スリーブロスとの戦い
――砲撃魔法〈天罰の流星〉
質量のある物体を魔力でさらに強化し、集約された力で発射して大きな力を得る魔法。
ベインはスリーブロスが発射した岩を弾丸にして魔法を発動した。
「行け!」
ベインの砲撃とスリーブロスの岩が激突した。爆発が起きて土ぼこりが立ち上る間にも、ベインは何度も砲撃を繰り返した。岩が枯渇するまで。発射するたびに爆発と共に土ぼこりが広がった。
「はぁ、はぁ……」
ベインは土ぼこりの範囲外に着地した。セイラが立っている場所だった。
ベインが着地するやいなやセイラが走ってきた。
「殿下、大丈夫ですか? ごめんなさい、私が攻撃をきちんと防げなくて……」
「大丈夫だ。それより気を緩めるな。これくらいで終わる奴じゃないぞ」
ベインは剣を地面に突き刺した。地面に巨大な魔法陣が描かれ、様々な大きさの石が空中に浮び上がった。物体を弾丸にすると同時に、地面を掌握してスリーブロスの魔法を遮断する手段だった。
「グオオォォォオ――!」
魔力のこもった咆哮が土ぼこりを払いた。姿を現したスリーブロスが突進してきた。
「止めてくれ!」
「はい!」
セイラは両手を伸ばした。巨大な魔法陣が素早く描かれた。
――神聖魔法〈迎撃の城壁〉
砲身のついた巨大な魔法の壁が現れた。壁がスリーブロスの突進を防いだ。そしてベインの砲撃が壁に到達した瞬間増幅され砲身を通じて発射された。スリーブロスは悲鳴をあげて後ずさりした。
しかし、ベインの表情は明るくなかった。
「クソっ、あれほどダメージが小さいとは……!」
〈天罰の流星〉が残したのは甲殻の浅く広い破損だけ。ダメージがないわけではないが、意味があるとは言い難いほどだ。〈迎撃の城壁〉の力で増幅された砲撃も同じだった。
〈天罰の流星〉はベインの魔法の中でも強力な方だ。そんな魔法でもあれほどのダメージしか与えられなかったなら、ダメージを累積させて倒すよりベインの力が尽きる方が先だろう。そうなるとベインとセイラは二人とも死ぬことになる。
ベインの決断は早かった。
「防御を捨てる。火力の増幅にすべての魔力を注いでくれ」
「それは危険すぎます」
「このままでは我々が先に疲れる。それよりは賭博でもしてみた方がマシだ」
セイラは曇った表情で悩んだが、その時間は短かった。ゆっくり悩む余裕がなかったから。それにセイラも内心同じことを感じていた。
「行きますよっ」
――神聖魔法〈滅魔の牙〉
魔を滅ぼす巨大な力がベインに宿った。説明なんか聞かなくても分かるほど充満していて強力な力だった。
「いいぞ!」
――砲撃魔法〈太陽のファランクス〉
巨大な魔法陣の砲身が数十個現れた。砲身は物理的にスリーブロスの接近を牽制すると共に、増幅された砲撃の雨を浴びせてスリーブロスの甲殻を破壊していた。
スリーブロスは巨大な岩のドリルを作り出した。正確に砲身の数と同じ数量だった。そのうち半分は砲火の火力に敗れて粉砕されたが、残りの半分がベインの砲身を半分破壊した。
「無駄だ!」
壊れた魔法陣が再び再構成された。スリーブロスを包囲する形で。四方から降り注ぐ砲撃がスリーブロスの動きを制限する間、ベインは弓を引くような姿勢を取った。
前に出した左手から流れ出た光が弓の代わりに精巧な魔法陣を描き、彼の頭の上で巨大な魔法陣が一列に整列された。魔法陣の間をつなぐ光が巨大な槍の形状を作り出した。
「俺の二番目の最強だ。食らえ!」
――砲撃魔法〈アフラナスの神槍〉
アルトヴィアの神話に伝わる太陽神の武具。その名前を取った魔法がスリーブロスの体を貫いた。真ん中ではなかったが、肩とわき腹を長く横切る大きな傷だった。
「よし!」
スリーブロスの岩の甲殻が溶けて溶岩になり、肌にも大きなダメージを与えた。それを確認したベインは拳を握りしめて喜んだ。
しかし、それは生半可な喜びだった。
「グオオォォォ!」
魔力のこもった咆哮がベインとセイラを襲った。物理的な被害はなかったが〈太陽のファランクス〉の魔法陣砲身が壊れ、二人の体が麻痺した。
溶けて溶岩になった甲殻が地の岩と混ざり合った。そして無数の魔弾となって二人に浴びせられた。
「対応します!」
セイラは三つの魔法陣を描いた。そのうちの一つが輝き、強力な防御壁を作った。〈護城のゆりかご〉だった。
岩と溶岩の魔弾のほとんどは〈護城のゆりかご〉を突き破ることができなかった。そして壁を突き破るほどの魔弾には――。
――神聖魔法〈魔を縛る鎖〉
〈護城のゆりかご〉の魔法陣の光が消え、他の魔法陣が輝いた。魔法の鎖が魔弾を個別に束縛した。それで大きな魔弾をすべて無力化すると再び魔法陣が転換され〈護城のゆりかご〉が発動した。
ベインはそれを見て感心した。
「すごい技術だな。いつそんなことを学んだか?」
「パメラ様の多重魔法を見て、なんとか真似してみたんです。私はまだ三つを一つずつ使うのが限界ですが――あっ!?」
飛んできた岩の弾幕が突然爆発した。岩が粉々に砕け散り、ほこりがいっぱいに広がったのだ。単純に視界だけを隠しただけでなく、魔力を含んだほこりが魔力の感覚まで撹乱した。
スリーブロスの巨体が土ぼこりから飛び出した。
――神聖魔法〈巨人殺し〉
巨大な魔法の盾が現れた。巨体の存在を防ぎ制圧することに特化した魔法だった。スリーブロスが衝突すると盾が大きく揺れたが、なんとか最初の激突は防いだ。
「そのまま防げ!」
――砲撃魔法〈太陽の槍〉
ベインの砲撃が〈巨人殺し〉を通過してさらに強くなった。それはスリーブロスの腹部に命中した。しかしその一撃は腹部の甲殻をある程度破壊しただけで、内部までは届かなかった。
「ああっ……!」
「大丈夫か!?」
盾に恐ろしい圧力がかかり、ひびが入った。それを維持していたセイラにも負担が伝わった。セイラは他の二つの魔法を廃棄し全力を尽くして〈巨人殺し〉を維持したが、スリーブロスの巨体と魔弾が繰り返し激突すると盾のひびがますます大きくなった。
「チッ!」
ベインは舌打ちをしながら魔法陣を描いた。しかし、スリーブロスを直ちに撃退できるような魔法をセイラの支援なしに使うことは不可能だった。
それを自覚して歯を食いしばった瞬間――人影が飛び込んできた。
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