怒号の巨人
花は事の経緯を話し始めた。
「巨人がミッドウェルにやって来てからこの国はおかしくなりました。みんなあの巨人のことを崇め始めて…」
巨人がこの国にやって来て、最初は皆怖がった。
しかし、巨人が光るハープを空へかざすと、たちまち国の住人達は巨人を崇めるようになったらしい。
その光るハープにおそらく洗脳の類の魔法が施されていると思って間違いないだろう。
「しかもあの巨人はなにをされても平気なのです。」
村の住人が全員、洗脳にかかったわけではなかったようだった。
一部の者たちは洗脳にかからず、怪しく思い、巨人を討伐しようとしたそうだ。
しかし、巨人はどんな攻撃を受けようと無傷だったそうだ。
つまり、”不死身”
そんなやつからどうやってこの国を救えば…。
「とりあえず、その光るハープとやらをどうにかしないといけないわね。私たちまで洗脳にかかったらお終いよ」
そうだ。
ハープを無効化してからが戦い。
「かぐや、その洗脳とやらを魔法でガードできないのか?」
「無理ね。本当に洗脳の類なら精神攻撃。私の光魔法は物理的なダメージや魔法しかカバーできない」
かぐやの魔法も頼りにはできないとなるとやはり、巨人にバレずにまずハープを壊すしか。
「あの。その巨人はいつも夜しか姿を表しません。昼間はずっとあそこに篭り、なにをしているかわかりません」
つまり、ハープはあそこか。
そんな大事なものをわざわざ別の場所に置くとは考えにくい。
置くなら、自分が守れる位置。自分の近く。
真っ向から勝負するしかないのか…
俺たちはその花にお礼を言って本丸へと向かった。
歩きながらかぐやと作戦を練った。
「不死身って言うのはどう思う?」
「まだ分からないな。そのハープが魔力でそうしているのかもしれない。夜しか姿が見えないというのも疑問だ」
「そうね。まずはハープを見てみないと私も魔力どうこうの物かわからないし…」
幸いにも住民たちには変装は怪しまれていない。
俺たちはそのまま本丸の前へと到着した。
本丸へと通じる扉には飛行物体のようなものが飛んでおり、おそらく侵入者を見つける監視カメラ的な存在だと思われる。
技術的にも成長した俺たちはなんとか見つからず、本丸へと潜入することができた。
中に入ると、至る所に飛行物体が飛んでおり、巨人の警戒度がひしひしと伝わってくる。
おそらく見つかれば逃げきれないだろうな。
俺たちはしゃがんだり、伏せたりと、隠密行動を取り、なるべく話さず、目配せで合図をし合って上へ上へと進んだ。
そして本丸の頂上。おそらくここが巨人のいる部屋。
時間はかかったが、たどり着くことができた。
かぐやとタイミングを合わせ、扉を開ける。
するとそこにはベッドに横たわっている巨人。
寝ているのか…?
まだ昼間…。
そうか、こいつが夜しか出てこないのは昼間は寝ているから…。
そんな単純な理由だったのか…。
俺たちは巨人を起こさないようにゆっくりゆっくりと近づいたその時。
ハープが部屋に鳴り響いた。
それと同時に起きる巨人。
「んん…。なんだおめぇら。さては俺様のハープを盗みに来たな!盗人め!殺してやる!」
そう言うと巨人はむくっと起き上がり、こちらに向かって襲いかかってきた。
俺たちはすぐさま魔法を展開し、巨人に向かって打ったが、巨人はびくともしない。
やはり不死身というのは正しかった。
いや不死身…?なにか違う。
「桃太郎!ここは一旦逃げましょう!魔法が通じないなら私たちに勝ち目はないわ!」
かぐやがそう言うと俺たちは走り出した。
至る所で警報が鳴り響く。
「待てええええ!!盗人め!!!逃がさんぞ!」
後ろからは巨人の大声。
外に出ると、住民たちが大勢集まっていた。
住民たちは俺たちが巨人を怒らせたと思い、大勢で魔法攻撃を仕掛けてきた。
単体の魔法攻撃では大したことはなくても魔法は質量が増えると強大な力になる。
これを食らえばひとたまりもないだろう。
かぐやの禁忌防御魔法も使えない。
「シルフルール!」
どこからともなく声が聞こえた。
その声が発せられると花たちは一斉に眠りについた。
声が聞こえた方向を見ると、そこにはジャックがいた。
「ジャック!なぜここに!」
「いてもたってもいられなくなって…。お怪我はありませんか!?」
「大丈夫だ!助かった!今のは?」
「私の故郷に伝わる高等睡眠魔法です!さぁ今のうちに!」
花たちが眠りついたその時、後ろの本丸からとてつもない大きな音がして、巨人が現れた。
「逃がさん、逃がさんぞ!この街はわしのものだ!」
「ここじゃ街に被害が出るわ。木の広場まで引きましょう」
かぐやはそう言って走り出した。
俺はジャックに「後で説明するから来てくれ!」とだけいい、走り出した。




