おとぎばなし
「何よこれ…」
村に着くと、村にはおびただしい瘴気のようなものが漂っており、外には誰一人居なかった。
「この瘴気はあんたも吸うと危険よ、息を止めて待ってなさい」
そう言うとかぐやは詠唱無しで俺と自分に魔法を施した。
「もういいわよ、光のバリアで身を守っているからこの瘴気には晒されないわ」
実はかぐやはとても有能なのではないかと少し感心したが、それを言うとおそらく調子に乗るのでお礼だけ伝えておいた。
村を歩いている途中、ずっと周りから視線は感じていた。
村の外は瘴気が漂い、作物は枯れ果て、誰もいない。
しかし村には人が住んでいる。
家の中にいて出てこないのは瘴気を吸わないため。
「何がこの瘴気を起こしているのか突き止めましょう」
そうかぐやがいい、2人で並んで村を見て回った。
が、その原因はすぐに判明した。
大きな、とても大きな"カブ"が村の中心に刺さっている。
「カブ…?なんであんな大きなものがここに」
俺はかぐやと目を合わせ、頷きあった。
大きなカブ…童話…。
あの童話の大きなカブだとして、なぜ瘴気を放っているのか。
しかも大きなカブは海外の童話じゃないのか?
今まで経験してきたものとは少し違う…。
「かぐや、お前ならこのカブを魔法で消せないか?」
「できないわね。これは人工物。なにか特殊な魔力を感じる。これを作った者しか消し方はわからないはずよ」
「そうか…。とりあえず、村の人たちに話を聞かないとどうにもならないな」
「わかったわ、短時間だけどこの村に瘴気が関与しないようにしてみる」
そう言うとかぐやは詠唱を始めた。
さすがに先程のバリアとは違い、大掛かりな魔法となると詠唱が必要なようだ。
俺たちの詠唱とは少し違い、かぐやの周りに魔法陣のような者が現れる。
「光の道、光の輪、光の渦、三種を用いて汝に告げる、我に女神の祝福を。ホーリーフィールド」
かぐやがそう唱えると魔法陣が村の規模まで大きくなり、光を放った。
瘴気で澱んでいた村は光が差し込み、何も関与しないようなバリアが貼られていた。
「ふぅ。どう?短時間だからさっさと聞き込みを終わらせましょ」
「お前、有能なんだな」
「ふっふーん。あったりまえでしょ!」
しまった。つい言葉にしてしまった。
だがつい言葉にしてしまうほどの見事な魔法だったのは確かだ。
るんるんのかぐやは置いといて、俺は村の扉を叩いて回った。
多くの人は瘴気が一時的に無くなっていることに気づいていなく、出てきてはくれなかった。
しかし、一つの家の扉を叩いた時、中から声がした。
「君たちはなぜ無事なんだい?あの空気を吸ってしまうと皆死んでしまったのに…」
「この横にいる女の子の力だ。一時的だが、村自体に魔法をかけさせてもらった。今は出てきても大丈夫だ。話をきかせてもらえないか?」
そういうと恐る恐る、ゆっくりと扉が開いた。
中から出てきたのはスラっとした顔つきの男。
「僕はジャック。ここに越してきたばかりだと言うのにこんなことになるなんて…」
ジャックはそう言って一通りの経緯を説明してくれた。
ジャックは最近ここの村に引っ越して来たらしく、村の人にも歓迎され、仲良く暮らしていたようだ。
しかし、突然空から地鳴りのような音が鳴り響き、先程のカブが落ちてきたそうだ。
そのカブは最初は何もなく、この村への食糧だと皆が喜んだが、突然瘴気を出し始めたらしい。
次々に倒れて行く仲間を目の前に村の人は家に篭り、瘴気から身を守りはじめた。
瘴気がそれから無くなることは無く、家から出れず、貯蓄していた食糧もそろそろ底をつく所だったと。
一連の流れは理解したが、鬼の仕業かは分からなかった。
なにせ空から突然降ってきたのだ。
この上に何かあれば別の問題なのだが。
「あるわよ」
かぐやは何事もないと言った顔をしてそう言った。
「え、なんて…?」
「だから、あるって言ったの。空に。空に浮かぶ島。聞いたことない?有名よ?」
「そんな、おとぎばなしじゃあるまいし」
「でも誰も行ったことはない。高すぎるからね。その島の名は"ミッドウェル"。私が月の国にいた時、浮いているのを見たことがあるわ」
そんなバカな。
いやでもなんでもありの世界だ。
島が浮いていると言われても何も問題ないのか…?
「あのう…カブと一緒にこれも落ちてきました」
そう言ってジャックは俺にある物を渡した。
受け取り、よく見てみると、、、。
種?のような物だった。
ジャック…種…。
天空の島…。
大きなカブ…。
まさか、ジャックと豆の木!?
これで…天空に…!?




