海の見える街、海老街
金太郎と仲間になった後、俺たちは鬼たちが巣食う街や村の情報を聞いて回っていた。
そして有力な情報も手に入った。
【鬼王】の居場所。
察しのいい人なら気付いているかもしれないが、そう、あえて言おう。
《鬼ヶ島》だ。
鬼ヶ島は孤島。つまり、海を渡っていくしかない。
その道中にもどうやら強力な鬼たちが待ち伏せているとの情報も受けた。
まだまだ仲間が足りない。仲間を探すために村や街に向かい、そこで鬼たちを退治する。
金太郎と話してそう決めた。
「こっからだと次に近いのは海の見える街だ。かなりでけえ街だから仲間にも期待できるんじゃねえか?」
「海の見える街…。つまり港か?」
「いや、港ってわけではねえみてえだな。俺も行ったことはないが、海水浴ができるらしいぜ」
男と2人で海水浴。
いやないな。ここは仲間探しに専念しよう。
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「ついたぜ、ここが海の見える街、海老街だ。」
金太郎にそう言われ、街を見渡す。
村とは違い、きちんと整備された道や一軒家や民家が並んでいた。
店なども多く存在しているみたいだが、思ったより人が少ない。
というか皆、意識的に外に出ていないようだった。
「なんでい、せっかくの街なのに活気がねえな。台無しだぜ全くよ」
「待て、金太郎、明らかにおかしい。誰か住人に話を聞こう。」
そう言って、通りすがりの老人に話しかけた。
「あの、すみません。いつもこんなに人がいないのですか?」
「あんたら旅人かい?なら知らねえのも無理はねえわな。ここは海の見える街って言われてる。けど今はなぁ…」
「今は…?」
「自分の目で確かめるのが早えだろう。あっちに行ったら砂浜だけえ、行ってみな」
そう言うと老人はそそくさとどこかに行ってしまった。
まるでなにかから逃げるかのように。
「おう、桃太郎、せっかくだし行ってみようぜ」
そして、金太郎と砂浜に向かった。
砂浜につくとそこには一面真っ黒な海が広がっていた。
いや、もはやそこにあったのは海ではなかった。
どす黒い水が一面に広がり、生き物一匹いないであろう水の魂。
なるほど、これが原因か。
「こりゃひでえな。まるで血の海だ。」
「これも鬼の影響か?」
「わかんねえ。だがそれしか考えられねえな。」
この街に一体なにが?
そうして辺りを見回していると砂浜に1人の男が立っているのが見えた。
俺たちはその男に話を聞こうと近づいていくと、向こうが気配に気づいたようで臨戦態勢を取られた。
「な、なにものだ!お前らも僕の街を汚しにきたのか!」
「失礼なやつだなてめえ、俺らはただ悪い鬼を退治しに旅をしてるだけだい」
「鬼を退治…?待ってくれ、さっきの態度は詫びる。どうか、この街を救ってほしい!」
「まあ落ち着いてくれ。俺は桃太郎。こっちは金太郎だ。君は?」
「僕は、、、僕は、、」
『浦島太郎です』