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打ち合わせ

「──というのがシスター・リニから提示された条件だ。俺は受けたいと思っている」

「レキの兄貴、凄いっす! 破格の条件じゃないっすか。これでギルド、設立できるっすね!」

「私も、逃す手はないと思うわ」


 顔あわせが無事に済んだあと、俺はシスター・リニの提案を皆に話していた。

 なぜか最初少し不機嫌そうだったシジーだったが、俺の話を聞くうちに興奮してきたのか、すっかり感心した様子だ。

 テルトナも、今回はふざけた素振りも見せずに肯定的な意見。


 しかし、俺はそこで気がつく。

 ミリサリサが何か言いたそうに、しかし言い出せないという風に黙りこんでいた。


「ミリサリサさん。良かったら意見を聞かせてくれないか?」

「うん。いいの? 私、部外者。だいたい、聖遺物の話とか、私が聞いて大丈夫?」


 じっとこちらを見てくるミリサリサ。

 俺もそんなミリサリサを見返す。


 ──初めて会った時に比べて少しはましだけど、それでもまだ食事にも苦労してきた痕跡が見え隠れしている。これは俺のエゴかもしれないが……


 俺は内心の葛藤を圧し殺してミリサリサにたずねる。


「その質問に答える前に、一つ聞いていいか?」

「どうぞ」

「ミリサリサもシジーと同様に獣人の血が混じっているのか?」

「レキ、その質問は……」


 テルトナがいさめるように口を挟んでくる。

 おろおろと俺とミリサリサを交互にみるシジー。

 その動作だけで答えを言っているようなものだなと思いつつ、俺は本人の口から答えを待つ。


「テルトナさん、大丈夫。そう、私はヒグマの獣人との混血。でも、なぜわかった?」

「あー。教えてくれてありがとう。まあ、一つはシジーと同居しているから、だな」

「なるほど。確かに」

「え、どういうことっすか?」


 当の本人のシジーがあまり分かっていない様子だ。


「たぶん、獣人の混血特有の生活習慣とかがあるのでは? 大変失礼で申し訳ないのだけど獣人というだけで忌避する人もいるから、一緒に暮らすなら同じ獣人の混血の可能性が高いとレキは推測した、ということでしょう」


 わざわざ憎まれ役をかって説明をしてくれるテルトナ。

 俺は無言でそんなテルトナに頭を下げる。


「それで、もう一つ、は?」


 ミリサリサが重ねてたずねてくる。


「あー。その、本当に聞くか?」


 無言でうなずく三人。


「──食事に困ってる様子と、その筋肉のアンバランスさが、な。それに、この前渡した肉串が、すぐに筋肉に変わってるみたいだったから……」


 俺は目線をそらしながらモゴモゴと告げる。

 ばっと腕を胸の前で組み、恥ずかしそうにうつむくミリサリサ。


「あー。レキの兄貴? そういうことを女の子に言うのは、ちょっとどうかと思うっすよ? というかレキの兄貴って、もしかして女の子の筋肉フェチなんすか?」

「いや違うって! ただ俺がそう思った理由の説明をして」

「本当のこと。大丈夫、シジー。それで私が獣人の混血だから意見がききたいの?」


 相変わらず腕は組んだままだが顔をあげてこちらを見てくるミリサリサ。


「正確には少し違うかな。俺はミリサリサにも良かったらこれから立ち上げるギルドに参加してもらいたいと思っている。それで、意見をききたいと思ったんだ」


 俺はミリサリサの反応を見逃すまいと真剣に見つめながらその答えを待った。



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