昔々、おじいさんは。
浦島から落ち着いて話を聞くことになった。
浦島はこの海老街に住むただの漁師らしい。
だが2年前に亀を助け、この海の底にある竜宮城へと行ったのだと言う。
まあここまではよくあるあの童話と一緒だな。
しかし浦島は玉手箱と言うものは受け取っていないらしく、それからも頻繁に竜宮城へと足を運ぶようになったそうだ。
竜宮城には乙姫という海の巫女がいるらしく、浦島はその巫女と仲良くなっていった。
しかし、鬼王が現れてから、竜宮城へと運んでくれるはずの亀が現れず、次第に海は血の色へと変化したのだと言う。
浦島は竜宮城のみんなと乙姫が心配でどうしようもなかった。
そんなところに俺と金太郎が現れたのだ。
「どうかお願いです。僕はあの竜宮城の皆さんが無事かどうか、それだけが心配で…」
「でもよ、その竜宮城へと運んでくれる亀とやらはいねえんだろ?どうやって竜宮城へ行くんだ?」
「あんたら。竜宮城へ行きたいんかね。」
俺でも浦島でも金太郎でもない声が突然後ろから聞こえた。
慌てて俺ら3人は後ろを振り返る。
そこに立っていたのは年老いた80歳過ぎの老人だった。
「おじいさん、竜宮城のことを知っているのですか?」
俺は疑いながらもそのおじいさんに尋ねた。
「知ってるも何も、ワシは昔竜宮城に行ったことがあるんじゃ。」
3人は顔を見合わせて驚いた。
「おじいさん、その話、詳しく教えてください。」
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昔々、それは勇気のある少年がいた。
少年は街を守るため、見回りの日々。
少年がいつものように海へ行くと、そこには弱りきった亀と女の子が倒れていた。
少年は駆け寄り、亀と少女の生死を確認した。
大丈夫。2人とも生きている。
少年は亀と少女を連れ帰り、看病した。
やがて、少女は目を覚まし、亀は自由に動けるまで回復した。
少女の名は「乙姫」とそう言った。
少女は自分は竜宮城から来たと、海の底の街から来たとそう言った。
にわかには信じられなかったが、お礼に街へ来て欲しいと言われ、少年はついて行った。
ついてみると驚くことにそこは海底の街。
空気もあり、息もできる。
美味しいご馳走に、綺麗な街、人々。
少年は感動し、何回もそこへ通うようになった。
しかし、少年の命は実は長くはなかった。
病魔に襲われていたのだ。
乙姫はそのことを知り、ある秘薬を授けた。
長く生きられる代わりに、もうここには来れないと。そう言う約束で。
少女と少年は別れを惜しんだが、命には変えられなかった。
それ以来、少女と会うことはなく、また少年も長く生きた。
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「まあ、ここまでがワシの知ってる話じゃな。」
「その少年が、おじいさんなんですね。」
「うむ、いかにも。そしてその時助けた亀はワシの家におる。こちらに残りたいと言ってな。」
「つまり、その亀がいれば…」
竜宮城へと辿り着ける。
3人は顔を見合わせて喜んだ。
「亀はお主らに預けよう。しかし、一つ条件がある。」
ごくりと、唾を飲んだ。




