表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

第1話:月と少女

「え?」

思わず声に出てしまった。


「そんなに驚かないでください。冗談ですよ!冗談」


なんだ冗談なのか。

この歳にして、こんな冗談に本気で驚いていたことに恥ずかしさを覚えた。

恥じらう僕をよそに彼女はまた口を開く。


「でも、その前の返事は冗談じゃないですよ」


一瞬思考が追いつかなかったが、すぐに理解した。いやいや、やっぱり理解できない。冗談じゃないだと?


彼女は少し笑顔を溢しながら話を続けた。

「ほんとに今日は月が綺麗だから…つい呟いちゃうのも分かります」


そうか、あの漱石のエピソードを知らず、ただ綺麗な月を見てつい呟いてしまったと捉えたのか。

ほっとする自分と、どこか少し期待して残念がっている自分がいる。


「私、今日引っ越して来たばかりで、ちょっと街を散歩してみたくてこの公園まで来てみたんです」

「そうなんですね。僕も今学校の帰りで、今日は十五夜なんで、ちょっと寄り道してたんです」


「そうか…今日は十五夜かぁ…」

少女はそう言うと、また月を眺めた。


偶然にも、こんな出会いがあるなんて。どこか一人浮かれている。


「私、もう行きますね。」

そう言うと彼女は立ち上がった。


輝く月が彼女を照らしていた。

綺麗な黒髪が夜風に靡いている。


「その制服……」

彼女はそう言いかけると

「やっぱりなんでもないです。また、どこかで会えるといいですね」

となぜか少し嬉しそうに僕にそう告げた。


「そうですね。またどこかで…」


そう交わすと、彼女は公園を去って行った。


俺も明日また学校がある。寄り道はこれぐらいにして帰るとするか。


その日は本当に綺麗な満月の夜だった。

読んでくださった方ありがとうございました。

評価、ブクマ等もよかったら。

次話もぜひぜひよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ