さあ、飛ぶか!
爆音とともに振り下ろされる巨人の一撃。
見慣れた攻撃だ。もう当たらない。
ハープからの魔法が飛んでくる。
だが、俺の後ろには頼もしい味方がいる。
ハープの攻撃は後方からの光魔法により打ち消される。
チャンスを、隙を、見つけるしかない。
もう一度ハープの眼前に近づくために。
巨人が傀儡ではなく、意志を持った鬼ならばもっと苦戦していただろう。
四天王クラスなら俺とかぐやはとうに死んでいた。
まだ強くなれていない。
「桃太郎!魔法が切れてるからもう合図はできないわ!うまくいける体制に持ち込むからあんたが合わせなさい!」
「了解した!」
さっきの未来視はもう使えない。
自分自身、あるいはかぐやにタイミングを…
いや、俺が。俺が作るんだ。チャンスを!!
そうしなければ勝てない!!
かぐやがありったけの魔力を込めて魔力弾を連続発射する。
傀儡の巨人には効果はないが、土煙が上がる。
それは目眩しになるには十分なほど。
巨人の視界が晴れた時、一番最初に目にした者は何か?
それは"桃太郎"
眼前に迫る鬼気とした表情の鬼を斬る者。
その顔はまるで"鬼"
土煙で気配は完全に絶たれていた。
気づけるはずがなかった。
桃太郎は鬼の頭を軽く蹴り、頭上のハープへと一直線に突っ込んでいく。
ハープは先程と同じようになるだけだと、また洗脳魔法を展開した。
その魔法は桃太郎へと直撃する。
先程より近い距離で。
だが、一つ違うのは、突っ込んできた桃太郎が止まることは無かったこと。
ハープと巨人の敗因は
【人の持つ成長を甘く見たこと】
「ありがとう、父さん」
真っ直ぐに振り切った刀はハープを真っ二つに切り裂いた。
.
.
.
粉々になって消えていく巨人とハープの横に、桃太郎とかぐやとジャックは倒れていた。
「やったわね、桃太郎」
「あぁ…。助かったよ、ありがとうかぐや」
2人で寝転びながらハイタッチをして笑い合った。
正直かぐやとジャックがいなければ負けていただろう。
しばらくすると、ジャックも目を覚ました。
「ええ!倒しちゃったんですか!」
「僕は何をしていたんだぁぁ!」と頭を抱えるジャックにことの経緯を全て説明した。
「なるほど…。僕と桃太郎さんは洗脳魔法にやられてそんなことを…。すみません!かぐやさん!」
「いいのよ、こうやってみんな無事なんだし。ま、ちょっとはお仕置きが必要かもね?」
そう言ってかぐやは手元で魔法を錬成し始めた。
俺とジャックは「ヒッ」と身を構えたがかぐやの魔法はすぐに消えた。
「さすがにもうそんな魔力は残ってないわよ…よかったわね」
そう言って笑ったが、本気なのか冗談なのか分からないレベルだった。
俺とジャックは顔を合わせ、ホッとした。
「そういえば、これでミッドウェルの住民は洗脳魔法から解除されたのか?」
「ええ、そのはずよ、元が死んだのだからね」
俺たちは一応、住人たちの様子を見るために、ミッドウェルに再び足を踏み入れた。
すると、1人だけ洗脳魔法にかかっていなかった花がすぐに俺たちの元に駆け寄ってくれた。
「皆さん!!あの巨人を倒して頂いたのですね!みんなすっかり元通りです!」
そう言って翼のような葉っぱをパタパタとさせて喜んだ。
「洗脳中の記憶は残っていないみたいで、巨人が来る前のような生活をし始めています」
そうか、洗脳中の記憶はスポッと抜けるみたいだ。
確かに俺はお父さんに助けてもらってから記憶があるが、ジャックは何が何だか分かっていなかったしな。
「本当にありがとうございました!これはささやかながらお礼です!」
そう言って花はキラキラと光る物体をくれた。
「それは魔力増強玉です。それを持ってるだけで桃太郎さんの魔力は少しながらですが上がるはずですよ!」
その玉を持った瞬間に確かに身体中から何かがみなぎってくるのがわかった。
「後もう一つ、魔導書を一冊どうぞ」
そう言って魔導書をもらった。
これは開いた瞬間に開いた主がその魔法を覚えれるというものだ。
「何が書いてあるかは開いてみないとわからないのですが、きっと良い魔法が引けるでしょう」
そう言われて俺は魔導書を開いた。
なるほど、この"魔法"はいい。
「ありがとう、じゃあ、俺たちは下に戻るよ」
「はい!また機会があれば是非ミッドウェルへ遊びにきてくださいね!」
そう言って俺たちはミッドウェルを後にした。
「あ、そういえばカブはどうするんだ??」
「バカねアンタは。あのハープが作り出したものなんだから、あいつを倒したらきっと消えてるわよ」
そういうものなのか。
まあそうか。
なら俺たちの依頼は全部完了ってわけだ。
「そうか、じゃあ下に降りよう」
「えぇ〜またあの木をゆっくりと降りていくの?」
「とてもじゃないですけど怖くて降りれません…」
かぐやとジャックは嫌がっていた。
ジャックに関してはじゃあなぜ登って来れたんだとツッコミたくなった。
「じゃあ一度ネズミの街までワープして歩いてまた来るか?」
「それもめんどくさーい、はんたーい」
かぐやが駄々をこね始めた。
「よし、じゃあ…」
そう言ってかぐやとジャックを抱き抱え、木の上からダイブした。
「ちょっとおおおおおおお!!正気!!!!???」
「しぬううううううううう!!」
2人は叫んでいた。
「こんな時しかないから楽しめ!」
そう言って俺たちは下に落ちて行った。




