四天王【酒呑童子】
「見えてきたわよ!あれがここら一帯で一番大きい都市、江戸よ」
江戸…。
教科書でしか見たことも聞いたこともない。
この世界は昔の日本が舞台…?
いや、海外童話も出てきた。
全てが混合になっている世界と考える方が妥当だろう。
しかし今回の舞台は日本…。
自分の知識の範囲内で何もおこらなければいいんだが…。
かと言って歴史は得意な方ではないしなぁ…。
「あの街にはね、将軍様が住んでいるの。ほら、あの一番大きい屋根のところ?わかる?」
「この江戸は将軍様が全て。いわゆる王様みたいなものね。将軍様に目をつけられたら最後、江戸では生きていけないわ」
将軍様か…。
この都市も鬼に支配されてるのか?
だとすると第一候補はその将軍様か身辺にいる奴らになるな。
過去のことがあって、その国や街、都市を占領するとき一番手っ取り早いのは長と繋がること。
もしくは自分が長になること…。
ネズミの国がいい例だ。
「ってことでまずはあの街を見て回ろっか!久しぶりの江戸だわ〜たのしみ!」
と、そんな時だった。
ピリついた空気。経験がある。
背後からの殺気…?いや、殺気とは何か違う。
その気配にはかぐやも気付いていた。
「桃太郎?気づいてるわよね」
「ああ、後ろに。なにかいる」
こちらが気づいていることに気づかれてはいけない。
相手はおそらく格上。
「そう身構えるな。殺すつもりはない」
その言葉を聞いて察した。
四天王クラス。いやこの雰囲気は四天王だと。
俺とかぐやはサッと振り返り、武器を構える。
そこに居たのは、体格3メートルはありそうで肩に酒瓶のようなものを担いでいる鬼だった。
明らかに普通の鬼とは格が違う。
「殺るならとっくにやってる。武器を収めい」
その言葉を聞いてもなお、信用はならない。
なぜなら相手は鬼の中の鬼なのだから。
「ったく。はぁ〜。そんなに信用ねぇかね」
するとその鬼はその場に胡座をかき、酒を飲み始めた。
まるで隙だらけだ。今なら一瞬で首を取れそうな気がした。
しかし、飛びかかる直前、かぐやに止められた。
俺はかぐやを見たが、かぐやはその鬼から目を離さない。
「賢い判断だな。そのネエちゃんが止めなけりゃ、坊主の首は飛んでたぞ」
ゴクゴクと酒を豪快に飲みながらその鬼は話す。
「四天王が私たちに何の用よ」
「ほう、俺が四天王だって知ってんのかい」
「まあそこの坊主はしらねぇみてぇだから名乗っといてやる。俺は鬼王様に仕える四天王、酒呑童子ってんだ。よろしくな」
酒呑童子。
これで四天王が全て判明した。
風神、雷神、酒呑童子、そして阿修羅。
全員と対峙したからわかる。
こいつの言葉に今、嘘はない。
本当に四天王であり、本当に動けば首は飛ばされていただろう。
だからこそ、殺す気はないと言うのも本当。
「俺ら四天王には全員会ったみたいだな、阿修羅のやつがえらく気に入ってたぜ」
がはは、と大きな口でその鬼は笑う。
殺す気はないならなぜここにいる‥。
「殺す気がないならなぜここにいる。俺たちに用があるのか?」
「用かい、用はないんだが、あの阿修羅が認めたんだ。どんなやつか、ちと気になってな。下見ってところかねぇ」
下見…。
いずれ俺たちが鬼の王、鬼王の元へ行くということ。しかもそれは四天王全員との対峙を意味している。
「若い芽は早めに摘む。って言葉があるよな」
その言葉に発せられた殺気と怒気に俺とかぐやは一瞬身震いし、すぐに戦闘態勢に入る。
「がははははは、嘘だ嘘だ。今から江戸に行くんだろ。俺はまぁここで酒でも飲んでこの景色を楽しむとする。先に行きな」
そう話す鬼には先ほどの殺気と怒気はなくなっていた。
かぐやと目を合わせ、鬼から目を離すことなく、じりじりと後ろに下がる。
鬼はこちらに向かってくる様子はない。
ただ酒を豪快に飲んでいるだけ。
俺たちは十分な距離を保ってからその場から急ぎ、離れた。




