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異世界転生鬼退治  作者: ぽむりんご
ネズミの地下帝国編
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剣の先

〔桃太郎〕


「だ、誰なんだ…?」


誰だこの人は…?

敵!?敵がまだ潜んでいた?

いやしかし、ユリウスを最後に仕留めたのは確かにこの女性だ。

とても綺麗な容姿に整った着物。

とても鬼とは思えない。

くそ、体が動かない。

修行では本気で打ったことがなかった落山。

こんなにも反動があるのか…。


「警戒しなくてもいいわよ。敵じゃないから。てかその鬼倒してあげたんだからお礼くらいあってもいいんじゃない?」


そう言ってその女性はふんっとふんぞり返る。


「あ、動けないの?待ってね治してあげるわ」


そして先ほども見た光のようなものが俺の辺りを包んだ。

ユリウスのように天に浮かんでいくかと思ったが、何事もなくその場で光り続けた。

数分もすると体が少しずつだが動くようになり、立ち上がることができるようになった。

邪悪な感じは無いし、味方と見て良さそうだと感じた。


「疑って悪かった。俺は桃太郎。さっきは助かった、ありがとう」


「それでいいのよ。私は"かぐや"よ。皆んなからはかぐや姫と呼ばれているわ」


かぐや姫!?

あの竹取物語の、、、

金太郎に浦島、それにここはおそらく'おむすびころりん'に登場するネズミの国。

そしてかぐや姫までが出てきた。

一体この世界は…。


「とにかくさ、こんなとこでじっとしてる暇あるの?街も仲間も大変なんじゃないの?」


確かにその通りだった。

吹っ飛ばされた金太郎は生きているか!?

血を摂られていた浦島は!?


すると金太郎が吹っ飛ばされた方向から土煙と共に金太郎がこちらに歩いてくるのが見えた。

よかった、生きていたんだな。


「悪りぃ、気失ってた。ユリウスの野郎は?それになんだこの女は」


頭とお腹を押さえながら金太郎がそう言った。


「あぁ、ユリウスはなんとか倒せたよ。この女性はかぐやだ。危ないところで俺を助けてくれた」


「女って失礼ね、野蛮な奴はこれだから全く」


「おう、そうか、ありがとな。かぐや」


いつもなら言い返していてもおかしくない状況だったが今回の金太郎はやけに素直だった。


「それより浦島は大丈夫か」


金太郎がそう言い、3人で走って浦島に近づく。

金太郎が「おい!浦島ぁ!起きろ!!」

と肩を揺すると浦島は「うーん」と言いながら目を覚ました。


起きた浦島はハッとし、「ユリウスは!?」と混乱している様子だったので、今までの経緯を一通り説明した。


しばらくして落ち着いた浦島は自分に何があったを話してくれた。

そして浦島を危険な目に合わせたことを謝ると、気にしてませんと笑ってみせた。


「あのねー、仲良く団らんはいいけど街やばいわよ?聞こえてる?この音。もしもーし」


かぐやが3人に向けてそう言った。

俺たちも急ごうと言い、ユリウスの屋敷を出た。


ユリウスの屋敷の玄関を開けるとまず目に入ったのはとてつもない巨人だった。

奴がユリウスの言っていたもう一人の鬼。

その巨人の元へ4人が向かおうとした瞬間、辺りいっぺんが光り、鬼の体が真っ二つになった。


一瞬、何が起きたかわからなかったがすぐに理解した。

ネズ太の言っていた秘策。アビリスさんだと。


「なになに、あいつ、急に真っ二つになったけど!」


かぐやは引いてたが、俺たち4人はその方面へと向かった。

鬼の足元周辺に着くと、そこにはアビリスさんと思われる者とネズ太が一緒にいた。


アビリスはお腹がへこみ、口から血を吐いており、両手はボロボロになっていた。

その横たわるアビリスを抱え、涙ぐむネズ太が痛々しかった。

俺たちはそっと、近くに寄った。


「アビリスさん…アビリスさん…」


「そんなに…泣くな、ネズ太よ。どうだ…お前の信じた…英雄は…」


「はい…。かっこよかった…。あなたの勝ちです…アビリスさん…」


「民は…国は…無事か…?」


そうアビリスが言い、俺たちも辺りを見回すと、反旗を起こしていたネズミたちはボーッと辺りを見回し、武器を置き「なんだこれは!」と叫んでいた。

おそらくユリウスによる洗脳が施されていたのだろう。


「はい。あなたが救ったのです…。やはりあなたは英雄だ…」


アビリスの呼吸が早くなる。

もう長くないということをその場の誰もが悟っていた。

そしてそんなアビリスとネズ太にかける言葉は見つからなかった。


「ネズ太…。ありがとう…な。妻が。シェリルが俺を…導いてくれた…」


ネズ太は静かに頷いてアビリスの話を聞く。


「剣の先…答えは見つかったよ…。俺が欲しかった…探していた…モノ…」


「人々の笑顔だと…」


「俺は先に…シェリルの元へ…逝く。ネズ太…。民はお前が守れ…」


驚くネズ太。


「私の剣…を…お前に託す…。私が死んだら…家に行くといい…お前の答えは…そこにある」


そう言ってアビリスは最後の力を振り絞って自分の剣をネズ太に渡した。


「奥さんを…大切にな…」


そう言ってアビリスは笑って目を閉じた。

その場にいた全員が、黙って目を瞑り、胸に手を当て、小さな英雄に黙祷を捧げた。


ネズ太も涙を拭い、決意を決めた顔をしていた。

.

.

.

ゆっくり休んだ後日、ネズ太の家に招かれた。

宿に戻るまでは一緒にいたかぐやは姿を消していた。


街は修復作業に取り掛かっており、洗脳されていた東軍は国王とネズ太の計らいによって修復作業を率先して行うことによって無罪となった。


「桃太郎さん、この度は本当にありがとうございました。」


「いや、アビリスさんを救えなくてすまない」


「いえ、あの方は最後に笑っていらっしゃいました。国が守られ幸せだったのだと思います」


「特にお礼ができずに申し訳ありません。しかし、アビリスさんの家に鬼に関する情報がありました」


「ここから東の地域にある場所に鬼が潜んでいると」


壮絶な戦いだったが、鬼に悩まされている場所はここだけではない。

一刻も早く皆を救いに行かなければ。

東の地域。ここよりも壮絶なことになってないといいが…。


「あと、これを」


そう言われ渡されたのは青く光る珠のようなもの。


「これがあれば再びここへ帰ってこれます。なにか助けがいる時はぜひ立ち寄ってください!」


魔法もある世界ならこれくらいの魔法アイテムはあるだろうと納得した。


「じゃ、ネズ太。お世話になった。またいつかくるよ」


そう言って俺たち3人はネズミの国を後にした。

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