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礼拝堂

「ここか。初めてきたな」


 翌日。朝一で、俺は礼拝堂へと来ていた。週一回の聖水のテルトナへの納品が決まったことで、しばらくは金銭的な心配が無くなった。しかし、それもいつまでかはわからない。


 ──なんとなくだけど、しばらく聖水を飲んでいたらテルトナのケガレは治る気がする。まあ、それ自体はとても良いことなんだが。それまでに出来たら別の金策も見つけときたいよな。そのためにも、やっぱりポイントをためて、お祈りシステムのランクアップを狙うべき、だ。


 俺はキョロキョロとあたりを見回す。

 礼拝堂には人がポツポツといて、そこかしこで思い思いに祈りを捧げているようだった。


 俺もさっそく空いている隅を見つけてシストメア様へお祈りを捧げようと構える。ステータス画面を開いておくのも忘れない。


 手を組み、目を閉じると一心に祈り始める。


 ──シストメア様シストメア様。加護をありがとうございます。シストメア様の聖水で、テルトナという女性の助けになることが出来そうです。……こんな感じで、どうかな?


 そっと片目を開けて、ステータスを確認する。


 ──おおっ! お祈りポイントが2、増えている!


 ステータス画面で4ポイントだったお祈りポイントが、6ポイントへと増加していた。


「あとは、どれぐらいの頻度で祈りを受け取って頂けるか、だな。今日は一日使って──」

「コホンっ」


 興奮のあまり独り言が漏れていたみたいだ。咳払いの音に、俺はピタリと口を閉じるとそっと咳払いの音がした方を振り向く。


 シスターが一人。焦げ茶の瞳でこちらを見ている。たぶん俺より少し若いぐらい。

 俺は思わず無言でそのシスターに向かって頭を下げる。


 そんな俺をみて、そっと自分の唇に人差し指を当てるシスター。

 俺も、思わず同じしぐさを返す。


 それを見たシスターが、今度はなぜか少し楽しげな感じに片目を閉じて、ウィンクしてくる。なかなかにお茶目な方らしい。

 俺も慣れないウィンクをギクシャクと返すと、そそくさと礼拝堂をあとにした。


「……びっくりした。なんだったんだろ。まあ、いいか。とりあえず次は一時間後に祈りに来てみますか。それまでどうするかな……」


 そこで、腹の音がなる。


「ああ、丸一日、何も食べていなかった。頑強な肉体でも、さすがにそろそろお腹が空くんだな。よし、お金も少しあることだし、朝市に行ってみるか!」


 俺は暖かな懐をゆっくりとさすると、足取り軽く屋台の並ぶ朝市へと向かった。



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