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1月7日

この世界には数多くの「天才」と呼ばれる人間がいる。人間の技術進歩に大きく貢献した天才。誰にも撃ち破ることの出来ないであろう記録をもつ天才。世界を見渡せばそこらじゅうにいる天才、天才、天才。だが、天才と呼ばれる彼らには計り知れない血のにじむような努力があったのだろう。試しにそこら辺にいる天才だと思うやつに「お前って天才だよなー」なんて声をかけてみよう。ほとんどの場合「努力した結果」と返ってくるはずだ。なぜなら彼らは努力をした自負があるから。それについては全く異論はない。だがしかし、常人からすれば血のにじむような努力も天才だからとしか言えないのだ。今まで、天才の軌跡!とかそんな感じだったものが、血のにじむような努力をした常人の軌跡!だったら印象ガタ落ちである。じゃあ常人とかいる意味ないじゃんとなるだろうか?逆に世界に天才しかいなかったらどうなっていると思う?常人がいれば崇められそうな奴もただの一般人になり、世紀の発見は道端にたんぽぽ咲いてましたくらいの扱いになる。こんな世界いかがであろうか。そこで生きてて何が楽しいのかわかったもんじゃないと思う。

さて、ここまで語らせていただいた私もとい俺はどんな人物だと思う?まあ、皆さんご想像通りの一般人だ。ただ、普通の一般人ではない。俺は、大勢の一般人と少数の天才が世界の均衡を保っているという思想のもと生きている一般主義の一般人だ。この究極一般人の俺に今、非常に一般的ではない事態が起きている。

朝刊の''Everyone is genius!''の文字。どうやら、この世界全員が天才ということになってしまったようだ。







佐藤拓也、17歳高校2年生。中々微妙に普通な名前を持ち彼女は過去に1人とネタになりそうなことが特にない超一般級の一般人である。1月7日、新たに学校の三学期が始まる1日前の今日世界の均衡は崩れたようだ。この世界は、みんな天才なのが普通になった。

その証拠に昨日陸上競技の世界記録が出たのにも関わらず、テレビニュースでもSNSでも何も取り上げられていない。まあこれでわかっただろう世界みんな天才だ!と言っていた君たちよ、。世界みんな天才になったらすごい!という感情は失せていくものだ。驚きが1つも存在しない日常を想像してみてもらいたい。何が楽しいんだその世界。俺なら絶対に拒否している。だが、今この世界はその状態になってしまった。試しにSNSでつぶやきでもしてやろうか。普段絶対しない事だが緊急事態だ。そうだな、内容は、

「世界記録すげぇ。俺には100年あっても無理だな。」

これでいこう。あまりに普通だが俺にはこれが限界だ。たった数文字で人の目を引く文章を書ける人ってどんな思考回路してるんだろうか。やっぱ天才じゃないかなんて考えていたらつぶやきに返信が来た。「え、、何に驚いてるんです?ちょっと理解が追いつかないんですがこれって僕だけですかね、、。)」

ほら見た事か。この世界、とてつもなく恐ろしいことになってしまった。この返信のいいねはどんどん伸びている。俺のつぶやきのいいねはゼロのまま。本当に何が起きてしまっているのだろうか。

絶対にしないつもりだったが、反論をしてやろうじゃないか。さすがにこの状況は放って置く訳にはいかない。

「あなた達にこの記録を越すことはできますか?」

どうだ。これこそが正論だ。反論できるならしてみてもらおうじゃないか。

「不可能ではありません。練習を積むこと以外にも肉体改造など様々な方法があります。それらを考慮せずに判断してしまうことはとても愚かなことです。」

っすぅーーーーーーーーー、。普通に間違っているのに正論っぽく聞こえてしまうのはなぜだろうか。いくら練習を詰んだところで無理なものは無料なはずなのだが、。やはりこの世界の常識はねじ曲がってしまったようだ。その証拠に間違った正論のいいねはのび続けている。相変わらず俺の正論にはいいねがゼロ。だがしかし、ここで折れてしまっては超一般級一般人の名折れ。今だけは負ける訳にはいかない。

「練習をすると言っても限度があります。人には人それぞれの限界があるものです。この世界の9割強の人間はこの限度が世界記録などという畏れ多いものには届いていないのです。」

どうだどうだ。これこそが現実。これこそが真理。所詮一般人には限度を超えることなど不可能!思い知ったかエセ天才め!

「限度とは決めることの出来ない概念です。やれると思えばそこが個人の限度になります。不可能ではありません。」

、、、、、。なんか、それって根性論じゃないだろうか。

天才って根性論通用するのかな、、。やればできる!ってやっぱり天才用語だったというわけか、。だがやはり、天才語録の根性論を認めてしまっては世界の均衡を保つなど夢のまた夢。根性論とは天才にのみ通用するものだと理解させるのだ!

「やればできるで人間の体が変わるのならば、ダイエットという概念も何もかもが存在しないでしょう。しかし、実際ダイエットとは実在するものです。ダイエットをする必要がない人にのみそのような論理は通用するものです。」

これだこれだこれだァ!誰でもわかりやすい一般人論!どんなに頭が天才インフレしていても普通に反論は出来ないだろう!俺の勝ちだァ!

「やればできると思うから痩せるのです。ダイエットとはそういうもの。」

あ、たしかにそうかもしれない、。

、、、、今日のところは諦めるとしようか。

だがしかし、明日からはまた世界の均衡を保つ戦いの始まりだ。

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