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霊研の探偵さま  作者: とど
三章
50/74

23-3 化け物使い


「どうするべきか」


 時間は少し戻りコガネが潜入を開始した初日。日も短くなり早々に暗くなった道端で、或真は頭を悩ませながら家までの道のりを歩いていた。

 家までとは言ったがそれは彼が一人暮らしをしているアパートではなく家族が暮らす実家の方だ。ずっと帰って居なかった為いい加減に顔を出せとせっつかれて、或真はとうとう少しだけ顔を出すことにしたのだが……そもそもずっと帰っていなかったのには理由がある。


「物貰いって言い訳は前に法事で帰った時にやったしな……」


 或真の右目をどう誤魔化すか。ずっと頭を悩ませていた問題にとうとう直面することになったのである。現在は大学に行くときの用に医療用の白い眼帯をしているが、何度も病気だと誤魔化すのは無理がある。

 実際の所、黒いカラコンさえしてしまえば眼帯を外したところで問題はない。だが万が一、億が一、何らかのアクシデントが起きてやつらが出て来てしまったらと思うと、事情を知って止めてくれる人間も居ない状態で人前で右目を晒すのは憚られた。たとえ制御装置である黒い眼帯とは違い何の変哲もない医療用の眼帯だとしても、あるのとないのとでは安心感が全く違う。


 霊研の皆に何か案を出してもらえば良かったと今更後悔しながら長い前髪を撫で付けて右目を隠す。そうこうしているうちに暗がりに見慣れた実家の姿が見え始め、或真はもういっそずっと厨二病を引き摺ってることにした方が今後も楽なのではないかと諦観気味に考え――。


「は、」


 ようやく全体が視界に映った実家が、無残にも破壊された瞬間を目撃した。


 屋根が一部吹き飛び、更に何かがぶつかるような大きな音が響き渡る。何が起こっているのかまるで分からない。

 或真は思わずその光景を呆然と眺めた。周囲の喧噪など耳には入らず、ただただ非現実的なその様子を見つめ、そして数秒後ようやく我に返って彼は走り出した。


「っお父さん! お母さん!」


 ぱらぱらと外壁が剥がれるのを視界に入れながら或真は壊れかけの家の中に飛び込んだ。靴を履いたまま中に駆け込み、そしてリビングに入ったところで彼は正面から思い切り何かにぶつかった。


「或真!」

「お、母さん……」


 勢いよくぶつかって来た母親を受け止めた或真は、その瞬間手にぬるりとした温かい感触を覚えてぞっとした。


「逃げなさい!!」


 母親は体の至るところを赤く染めていた。全体は赤いのに顔は真っ白で、必死の形相で或真をリビングの外に押し出そうとしている。

 赤いのは母親だけではない。見慣れていたはずのリビングの壁は、床は赤く染まり、部屋の隅には同じく真っ赤になった父親がぐったりした様子で壁に背を預けている。そして何より部屋の中央、テーブルがあったはずのその場所には、見慣れているのにこの場に居てはならないものが存在していた。


「ケルベロス、だと」


 ごく普通の一般家庭であったはずの外村家のリビングで、その化け物が唸り声を上げた。或真は咄嗟に右目に手をやったが、いつものように呼び出したなんてことはない。なのにどうしてやつが存在しているのか。

 しかしそう思考しているうちにも事態は動く。大きな犬の怪物は僅かに肩を揺らして弱い呼吸を繰り返している或真の父親の方を振り向くと、徐にその鋭い爪を振り上げたのだ。

 母親の悲鳴が響き渡る。その瞬間、或真は形振り構わず眼帯を捨て去っていた。


「キマイラ! あいつを止めろ!」

「ガァァァァ!!」


 瞬時に呼び出した黒い怪物がケルベロスにのしかかる。父親に意識を向けていたケルベロスはその不意打ちをもろに食らい、床に穴が空く勢いで押しつぶされた。

 更に化け物が増えたことで聞こえる母親の悲痛な叫び声を聞きながら、或真は何処か冷静になった頭で目の前の化け物に意識を集中させた。


(おかしい、ケルベロスが攻撃を受けても一切こちらに影響がない。ということはやはり……)


「っ、ケルベロス! 来い!」

「グルゥ!」


 或真が右手を振り上げながら声を上げると、その瞬間リビングの中に更にもう一体、犬の怪物が現れた。それは二本ある尻尾を床に叩き付けると、すぐに自身と同じ姿をした怪物に食らいつきそして鋭い牙で一気に体を引き裂いた。或真が命令を出すまでも無く敵が誰なのか知っているようだった。

 キマイラと共に或真のケルベロスは容赦なく己と同じ姿の獣を攻撃し続ける。時折反撃を食らうと右目が痛んだが、それこそ自分に異常が無いことを証明した。

 恐ろしい怪物とて二対一だ。両親を襲った方のケルベロスはあっという間に食い千切られ、やがて汚い悲鳴を上げながら消えて行った。


「二人ともご苦労、戻れ」


 無意識に霊研での言動を取っていることに気付きつつも呼び出した怪物達をその場から消し去ると、或真はようやく肩の力が抜けたような感覚がした。

 いやまだ油断するべきではない。あの怪物が何処から現れたのかも分かっていないし、何より両親の命は危ういままだ。或真はすぐに意識の無い父親の元に駆け寄ると脈を取って怪我の確認をした。


「……良かった、まだ生きてる。でもすぐに救急車を呼ばないと……お母さんは――」

「ひっ、」


 続いて母親の様子を確認しようと或真が振り返ったその時、ちょうど目が合った母親は或真を凝視して短い悲鳴を上げた。


「お母さん、大丈夫。すぐに助けを」

「こ、来ないで化け物!」

「……え、」


 或真が一歩近付いた瞬間、彼女は酷く怯えた顔で尻餅を着いたまま後ずさった。もう一歩近付けば、更に恐ろしいものを見る目で勢いよく下がり、壁に激突してもまだ下がろうとした。


「お母さん、違う。俺は」


 やつの仲間じゃない。そう言おうとした或真の口は動かなかった。自分達を殺そうとした化け物と同じものを操っていたのだ、或真もまた、母親にとって見たら化け物の一部に違いない。

 言葉を失って沈黙が包む。しかしそんなことをしている暇はない。とにかく救急車を呼ばなくてはと何処かに放り出した鞄を取りに行こうとしたその時、急に玄関の方からいくつもの慌ただしい足音が聞こえてきた。


「警察だ! 大人しく投降しろ!」


 母親の姿を隠すように或真の目の前に数人の男が現れる。彼らは一様に重たそうな銃を構え、それを或真に向けていた。


「外村或真、化け物を使役した殺人の容疑で逮捕する!」

「殺人……? 待ってくれ、やったのは俺じゃ――」

「やつの姿は撮影済みだ。普段お前が呼び出している怪物と姿が一致しているのを確認している。無駄な抵抗は止めて大人しく従えば悪いようにはしない」

「……」


 そう言われてしまえば或真に反論は出来なかった。確かに両親を襲ったのはケルベロスと寸分変わらない姿をしており、そしてそれを操れる存在を或真は自分以外知らない。真相はどうであれ、現状自分がやったと思われても仕方の無い状況だった。

 或真のことを知る彼らは恐らく調査室の者だ。ならば今は大人しく従って、後からきちんと事情を説明すれば分かってくれるはず。


 ゆっくりと両手を上げた或真を見て、警察と名乗った面々はすぐに或真を拘束した。後ろ手に手錠が嵌まるのが分かって苦い顔をしながら、或真は人の間を塗って座り込んだ母親を見た。彼女は相変わらず震えたまま或真を凝視しており、目の前で子供が逮捕されているというのに何一つ言葉を発しなかった。




    □ □ □  □ □ □




 やべえ、やっべえ、やばいって!!

 目の前で起こったそれを見て、ツバキはいつも少ない語彙を更に減らしながら腰を抜かした。


 つい先程コガネが鬼頭という男に呼ばれて小部屋に入っていった。最初は気に留めていなかったツバキだったが、わざわざこの場ではなく二人で話そうとしているのが気になってこっそりと小部屋の扉を気付かれないようにほんの少し開いて中を覗き込んだのだ。

 細い隙間から見えた室内は、何故か一切音がしなかった。コガネも鬼頭も何かを話しているというのに、ぱくぱくと口が動いているだけで声が全くしないのだ。それを不思議に思いながらもそのままこっそり中を窺っていると、やがて二人が争い始めたかと思うとすぐにコガネが床に倒れ、そして鬼頭は――手に持っていた銃でコガネを撃ったのだ。

 一発目は手に。そして二発目は彼の額を貫き、そしてコガネは一瞬にして目の前から姿を消した。


「嘘だろ……」


 この潜入捜査が何か重大な事件に関わっているということは聞いていた。だがそれが今ようやく実感としてツバキに襲いかかり、その衝撃で彼は僅かに背後によろめいた。


「駄目じゃないかツバキ君」


 とん、とその背中が何かに当たったのが分かった瞬間、ツバキは血が凍り付いたような寒気を覚えた。

 振り返った先にいたのは神楽だ。彼は訝しげな顔をしてツバキの腕を掴むと、子供を窘めるような口調で彼に向き合った。


「天狗のおっさん」

「勝手に覗き見なんて良くないだろう。一体何をしてるんだ?」

「……キンイロが、あいつが撃たれて」

「え? 撃たれ?」

「今、キンイロがあのキツネ野郎に銃で撃たれたんだよ!」

「待ってくれ、一体それはどういう」


「――いやあ、まったく困っちゃうなぁ」

「「!?」」


 神楽の胸ぐらを掴んで必死に訴えていたツバキの背後から楽しげとも面倒臭そうとも取れる声色が聞こえた。


「まさか色々遮断した所為で逆に外から盗み見されていることにも気付かないようになってたとは……これは要改善だな」


 たった今話題に上げようとしていた男、鬼頭が何食わぬ顔で小部屋から出てツバキのすぐ傍に立っていたのだ。思わず距離を取るツバキだけでなく、神楽もまた警戒するように鬼頭を……正確に言うと彼の右手に持つものを凝視する。


「鬼頭君、きみ、その手の銃は……」

「ん? ああ、何かもう一人処分しなきゃいけねえ悪魔が居たみたいだからな。そうだろツバキ君?」

「っ!」


 その瞬間、ツバキは形振り構わず逃げ出した。ほんの少し遅れて銃声が響き、周囲のどよめきが聞こえてくる。ツバキは施設の外に出ると一気に悪魔の姿に戻り空を飛んだ。撃たれないように左右に動いて飛びながら一目散に施設から離れ、五分ほどそのまま全力で逃げてからようやく背後を振り返った。


「こ、こえええ!!」


 追っ手が来ていないのを確認してようやくツバキは誰にも聞こえないのをいいことに上空で思いっきり叫んだ。

 何せコガネがあっという間に消された弾丸だ。同じ悪魔であるツバキにも効果があることは分かり切っている。あんなものを受けるなんて堪ったものでは無い。


「つーか、早くあいつらにキンイロのこと伝えねーと! ……あれ、待てよ。そういや俺あいつらの連絡先分かんねえじゃん!!?」


 ツバキは頭を抱えた。そもそも悪魔である彼はスマホなど持っていないし普段は連絡するような相手すら居ない。ツバキは護衛として華蓮の傍にいるのが殆どであるし、何かあれば彼女がスマホを使えば良かった。今回の件だって元々は華蓮を通してツバキに連絡が来たのだ。

 だがこの状況で華蓮の元に戻ろうと思うほどツバキは愚かではなかった。彼の最優先事項は華蓮の身の安全で、それこそ霊研は二の次だ。鬼頭に狙われているツバキが彼女の元へ戻る訳には行かない。


「あー、マジでどうしよう……。何かどっかで偶然誰かに遭遇したりとかラッキーなこと起こらねえかなぁ」


 そんな都合の良いミラクルが起こるなんてありえない。あるはずがない……と、思ったところでツバキは何気なく上空から下を見下ろし、正にそのミラクルが巻き起こっているのを目の当たりにして一瞬ぽかんと呆けた。

 自分が居る位置のちょうど真下。赤いランドセルを背負った金髪の少女が何やら血相を変えて走っているのだ。


「い、居るじゃねーかあん時のちびっ子!!」


 だがその背後には何故か数人の男が彼女を追いかけるようにして走っている。詳しくは分からないがどうやら彼女はこの男達から逃げているようだ。時折後ろを振り向きながら必死に足を動かしている。

 と、後ろを振り返っていた所為か少女――イリスが何かに躓いて転んだ。その隙にどんどん男達は迫り、とうとうイリスを捕まえようと彼女に手を伸ばす。


『ツバキ助けて!』


 そのイリスの姿が昔誘拐されそうになった幼い華蓮の姿にダブったその時、ツバキは自分でも気が付かぬうちに降下し、男達を一蹴りで吹き飛ばしていた。


「が……何だ、一体何が」

「……ったくよお、気分が悪いぜ。寄って集ってこんなちびっ子追いかけ回そうなんざ」

「え、何? 何があったの……」

「それなりに覚悟は出来てんだろうな?」


 混乱するイリスを無視して、ツバキは一気に力を解放した。

 触れることもせずに男達が地面に叩き付けられる。何度も何度も浮かせては叩き付けられた男達が鼻血を出しながら気絶したのを確認すると、ツバキは一度ぐりぐりと背中を踏みつけてから驚いて固まっているイリスの傍に歩み寄った。


「ようちびっ子。ちょうどいい所に……って、そういやそうだ。悪魔の姿だと見えてねえか」

「……うわっ! え、あのドーナツバカの悪魔!?」

「ツバキ様だよく覚えとけ」

「あんたが助けてくれたの?」

「おう、感謝しろよちびっ子」

「イリス様よそっちこそ覚えておきなさい!」

「偉そうだな、昔の華蓮の方が可愛かったぞ」

「煩い! ……でも、助けてくれてありがとね」

「おう」


 おずおずとお礼を言ったイリスにツバキがにかっと笑う。が、ツバキはすぐに笑みを消すと慌ててイリスの両肩を掴んだ。


「ってそれどころじゃねえ。おいちびっ子、大変なんだよ。キンイロのやつが」

「だからちびっ子じゃ」


「居たぞ! 鬼頭さんに報告しろ!」

「! チッ、撒いたと思ったのにもう見つけやがった! ちびっ子ちょっと来い!」

「え、ちょっと!?」


 その時、イリスを追いかけていたのとはまた別の男達が走って来るのが見えた。その手に銃があるのを見たツバキは咄嗟にイリスを小脇に抱えてそのまま空中に飛び上がった。

 動物霊達に浮かされるのは慣れていても生身で遙か上空を飛ぶことなど初めてだ。酷く戸惑ったイリスの声が聞こえるものの無視して、ツバキは再び追っ手を振り切る為に全速力でその場から飛び去った。


「ね、ねえ! ホントに何なの!?」

「だから大変なことになったんだよ! よく聞けちびっ子! ――キンイロのやつが消された!!」




    □ □ □  □ □ □




「……状況は最悪と言っていいですね」


 一日学校に行っている間に起きた出来事に千理は頭を抱えながらぽつりと呟いた。

 最悪、本当に最悪である。まず深瀬が調査室の裏切り者に撃たれ意識不明の重傷、続いて都内で複数の爆破事件が起こり、そして或真が詳細は分からないものの逮捕。イリスは何者かに襲われそうになり、更に――コガネが鬼頭によって撃たれ魔界へ強制送還された。

 千理はちらりとソファに座る英二の方を見た。彼の腕の中には泣き疲れて眠ったイリスがおり、英二も心此処にあらずといった様子だ。

 それはそうだ、何せ家族が居なくなったのだから。千理がまだ冷静で居られるのは、正直なところまだコガネが本当に居なくなったという実感が無いからでしかない。

 この情報を教えてくれたツバキは散々飛び回ったことで疲れたのか向かいのソファで眠ってしまっていた。殆ど無関係だというのにこうして情報を届け、そしてイリスを救ってくれた彼には感謝しかない。


「このタイミングから考えて、或真さんの逮捕も無関係ではないでしょう。調査室にスパイがいたことを考えると、彼らによって嵌められた可能性があります」

「……ああ、そうだな」


 言葉少なく英二が同意した。千理は気遣うように彼を窺うと、一応確認の為にと慎重に口を開く。


「英二さん、コガネさんって自分専用の魔法陣とか作ってなかったんですか」

「作ってたぞ。あいつは魔界が大嫌いだからな。念には念を入れていた」

「え、なら」

「だが対悪魔用の銃弾で強制送還されたんなら今頃あいつは魔界で立ち上がれもしないぐらい衰弱してるはずだ。当然召喚に応じれるほどの魔力が戻るまでにはかなりの年数が掛かる。元々あの弾丸は、犯罪を起こす悪魔がこっちの世界に戻って来ないようにと作られたものだからな」


 すらすらと、まるで台本を読んでいるかのように話す英二に千理も頷くことしかできない。光が消えた腕の魔法陣をじっと見つめていた英二は、しかし何かを考えるように口元に手をやった。


「……だが、あいつ」

「え?」

「いや、何でも無い。それで鬼頭の野郎も裏切り者だって判明した訳だが……参謀、これからどうするべきだと思う」

「……そうですね。爆破事件の対処は警察に任せるのが適切でしょうし、まずは或真さんの奪還が最優先にしたいのですが……その為には情報が少ない」

「あいつは警察署内にいるらしいがガードが固くて速水も面会できないらしい。あいつもあくまで一室長でしかないからな。今は調査室全体の指揮系統がぐちゃぐちゃだ。くそ、深瀬が居れば」

「だからこそ深瀬さんが狙撃されたんでしょうね。とにかく今は圧倒的に情報が足りません。なのでやれることと言えば」


 千理が言いかけたその時、不意に彼女の持つスマホが着信を告げた。画面に表示された名前を確認した彼女は、途端に嫌な予感を覚える。


「……はい、もしもし」

『千理ちゃん? 今大丈夫?』

「ええ。何かありましたか……鈴子さん」


 電話の相手は今は病院に居るはずの鈴子だ。彼女からの電話ということは、もしや深瀬の容態に何か変化があったのではないかと悪い想像が過ぎる。

 耳元から聞こえる彼女の声は酷く平坦で静謐だ。そこから感情を読み取ることはできない。


「実は千理ちゃんに少し手伝って欲しいことがあるの」

「私にですか?」

「ええ、今から言う所にすぐに来て欲しいのだけど。櫟君がもうそっちに向かっているから彼の車に乗って頂戴」

「……構いませんが、一体何を」

「ふふ、」


 わざわざ千理に頼み事というのは一体どういうことだろうか。頭の中で様々なパターンが過ぎったものの、どれもピンと来るものがない。

 僅かに漏れた笑みだけが、ほんの少し彼女の怒りの断片を感じさせた。



「深瀬君を殺そうとした犯人、そしてその背後の連中を全部暴いてやるのよ。協力して」



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