二度目の馬鹿げた案
それにしても、四天王のうち3人が俺たちの目の前に現れるのはやはり異常事態だ。
阿修羅、風神、雷神。
四天王レベルはやはり別格だった。
運良く今までは対峙しても生き残ってきたが、もし、もう一度目の前に現れたらどうなるかわからない。
「そういや、かぐや。あの光の魔法はなんだったんだ?雷神の攻撃を完璧に弾いていたけど」
「あぁ。あれは光の禁断魔法。私たち月の国の住人だけが使える絶対防御魔法よ。」
禁断魔法!?
かぐやは強いとは思っていたが、禁断魔法を使えるほどの実力だったとは。
「勘違いしないでよ。私が使える禁断魔法は今のところこれだけ。しかも禁断魔法には制限があって、連続発動はできないわ」
「だからもう一度さっきのやつが戻ってきたら私たちはおしまいね」
そう言ってかぐやは笑ってみせたが、冗談にならない。
改めてかぐやが仲間に加わって良かったと心からそう思った。
「さあてと。じゃあミッドウェルの方をどうにかしないとね」
そうだった。
かぐやの言う通りだ。
ミッドウェルの事件は何も片付いていない。
まずはミッドウェルの住人の目を掻い潜りつつ、本命の巨人に近づかなければいけない。
おそらく巨人がいるとすれば、ミッドウェルの本丸。ここからでも見える一番大きな建物だろう。
あそこに行くには必ず住民達に見られる。
どうするべきだ?
「変装ね」
かぐやはキランという効果音と共にそう言った。
「反対だ」
俺はそう言ったが、すでにかぐやは止まらなかった。
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かぐやの無理案のせいで俺たちは服装を変えるべく、一度ワープを使い、ネズミの国に戻ってきた。
なにも住人の格好をするってわけじゃなく、服装を変え、巨人を崇拝している人物を作り上げると言う作戦らしい。
ネズミの国での浦島女装事件があってから、俺は変装と言うものの信頼性において些か不安が残っている。
うまく行くのだろうか…。
「これはこれは桃太郎さん。お早いご帰還で」
ネズ太がそう言って迎えてくれた。
俺たちは事の詳細を詳しく伝え、何かないかと尋ねた。
するとネズ太は「任せてください!」と、急足でいろいろな店を周り、服を一式揃えてくれた。
俺たちは服を着るとこれまた驚くことにほぼ別人になっていた。
「完璧ね。ネズミにしてはやるじゃない」
かぐやはかなり美人だからか、ネズ太は照れていた。
俺たちはネズ太に別れを告げ、再び、ミッドウェルに戻ることにした。
「しまった。行きはワープできたが、帰りはどうするんだ。またあの木を登らないと…」
「ふふーん。それは大丈夫よ。あらかじめ木の上にこのワープボールと同じような仕組みの場所を生成しておいたの。もう木登りは二度とごめんだからね」
なんて優秀なやつだ!
そう褒めてやりたかったがやめておいた。
俺たちはかぐやのワープを使い、木の上にたどり着いた。
本当にバレないか不安だったが、ミッドウェルへの侵入を試みた。
ミッドウェルに入ると住民がこちらをチラチラと見てくる視線を感じた。
先程の俺たちの噂が周り、人間を警戒しているのだろう。
怪しまれているが、バレてはいない。
するとかぐやが突然走り出し、住民に話しかけた。
「こんにちは!私たち旅の者なのですが、ここにそれはそれは勇ましい巨人様がいらっしゃると聞いたのです!会うことは可能ですか?」
かぐやのこう言うところは見習いたいと思った。
住民はパァっと顔が明るくなり話し始めた。
「ええ!そうなの。巨人様はあの一番大きな建物に暮らしているのだけど、忙しくて会えるかはわからないわ」
住民は一つも疑うことなく巨人の居場所を教えてくれた。
やはりあの本丸にいるのか。
会うことができないと言うのはやはり少し警戒されているか。
正面突破で行くのは骨が折れそうだ。
「ありがとう!ミッドウェルに幸あれ!」
かぐやはニコッと笑うとそう言った。
「やはりあの本丸みたいだな。どう行く?」
「私たちかなり警戒されているみたいね。どうしようかしら」
「あの…」
かぐやと話していると突然後ろから声をかけられた。
俺たちは驚いて振り返ったが、そこには小さな花が居た。
おそらくこの花も住人だろう。
「あなた達、先程の人間の方々ですよね?」
変装がバレた!
今すぐここを離れなければまた敵対される。
そう思い、かぐやと目を合わせその場を離れようとしたが、その花はまだ喋りかけてきた。
「違うんです!助けて欲しいのです!ミッドウェルのみんなを!」
この子は巨人を崇拝していない?
そう感じ、話を聞くことにした。