24-4 世界を変える
「薊、お前は此処で隠れてろ。俺が奴らを引きつける」
薄暗い路地裏に逃げ込み、息も絶え絶えになっていた薊に、親友であった男はそう言って安心させるように笑った。
「バカが! 朔、お前は何を言っている!? あんな奴ら、俺がひと思いに殺してやって……!」
「それは駄目だ。そんなことをしたらお前はすぐに捕まってしまう。ほら、聞いたことがあるだろう。調査室だとかいう、妖怪や悪魔を取り締まることが出来る部署が警察にあるって」
「人間に捕まるのが何だ! お前があのイカれた奴らの囮になるよりよっぽどましだ」
「いいか? 警察に逮捕されるっていうのはお前が思ってるような軽いもんじゃない。周囲には疎んじられて、お前の大切な人達だって苦しい思いをすることになるんだ」
親友――朔は薊に言い聞かせるように穏やかに、しかし手早く話す。例え正当防衛だと主張しても警察はどうしても人間寄りだ。それは全体の人数が違い過ぎるのだから仕方が無い。だからこそむやみに人間を殺せばこの先とても生き辛い人生を送ることになる。
独り身で自由な朔とは違い薊には家庭がある。人間の妻と鬼の血を引く息子、彼らのこの先の人生を考えるのならば自分が囮になるべきだと朔は考えた。
特に彼の妻は元々朔を通じて知り合ったのだ。あまり人間と関わらなかった薊の偏見を改善するべく紹介したら、気付かないうちに親しくなり夫婦になった。
未だに納得がいかない様子の薊の顔を見て、朔は安心させるように彼の肩を叩いた。
「俺はお前みたいに強くねえけど、逃げ足だけは誰にも負けねえ。無事に戻ったら後で何か奢れよ?」
「朔!」
ドン、と朔が薊の体を押す。その直後「居たぞ!」と叫ぶ声が聞こえ、朔はそれに答えるように大きく手を上げた。
「へっ、お前らなんかに捕まるかよ!」
「逃がすな!」
朔に突き飛ばされた所為で死角になって見えなくなっていた薊のすぐ傍を、朔と複数の人間が走り抜ける。その後ろ姿を見て思わず人間達を殴り殺そうとした薊だったが、遠目に見える朔の手がひらりと揺れるのを見て動きを止める。
「また後で」と、微かに振り向いた朔の口元がそう言っているように見えた。
だから薊は耐えた。すぐに人間なんて振り切って朔が帰って来るのを信じて、待って待って、待って。
そして朔は帰ってきた。――見たことの無いような異形に姿を変えられた、変わり果てた姿で。
□ □ □ □ □ □
「桑原愁! 気を付けろ!」
「言われずとも」
薊がまず標的にしたのは愁だった。何やら懐から取り出した札を握りしめた薊がそのまま殴り掛かろうとしたのを、愁は咄嗟に避ける。悪魔でもなければ幽霊に物理攻撃など普通は通用しないが、分かっていてなお攻撃して来たのならそれには裏がある。
「愁、その札は対幽霊用! 持ってる時に殴られたら只じゃ済まない!」
「……伊野神千理。さっきの札のことと言い、貴様何故そこまで知っている」
戦闘に巻き込まれないように隅に寄っていた千理が叫ぶ。その声に反応して薊の意識が彼女に向くが、すぐにその隙を狙って若葉が攻撃を仕掛けた。
振り抜かれた手が薊に当たる前に躱される。しかし勢いが止まらない拳はそのまま傍の壁に衝突し、その壁をいとも容易く破壊した。
「……すごいなあんた。よく今まで自分を普通の人間だと思ってたな」
「ただ力が強いだけだ! そんなやついくらでも居る!」
「いや……いる、かな?」
千理と愁は思わず同時に首を傾げた。父親の怪力が基本ベースになっていて気付かなかっただけではないだろうか。
「居る訳があるまい。お前は正真正銘俺の血を、鬼の血を引く子だ。お前はやはりこちら側だ!」
「……どいつもこいつも、人間だの妖怪だの区別を付けなきゃいられないのか!」
今度は薊の拳が床を割った。破片が目の前に飛び散り思わず腕で顔を庇った若葉は、即座に接近してくる薊に気付くのが遅れ、腹に凄まじい衝撃の蹴りをもろに食らった。
内蔵が潰れかねない衝撃に体が軽々と吹き飛ばされる。そして壁に叩き付けられそうになった若葉だったが、直前で体が不自然に空中でぴたりと止まった。
「今度はこちらの番だ」
自分の体が浮いているという事実に目を白黒するのもつかの間、すぐに地面に落下した若葉は、唖然としながら薊に向かう愁の後ろ姿を見る。壊れた床の破片が流星群のように薊に降りかかるが、しかし薊はそんなものに構わずに札を持った手を愁に振りかぶる。
だが愁は焦らずに今度は薊自身を宙に浮かせてみせた。急に空中で身動きが取れなくなった薊に、愁は若葉を振り返る。
「今のうちにやれ!」
「了解した!」
若葉が折れた肋骨も気にせずに立ち上がり父親の元へ向かう。先程のお返しだとばかりに彼は腹に向かって拳を突き出し――。
「甘い」
「な」
けれどその腕はあっさりと掴まれ、一瞬にして投げ飛ばされていた。眼前目がけて飛んできた若葉を受け止めようと愁の意識がそちらへ向かい、その隙に拘束を解いた薊の右手が今度こそ愁の体に触れた。
「愁!」
「大丈夫……だ」
僅かに肩に擦っただけだった。しかしそれだけでも肩が焼けるような痛みを持ち、愁は警戒するように薊から距離を取った。
二対一だというのに互角どころか押されている。あちらは愁のように遠距離から攻撃出来る訳でもなく札はあるものの武器も持っていないというのに。霊体だから呼吸などしていないはずなのに、妙な焦りを感じて息が荒くなる感覚を覚えた。
「鬱陶しい幽霊だ。さっさと排除し……ああ、そうか。そう言えば……『いざという時は盾になる』んだったか?」
「!」
薊がにや、と薄笑いを浮かべて千理の方を振り返った。
「有言実行してもらおうか」
「やめろ!」
愁と若葉が同時に飛び出す。何とか逃げようと千理が走り出すものの、そんなものは殆ど無駄でしかない。あっという間に近付いた薊が彼女の首に手を伸ばし掛け、しかしぎりぎりのところで若葉が背後からその腕を掴んだ。
「邪魔だ」
だが案の定それはあっさりと振り解かれる。だがそれで生まれた一瞬の隙は、愁が千理の目の前に滑り込む僅かな時間を作った。
けれどもそれは薊の思惑通りでしかない。咄嗟に千理を庇って両手を広げた愁に薊の右手が迫る。当たったら消滅する。けれども最早逃げる余裕もない。そして愁が千理の前から退くことも絶対にあり得ない。
床に叩き付けられた若葉が叫ぶ。半透明の先に迫る拳に千理も息を呑んだ。逃げてと言う時間さえない。無理矢理退かすことだって出来ない。もう何も出来ない千理が目を閉じずにその光景を嫌でも脳裏に鮮明に焼き付けようとする。
愁が消滅する、その瞬間を――。
「な、」
しかし千理が死を覚悟したその時、おかしなことが起こった。
薊の顔が驚きに染まり、不自然に腕がぶれてずれる。再び愁の体を削り取るように掠めた拳は壁に激突し、千理のすぐ横で三半規管を狂わせる爆音が響き渡った。
何が起こったのか分からなかった。何故薊の腕がずれたのか。一体彼に何があったのか。
不意に、千理は視界の端に壁と瓦礫以外のものがあることに気が付いた。薊の拳が貫通する壁、そのすぐ真横に、もう一つ空いた穴から一本の腕が伸びていたのだ。
戦闘直後、若葉が殴って開けた壁の穴。そこから見える腕は千理の記憶のデータベースの中にしっかりとしまわれていた。
「いっっってえええだろ何しやがんだ!!」
「!?」
千理の背後、壁のすぐ裏から怒声が響く。薊が壁から腕を引き抜くとその衝撃で壁は崩壊し、その奥から腕を擦って顔を歪めたツバキが現れた。
「ツバキさん!?」
「ようやくあいつら振り切って戻って来られたと思ったらこれだ。おい眼鏡、命助けてやったんだから感謝しろ。っていうかなんだよあいつの力化けもんかよ??」
あちこちボロボロになっているツバキが薊を見て嫌そうな顔をする。続いて彼はそのまま視線をスライドさせ、牢の中に倒れている華蓮に目をやった。
「悪党、言ったよな……華蓮に傷一つ付けたらタダじゃおかねえってなァ!!」
「……次から次へと面倒な」
額から血を流している彼女を見てツバキが激昂して飛び掛かる。それに苦虫を噛み潰したような顔をした薊はぼやきながらも迎え撃とうと構えたが、その瞬間背後から若葉の蹴りを思い切り食らった。
「ぐ」
「三対一だ! 全員で掛かれば絶対に隙は生まれる!」
二人と三人では意識の割き方が大きく変わる。ツバキの戦闘能力は愁よりも下だが、しかし人数の差というのは大きい。先程まで優勢だった薊がどんどん防戦に追い込まれていく。攻撃しようにもその前に防がなければならない攻撃が多すぎるのだ。
愁の広範囲のポルターガイスト、若葉の力押しの攻撃に、力はそこまで無いが素早く翻弄するツバキ。今まで一度も一緒に戦ったことのない三人だったが、薊を倒すという共通の強い意志が無意識のうちに彼らの行動を最適化する。
余裕と表情を無くした薊が三人の攻撃を捌く。だが徐々に追い込まれ、逃げ場の無い場所で愁の落とした大きな瓦礫に押し潰された。
「勝った、か?」
「いや……まだだ!」
瓦礫の下で動かなくなった薊を見てツバキが安堵仕掛けるがすぐに若葉がそれを制す。嫌な予感がするのだ。何やら腹の底から沸き上がるような血が沸騰するような感覚を。
「……け、るな。ふざけるなよ!!」
「ツバキ!」
その瞬間、薊を潰していた大きな瓦礫が吹き飛びツバキに直撃した。華蓮の居る檻の鉄格子に叩き付けられた彼は頭を強く打ち、意識を飛ばしてしまう。
「人間は……殺す!」
その時、身震いのするような威圧感が襲いかかって来た。
瓦礫の下から起き上がった薊はこれまで以上の圧倒的な力の塊になっていた。頭からは角が2本生え、肌の色が濃くなり、正しく鬼のような形相で二人を睨んでいる。
「親父……」
若葉の脳裏に、不意に不鮮明な過去の記憶が過ぎった。
まだ彼が本当に幼い頃、角が怖いと父親を見て泣いた。そして彼は苦笑しながら出来るだけ本性を見せぬようにと普通の人間のような姿に変化したのだ。
そう、若葉はこの姿を知っている。父親が鬼と人間のハーフであることも、自分がその血を引いていることも知っていた。幽霊だって、昔は見えていた。
だが薊が豹変していくうちに優しい父親の姿を忘れた。暴力を振るう父親と優しかった頃の父親が同じだと思いたくなくて、その思い出も消し去っていたのだ。
父親に関するあらゆる記憶から目を背け、鬼や幽霊のことも忘れて若葉は大人になった。それを今、全て思い出した。
「誠一郎、貴様はどっちだ! 人間か、妖怪か! 人間だというのなら、お前でも――殺す」
「!」
力そのものとも言える存在が若葉に襲いかかって来る。咄嗟にそれを避けようとしても間に合わず、ぎりぎりで愁が若葉を吹き飛ばしたことで何とか直撃は免れたぐらいだ。
形勢は再び逆転した、どころではない。
ツバキが気絶して二対一に戻り、それだけでも苦しいのに相手は先程よりもずっとずっと強い。ほんの少しでも隙を見せればあっという間に命を奪われるだろう。
入れ替わり立ち替わり、二人とも何とか身を守るので精一杯だ。その凄まじい戦闘を見た千理は気を逸らさせない為に一切言葉も発せず動かないことしかできない。頭の中で必死に勝算を見つけ出そうとするものの、狙撃犯の記憶がある所為で余計に絶望的な予測しか立てられなかった。
「っくそ、」
薊の大砲のような拳を若葉が正面から押さえ込む。相手の力が強すぎるてすぐに吹き飛ばされそうになるのを、全身で受け止めて何とか膠着状態まで持っていく。
「答えろ! お前はどちらだ!」
「……だからあんたは、どうして種族でしか人を見れないんだ!」
「人間は人間、妖怪は妖怪だ! それは絶対に相容れない! 異分子は排除される、どちらかしかまともに暮らすこともできない、だから俺は人間を」
「だったら!! 俺とあんたは――二つの血を持つ俺達は、一体何なんだよ!!」
若葉が叫んだその瞬間、突如吹き飛びそうになっていた体に力が漲り、逆に薊の腕を押し返した。
「! なんだこの力」
『よく分からんが間に合ってよかった』
「は!??」
感じたことの無い力にもしや薊のように鬼の力が覚醒したのかと思ったのもつかの間、急に脳内に響き渡った男の声に若葉は訳が分からず混乱した。
「この声、桑原愁か!? なんで頭の中に声が」
『加勢しようとしたら必死になっていたんだが……どうやらあんたに取り憑いてしまったみたいだ』
「???」
『つまり今俺はあんたに憑依している。何やら動きやすくなったしちょうどいいな』
「いや待て待て待て」
「だから……邪魔をするな幽霊!」
ぐん、と若葉の意思とは関係なく体が引っ張られて動き出す。札を持った手が若葉に伸びるのを横に回避し、そしてすぐに跳躍して回し蹴りを食らせた。
明らかに動きが良くなった自分の体に驚いた若葉だったが、すぐに我に返って走り出した。
「良く分からんがこのまま行くぞ!」
「了解した!」
「ふざけた真似を……!」
薊が顔を歪めて若葉と対峙する。久方ぶりに体を得た愁は若葉の体が頑丈であるのをいいことに無茶な動きで立ち回り始める。体を動かすのを愁に任せた若葉はとにかく自分の力を100%引き出すのに集中した結果、覚醒状態である薊にも食らいつけるほどの力になっていた。
「ぐ……」
「クソ親父……あんたは間違ってる! 少なくともあんたは、自分に嘘を吐いて人間全てが憎いと言い聞かせているだけだ!」
「何を……言っている! 人間は悪だ! 俺はやつらを皆殺しにして――」
「だったらなんで真っ先にお母さんを殺さなかった!」
若葉の拳に渾身の力が乗り、薊の腹を貫通しかねないほどの衝撃を与えた。それは、彼がほんの僅かでも隙を作ったから与えられた一撃だった。
くの字に折り曲がった薊の体が壁に突き刺さる。壁にめり込んで動けなくなった薊の前に若葉が立ち塞がった。
「家を出て行く前、あんたは何度もお母さんを殴った。一度でもまともに食らったら死ぬほどの力を持ちながら、何度も。けどお母さんは死ななかった。あんたが死なせないように力を込めなかったからだ」
「……」
「あんたは人間を恨んでいるくせに、それでもお母さんのことは恨みきれなかった」
「……違う」
「ならなんで人間を“減らす”ことにしたんだ。ほぼ全ての人間を殺すのならわざわざ火種になる少数を生かす理由もない。……まだ生きて欲しい人間があんたにも居たんじゃないのか」
「違うと言っている!」
「俺はあんたの血も引き継いでいるが、殆ど人間だ。殺すべき対象だ。なのにどちらだと何度も聞く。あんたは俺に妖怪だと答えて欲しいんだろう。俺を、殺したくないから」
違うと薊が何度も叫ぶ。しかしそれ以外の反論の言葉は一切出ず、そして壁から体を引きずり出す程の力も湧いて来ない。
「違う……違う。人間は殺すべきだ。あいつらが居なければ、朔は今も生きていた。あんな元の形も分からないような化け物にされることもなかった」
「けどあんたは今、同じことをしているだろう」
愁が若葉の体から這い出て口を開く。薊の事情を深くは分からずとも彼が人間をぐちゃぐちゃに纏めた怪物を作ったことは知っている。
「あの人間達や、或真の怪物を作ったのはあんた達なんだろう。あんたはその大嫌いな人間と同じ所まで落ちた。復讐だとか理由を付けたところで同じことだ」
「……知っている。俺はとうの昔に落ちるところまで落ちている。だがそれは必要なことだった。この世界を変える為に」
「何が、世界を変えるだ! そんなもの変えて何になる!? 自分勝手に殺し尽くして、殺戮の後に出来た世界で平和に生きられると思っているのか!」
その後に訪れるのは、また復讐だ。
「生き残った人間が復讐して、また殺して殺して、繰り返して……誰も居なくなるだけだ」
「ならば我々にだけ耐えろというのか! いつまでも人間の影で息を潜めて、理不尽に殺されても何も言うなというのか!」
「違う! やり方がおかしいんだよ! どうして殺す以外の発想が無いんだ。妖怪を認めて欲しいんならまず存在を知ってもらう、妖怪を守る法が無いのなら作ればいい!」
「は……」
「あんたが世界を変えたいっていうなら、俺が代わりに変えてやる! 誰もが無事に生きられるように少しずつでも、変えてやる」
薊がぽかんと口を開く。妖怪の存在を認知させる。法律を作る。世界中の人間を殺そうとした薊ですらその荒唐無稽な発想に戸惑った。
「……出来るわけがないだろ」
「やってみなくちゃ分からないだろ。妖怪や他の人外を知っている人間はゼロじゃないし、協力してくれる人は必ず現れる」
若葉がちらりと牢へ視線を送る。倒れている華蓮と、彼女が怪我をしたことに激昂したツバキ。種族を越えて親しくしているのは彼らだけではないだろう。
「世界の常識なんて十年もあればあっという間にひっくり返る。人間も妖怪も対等に生きて暮らし、そして悪いことをすれば裁かれる。そんな日がいつか必ず訪れる」
「夢物語だ……甘すぎる」
「あんた達の理想論だって同じようなものだろ。だったら物騒じゃない分こっちの方がましだ。だから手始めに、俺は平等にあんたを捕まえる」
馬鹿馬鹿しいと投げやりに言う薊の手首を掴んで若葉が手錠を掛ける。その間、抵抗は一切無かった。
「人間だろうと妖怪だろうと殺せば罪だ。薊、お前を逮捕する」
「……もう体が動かん。負けは負けだ。好きにしろ」
薊の頭の上から角が消える。ぐったりと体から力を抜いた薊を連行しようと、若葉は壁にめり込んだ体を引き抜こうとする。
「ん?」
「何、この音」
だがその時、何処からか低い唸り声のような何かが聞こえてきた。ずずず、とどんどん迫ってくる音に意識がある全員が首を傾げ、そして気付いた時にはもう手遅れだった。
刹那、戦闘で壊れかけていた壁が決壊し、真っ白な洪水――雪崩のような雪が全員に降り注いだ。




