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『うさぎのプティラとオオカミ殿下』~満月の魔法とおとぎ話のふたり~  作者: 瑞月風花


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お悩み相談はキャナルさんにお任せ…1


 今は犬っころのお昼寝時間。みんなぐぅぐぅ寝ている。大人顔負けのいびきを掻く子に、なぜかピーピー音の出る子。生きてるのかなと心配なくらいに、動かない子。様々あって、微笑ましい。そして、お昼寝時間は、僕たちの休憩時間でもある。一応今後のこの子達のことを話し合ったり、次の課題が成長に合っているかを話し合ったりもするけれど、今月の人化率の報告も纏めたりはするけれど、ほとんどが雑談。起こさないようにだけ気を付けて、こそこそ話す。


 そして、王族以外の年間人化人数はずっと低迷していること。六人生まれて、たった一人しか人化しないことすらあるくらい。全体の率としては、7割強だけど。


 率を上げている理由で、気になる点は、少子化が進んでいること。まだ一度の出産で一人というオオカミは少ないが、3人が増えている。そして、兄弟数が少ないと人化率が上がる。


 しかし、キャナルさんは人化の子どもを持っていないのも事実である。


 一度、一人、人化したことがあるが、5人兄弟でじゃれ合っている時に事故で失っているのだ。


 だから、今では一緒に育てられないとされているし、大人の一般オオカミと人化オオカミが共に社会で生きていくこともできない。


 力の差が大きすぎるのだ。相手は少し威嚇したつもりだったとしても、じゃれていたのだとしても、致命傷を与えることがある。そして、一般の彼らは人化の複雑な感情を感じ取っても、理解できない。


 キャナルさんの子ども他4名は、良くも悪くも、一般オオカミのまま野生に戻った。

 こんなに明るい人だけど、ここで働く思いは深刻なのだろう。


 だから、早くに人化した子はすぐさま人化用の学校へ通うようになる。ここには、いない。

 それは、プティラの恐怖心と繋がるような気がしてならない。


 力の加減はちゃんとできるし、自分たち王族が一番危険だと分かっているから、怒りにまかせて牙を剥くこともない。父もよく言っている。


『弱い犬ほど良く吠えるのだ。いいか、怒りをあらわにすることは、弱さの印だ』


一般人のオオカミと普通に過ごしているんだし。咄嗟に持った物を壊すこともないし、犬っころを怪我させたこともないし。


 でも、プティラは一般人のオオカミよりもさらに、力がない。怖くないとは言ってくれているけれど……。

 抱きしめた瞬間に、潰れてしまうなんてこと……ないよね……。


 これは、僕の問題なんだけど……。


 そんな雑談も含みながら、お昼寝の犬っころ達にを見守る時間が休憩になっている。


 温かい飲み物を二つ持ってきて座り、キャナルさんの前に置く。「あぁ、すまんなぁ。ダイ君が上司なのになぁ」とキャナルさんはいつも言い、僕は「いいえ。キャナルさんが先輩ですから」と言う。そして、いつもだと、キャナルさんが『今日のお勧めの甘味』を僕にくれるのだけど、今日は違った。


「ダイ君、最近どうしたんだい?」

なぜか先輩のキャナルさんに心配されたのだ。

「えっ? 何か変ですか?」

キャナルさんがニヤニヤしている。こういう時のキャナルさんは、きっと頓珍漢。


「顔が緩いよ」

「ゆるい?ですか?」

そう言われて、自分の顔を触ってみる。いつもと変わらない気がするけれど。

「お嫁さん、可愛いんだろう?」

「なんで分かるんですかっ?」

声が大きくなって、慌てて犬っころ達を眺めるが、よく眠っていた。頓珍漢だと思っていたキャナルさんが、僕の現状を言い当てたことに、まこと驚いてしまったせいで、起こしてしまっては大変。


「分かるよ。ほら、言ってみな。人生の先輩が聞いてやるから」

きっと、いわゆる休憩時間の肴なのだろう。しかし、ちょっと共有したかったことも確かなのだ。


 だって、絶対に仲良くならないと思っていたウサギのお嫁さん、プティラが僕のために夕飯を作ってくれるようになったんだもの。

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