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疑いと説得

 謁見の間での仕事からしばらくして、パメラはアレクシスと共に皇居内の一室にいた。世話をする人も護衛する人もパメラの宣言に当惑したが、彼らを皆退けて正真正銘たった二人だった。


 実は当惑したのはアレクシスも同じだった。


「気になることが多いような顔ですわね。質問を許可しますわ」


 パメラはまずそう言った。言っておかないとアレクシスがいつまでも口を開かないと直感したから。


「なぜ自分なんかと単独面談するとおっしゃったのですか?」


「気になることがありまして。貴方もそうだと思いますけれど?」


「なぜそのように判断されたのですか?」


「自主的に懲戒を要請したこと。私から遠ざかるためにわざとしたんですわね?」


 アレクシスがパメラの卒倒に関与したという証拠はない。むしろそうではないという目撃談だけがあった状況であり、パメラがアレクシスを見るやいなや倒れたのはただ偶然と見なされたのだろう。騎士団長の「どうせ些細な真似ですからね」という言葉もそれを意識して言ったのだろうし。


 では、なぜアレクシスはあえてそのようなショーを行したのか? パメラはその質問に自分なりの答えを出した。


「些細で形式的な懲戒でも一旦下されれば、貴方を私の近くからできるだけ排除する形で配置されるでしょう。あるいは貴方自身が道義的な責任を感じるなどの言い訳をすることもできるだろうし。どっちにしても、私との接点を遮断するのが目的なら悪くない方法ですの」


「……殿下はご十歳だと聞きましたが。かなり年に合わない言い方ですね」


「そういうことはよく言われましたけれど、貴方も十三歳だと聞きましたわ。そんなことを言う年じゃありませんでしょう。それより話題を無理に変えないでほしいですわ」


 パメラはしばらく黙ってアレクシスの目を見た。


 何を考えているのかさっぱり分からない無感な瞳だった。それはパメラにとって非常に不釣り合いに思えた。単に容姿に合うかどうかの話ではなく、もっと内面的な……()の顔であんな瞳を見せているというのが適応できなかった。


 そう思った瞬間、パメラは突然一つの事実を思い出した。


「アルラザール」


 パメラが倒れる直前に口にした名前。パメラはそれを覚えて話してみた。


 アレクシスから目立った反応はなかった。しかし名前を言及した瞬間、アレクシスの肩がかすかに震えたのに、パメラは気づいた。


「アルラザール……アルラザール・テルヴァ。そういえば貴方ととても似ている人でしたわ」


「そうなんですか。不思議な偶然があるんですね」


「アルラザールには弟がいました。ちょうど今年で十三になりましたわね」


「そうなんですか。自分と同じですね。友達になれると思います」


 アレクシスは平然としらを切った。パメラはそろそろイライラしてきたが、ここで本当にそれを出したら何も得られないだろう。


 そのため、パメラは直接ぶつかってみることにした。


「私が倒れる直前にアルラザールの名前を呟きました。貴方が私を避けようとするのはそのためじゃないでしょうか?」


「自分は知らない人です。自分がどうしてそんな人のために殿下を避けるというのですか?」


「アルラザールは魔族ですから。そして貴方はアルラザールに似ています」


 その瞬間、アレクシスの表情は明らかに歪んだ。


 魔族。人間に似ているが、人間よりはるかに巨大な魔力と魔法の才能を持つ種族である。そして長年人間と対立してきた敵対種族でもある。


 人間にとって魔族は恐怖の対象。そんな魔族と家族というのは……。


「自分がそのアルラザールという者の弟だということですか? 自分は騎士団長の息子です。それは騎士団長を疑っているお言葉です」


「騎士団長が疑わしいのかもしれませんし、貴方が養子の可能性もありますわ。騎士団長なら貴方を養子にする可能性が十分にありますの」


 パメラは断固として言った。


「アルラザールは魔族であることを隠した騎士で、騎士団長はすでにそれを知っていましたわよ。ですがアルラザールは他人の陰謀のせいで魔族だということがバレ、結局それによって処刑されました。もし貴方がアルラザールの弟なら、騎士団長が貴方を同情して養子縁組した可能性は十分ありますの。騎士団長はそれくらいお人好しですから」


「……」


 アレクの拳がぶる震えた。感情を明白に表す反応だった。それだけでなく、パメラを睨む眼差しに明白な敵意が宿った。


「殿下のお言葉が……事実だと仮定してみましょう。そもそも殿下がどうやってそれを知っているのですか? アルラザールという騎士が騎士団の記録にあったのは事実ですが、彼が亡くなったのは殿下が生まれる前のことです。肖像画も残っていませんし、騎士団のタブーのようなものになって言う者もいません。なのに誰から彼のことを聞いて、自分の顔が似ているという判断はどうされたのですか?」


 パメラはその質問にすぐには答えなかった。


 どうして分かったのか。その質問にはパメラもはっきり答えられなかった。彼女自身も何が起こったのか混乱した状態だったから。説明する言葉はあったが、彼女自身がそれを信じるのも確信するのもできなかった。


 パメラは悩んだ末に決めた。正直に言うと。


「率直に申し上げます。私が貴方を別に呼んだのは、その質問にきちんとした答えを得るためですの。私も混乱しているんです。この記憶が何を意味するのか……どうして私にあるのか。だから正直におっしゃってください。貴方とアルラザールがどんな関係なのかを」


 倒れる時にパメラの頭の中からあふれた、誰のものか分からない記憶。その記憶自体が断片的で曖昧な部分が多かったため理解不能だった。それさえもその中で鮮明だったものの一つがアルラザール・テルヴァの顔と名前だった。


 アレクシスはアルラザールの子ども時代ではないかと思うほど似ており、なぜかパメラを避けようとした。魔族であることがバレて処刑されたアルラザールの弟であれば避けることも理解できる。だからこそ、パメラはアレクシスを説得しようとしているのだ。


 アレクシスはしばらく悩むように沈黙した後、また口を開いた。

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