイン殿下がああするのには事情が……!」


 パメラの冷たい視線がセイラに向けられ、彼女は驚いて息を呑んだ。しかし決意を固めた顔で手に力を入れた。


 パメラは「ふん」と呟き、目を閉じた。


「貴方は何か知っているようですわね。そうでしょう?」


「……後で説明します」


「いいですわ。今は論争で浪費する時間もあまりありませんから」


 アレクシスの〈極地の城壁〉にひびが入っていた。すぐ壊れるだろう。


 パメラは氷壁がいつ壊れるかを見計らって、最後に確実に言っておくことにした。


「ベイン、貴方も知ってるでしょ? そのままだと危なかったはずよ。私もスリーブロスを一人で討伐することはできないもの。だから今は協力しようね」


「絶対にお断り……」


「貴方が引き込んだセイラさんまで危険にさらすつもり?」


「……ぐっ」


 ベインは悔しそうに歯を食いしばった。しかしパメラの言葉を認めざるを得ず、彼女も自力だけでは不可能だと言ったことが納得できる線を作ってくれた。


 最初からそれを狙って放った言葉だったので、パメラは密かに苦笑いをした。


「アレクシスさん、行きます!」


 パメラが号令を出すやいなやアレクシスが〈極地の城壁〉を解除した。スリーブロスの巨体と岩の魔法が四人を脅かした。


 しかし、一直線に突進したパメラがスリーブロスの下に突っ込んだ。彼女の魔法陣が作り出した巨大な魔剣がスリーブロスの腹部を突き、直後にアレクシスが作り出した氷柱がスリーブロスを押し出した。


「パメラ様。ご自身が一応護衛対象だということを自覚していただきたいのですが」


「ごめんなさい。私は前に出ないと気が済まない性格なんですもの」


 パメラが冗談交じりに話している間に、セイラの鎖がスリーブロスの動きを拘束した。その上にベインの砲撃が浴びせられた。スリーブロスの甲殻はほとんど壊れていないが、いらだたしがる咆哮が空気を震撼させた。


「腹を刺した魔剣も浅かったですわ。迅速に行きましょう」


「かしこまりました」


 アレクシスが前に立って、パメラがその後にぴったりとついてくる。事前謀議した隊形を取って突進している間、パメラは自分の剣の上に魔法陣を描いた。


 ――魔剣魔法〈斬岩の刃〉


 パメラの剣が岩を斬る魔剣となった。するとスリーブロスの視線がパメラを正確に睨んだ。


 パメラは舌打ちをした。


「わけもなく明瞭な魔物ですわ。面倒くさい」


「おかげさまでできる隙間もあるものです」


 ――氷結魔法〈剥製の氷〉


 アレクシスの魔法がスリーブロスの足を凍らせて地面に固定した。その上にパメラの強化魔法まで加えられると、スリーブロスの力でも簡単に抜け出すことができない拘束になった。


 しかしスリーブロスは足を拘束された程度で制圧されるザコではなかった。


「グオオオォォォオオ――!」


 周辺一帯の土地が激しく揺れた。スリーブロスの魔力が地震のように大地を揺るがしたのだ。さらに石と砂が嵐のように吹き荒れた。


 パメラとセイラの魔法が皆を守ったが、パメラは防御魔法にひびが入るのを見て舌打ちした。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

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