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リニの依頼

「迷宮調査の護衛依頼? なんでシスター・リニはそれを俺に頼もうと? 俺はギルドにも所属できていない、しがない非正規冒険者だぞ」


 俺は自分で言ってて悲しくなってくる。しかし、事実は事実。しっかりとその部分はリニへと伝える。

 実際に迷宮に潜る際にギルドに所属しているか否かというのは、非常に大きい。


 基本的に複数人での探索が絶対条件となる迷宮探索において、ギルドの果たす役割は多岐にわたる。

 潜る階層に合致した最適のパーティー編成と将来を見越した戦力育成はもちろんのこと、組織としての経理的事務手続的バックアップの有無は、迷宮探索の成功率を大きく左右するのだ。


 そして大きなギルドほど後ろ楯となり、更にはそこに所属していることが一種の実力の証左となる。


「なかなか面白そうだ。それ、私も混ぜてくれるか」

「いやいや、テルトナさん!」


 意味ありげな笑みを見せてくるテルトナ。その笑みが少しだけ可愛くて、くやしい。それに、俺の秘密については口にしないでくれている。


「いいですよ。よろしくお願いしますね、テルトナ」

「まかせて」


 俺を挟んで盛り上がる二人に、頑張って割り込む。


「──それで、シスター・リニ。なんで俺なんだ?」

「実は、私も加護持ちなんです」

「なに! リニは聖人になったのか! いや、この場合は聖女か。おめでとう。教会でもめったにいないんだろう?」

「ありがとうございます、テルトナ。それで詳しくは教えられないのですが、その加護の関係で、バクシーさんも加護持ちだとわかりまして」


 両手を胸の前で組んで、にっこりと微笑みかけてくるリニ。詳しく教えられないことは笑顔で押しきるつもりのようだ。


 俺はじとっとした視線を返してみる。しかしリニは笑顔で俺の視線を受け止めて、笑みも一切崩れない。


 ──はあ、詳しく説明する気は無いと。本当かどうかはわからないけど、実際に加護をもらった俺としては、この加護というものの有用性は否定できない。迷宮調査の護衛、か。いざとなれば聖水を使えばいいしな。うん、繋がりを作っておくのも悪くはないか


 やれやれと思いながら、半ば引き受けるつもりで質問を続ける。


「それで、何を調査するんだ。それと、調査する想定階層はどこまでだ?」

「ありがとうございます!」


 真面目な顔をしてお礼を伝えてくるリニ。俺の片手をとると、両手でぎゅっと握ってくる。

 そのまま顔を近づけてくるリニ。

 なぜか反対側からはテルトナも顔を近づけてくる。そんな俺たちに、そっと小声でリニが告げる。


「聖遺物を。想定調査階層は、16層から25層です。調査護衛期間中は、教会の全面的なバックアップをお約束します」


 耳元で囁くように告げられた内容に、俺は思わずビクッとしてしまった。



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