自己紹介
「よし、みな揃っているな。今日は正式なギルドの発足の前に、今回のギルド設立の後見及び依頼人となるシスター・リニからの要請で皆で一度、迷宮へと入る事となった。シジーとミリサリサはシスター・リニとは初めてだったな?」
翌日、俺たちは迷宮の入り口に集合していた。
俺は早朝に無事、礼拝堂へとおもむいて祈りを捧げずみだ。しっかりお祈りポイントは五ポイント確保して、幸運にもお祈りポイントを使用済みだ。
俺の話をきっかけにシスター・リニと、シジーとミリサリサが互いに挨拶を交わしている。皆、ニコニコとして、とても朗らかだ。
──いや、そうでもないか。テルトナが少し表情が固い、か。よし。声をかけとくか。
「テルトナ、大丈夫か? もしかしてケガレか?」
談笑している三人に聞かれないようにテルトナの背後から小声で問いかける。
「っ!」
小声で悲鳴をあげ、ビクッとなるテルトナ。
「あ、すまない」
「レキか、びっくりしたぞ。はぁ……ケガレは大丈夫だ。レキの聖水のお陰でな」
小声で返事をするテルトナ。談笑する三人と俺を交互に見るその視線は、しかしなぜか少し冷たい。
小さく頷き返して、俺は再び皆に声をかける。
「さて、それじゃあ皆の武器の確認と役割の再確認をしたい。まずは俺からでいいか」
そう告げると、俺は腰にさした二振りのサイズ違いのナイフを抜いて、皆に見せる。
一つはマチェットほどの長さ。もう一つはそれよりも一回り小ぶりのナイフだ。
「前衛、希望ってところだ。知っているかもだが、神シストメアから、『健勝』という体が丈夫になる加護を授かっている。ただ、メインアタッカーとしては火力は弱い、と思う」
「じゃあ次は私ね。武器はレイピアよ。錬金術師としては残念ながら戦闘に役立つスキルは二つだけ。そのうちの一つで、回復薬を作れるわ。ただ、自然治癒力を少し高めるぐらいだからあまり期待しないで。もう一つは、『メッキ』よ。少しの間、武器の強度をあげられる」
そういってテルトナが自身のレイピアの刃に手をかざすと、スキル名を呟く。キラキラとした光ともがレイピアの周りを取り巻く。
「あと、勘はいい方だから、役割は中衛かしら」
「ありがとう、テルトナ。どちらも有用だな。テルトナには本人の申告通り中衛を頼みたい。彼女ならうまく全体を見てくれると思う。じゃあ、次はシジー」
「うっす。シジーっす。よろしくっす」
「いや、自己紹介じゃなくてだな──」
俺の突っ込み。皆からはなぜか和やかな笑いがもれる。それだけで場が少し和む。
「あっ、すまないっす。武器は、あの、……これっす」
そういって両手を広げて前にだすシジー。少し恥ずかしそうだ。
次の瞬間、シジーの指先から鉤爪のようなものが飛び出してきた。




