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ギルド

「それは、俺が加護を持っているからか?」

「はい。加護の存在は、確かに大きな要因です。加護持ちの方とは教会としては友好的な関係を望んでおります。それで、いかがですか? ギルドの設立用に破格の条件での融資をお約束しますよ。事務手続の全面的なバックアップも。それに……」


 リニがもったいぶるように一度そこで言葉を切る。


「それに?」

「優秀な聖女見習いが一人、出向でついてきます」

「見習いなのに、優秀なのか」

「見習いなのに、優秀です」


 振っていた人差し指を自分の頬に当てて、首を傾げながら笑顔を見せてくるリニ。それは、あざとさと、お茶目な可愛らしさの、まさに境界線。


 一歩間違えれば痛々しいそのギリギリを攻める胆力に、俺は尊敬の念を覚えてしまうほど。


「……詳しい条件を、聞こうじゃないか」

「はいはーい。もちろんです。それでは資料のご用意がありますので、このあと、教区事務所までご足労お願いできますか?」

「明日なら」


 俺は、今日はお祈りポイントの検証が入っているのでそう答える。そろそろ再び礼拝堂に行って祈りを捧げる予定の時間だ。


「わかりました。場所はお分かりですか?

  明日は午前中でしたら私もおりますので」

「わかった」


 その後、細々としたやり取りを終えてリニが帰っていく。


 リニを見送ったテルトナがくるりとこちらを向き直ると、口を開く。


「私もバクシーさんのギルドの設立を、一緒に手伝わせてもらえないか」


 俺も礼拝堂に向かうかなと立ち上がったところでかけられた、テルトナの声。


「それは……どうしてまた」

「理由は二つ、だな。一つはバクシーさんには、このケガレのことで恩がある。迷宮調査の護衛の手伝いだけじゃなく、もっと身近で恩を返したいと思ってな」


 そういって自身の首もとを押さえるテルトナ。


「それについては、俺だって対価を貰うんだ。気にしなくていいのに」

「ふふ。ありがとう」


 テルトナの瞳が少し潤んで見えたのは、見間違い、ということにしておく。


「もう一つは、面白そうだから、とかか?」


 俺は湿っぽくなった空気を変えようと、わざとふざけ気味に聞いてみる。


「……ばれたか。稀少な加護持ちで、教会の全面的なバックアップをもらって聖遺物探索をする非正規冒険者のつくるギルドだ。聞くだけで、ワクワクしてしまってな」


俺の意図をくんでのってくるテルトナ。


「ひどいな。俺は見世物じゃないんだがな。だがまあ、その理由の方がいい。俺もこれからつくるギルドに、錬金術師がいてくれるのは心強いよ。これからよろしくな。テルトナ」


 思いきって名前を呼び捨てにして手を差し出す。その俺の手を一瞬戸惑ったように見つめたあと、ぐっと力強く握手してくるテルトナ。


「ああ。よろしく。……レキ」


 テルトナのその最後の声だけ、少し小声だった。



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