天空島ミッドウェル
「ちょっと、早いって…もうちょっと休憩させてよ…」
かぐやはまだ木を上った時の疲労が取れない模様だったが、一刻も早くこの問題を解決しなくてはならない身としては急ぎたかった。
「ミッドウェルまで行ってそこで少し休もう」
そう言うとかぐやは「そうね」といい、後をついてきた。
頂上は広間のように広がっていたが、その先から太い枝が四方に伸び人が通れるほどの道を作っていた。
「かぐやの月の国っていうのはこれよりもっと高いんだろ?どうやって行くんだ?」
「月の国にだけ伝わる秘術ってやつね。簡単に言うとテレポートみたいなものよ」
それは便利だな。
月の国まで行きたい時はかぐやがいないとってことなのか。
「まあそれ以外にも方法はあるっちゃあるけれど、ほぼ無理ね。基本は秘術よ」
それ以外の方法が気になったが、すぐそこにミッドウェルの入り口があったのでこの話は終わることにした。
「ついたわね。ミッドウェル。なんだかあんまりよくない雰囲気かと思ってたけど以外と活気付いてるというか…なんというか…」
そんなことをかぐやと話していると目の前に巨大な花が突然咲いた。
しかもその花はそのまま喋り始めたのだ。
「やあ、僕はミッドウェルのフラワンさ。君たち見たところ下界人じゃないのかい?なぜここへ?」
突然花が現れただけではなく喋り始めたので驚いたが、平常心を取り戻して会話することにした。
「どうも。俺たちは確かに下から来たが、用があってなんだ」
「ほう、それはどんな用だい?」
「下にある村に突然このミッドウェルから瘴気を発する物体が降ってきてな、その調査ってわけだよ」
フラワンは驚いた顔をして、「オーケーオーケー」と手のように見える花を振ってみせた。
「最近このミッドウェルは景気が良くてね、みんな嬉しくて踊ってる時に落としたのかもしれないね」
景気がいい?
どういうことだ?
鬼が現れたならミッドウェルも同様に支配されているはずだが…。
やはり鬼の仕業ではないのか…?
「その落っこちてきた物体を消す方法を知りたいんだ」
そう言うと突然フラワンは先程と表情を変え、怒り出した。
「なんてことを言うんだい!このミッドウェルの財産を消そうなんて、なんて野蛮な輩だ!ミッドウェルに任せておけばいいんだ!」
そう言って突然種のようなものを飛ばして攻撃して来た。
俺は咄嗟に剣を抜いてガードできた。
かぐやは大丈夫か!?と思い横を見ると、魔法の杖のようなものを抜いてバリアを貼ってガードしていた。
「いきなりなにすんのよ!」
かぐやが怒り出すとフラワンは「お前たちには分からない!」と言って地面に潜り姿を消した。
「なんだったのあいつ、最初は機嫌よく話してたと思ったら突然怒り出して」
何か、このミッドウェルにも起きていることは確かだ。
そもそも先程のフラワンが住人なのかすら分からない。
もしかしたら鬼の配下だったのかもしれない。
しかし、あの種のようなものの威力はとても弱かった。
あれが鬼の配下…?
「桃太郎、とにかく入口で突っ立ってるのもなんだし中に入りましょ」
そう言ってかぐやは何事も無かったかのようにテクテクと歩いて行った。
なんだかかぐやといると少し調子を崩すな。
でも緊迫感が和らぐのは確かだ。
そうして俺もかぐやの後を続いた。
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中に入ると大勢の花たちがワイワイと騒いでいた。
やはりこのミッドウェルは花が住人だったのだ。
フラワンは鬼の配下では無かった。
ではなぜ下の住人が困っているというのにあんな真似を…。
何か、鬼の予感がする…。
「綺麗な場所ね。ここにずっといたいくらいだけど早くどうにかする方法を探しましょ」
「そうだな、まず住民に聞き込みをして状況を整理しよう」
そうして俺たちは花を刺激しないようにこのミッドウェルに最近何があったのかを調査した。
花たちの話いわく、突然巨人がこのミッドウェルに降りて来たらしい。その巨人に皆、恐れ慄いたが、その巨人は何も手出しをしなかった。
それどころか、富と財産を配り、民の暮らしを裕福にしてくれたそうだ。
そしてその巨人を長と崇めたて、巨人の言うことはなんでも行ったらしい。ミッドウェルがよくなると信じて。
そうしてある物体をこの下に落とすように指示されたそうだ。
それがあの"カブ"である。
これではっきりした。
その巨人は鬼で、民は鬼とこの国を守っている。
だから消す方法を探していると怒り出したのだ。
これは思ったより厄介な展開になっているのかもしれない。