激闘。英雄アビリスVS巨鬼ベルモンド
〔アビリス〕
桃太郎とユリウスが激しい戦闘を繰り広げている同時刻。
街には大型の鬼が進行して来ていた。
その進行の破壊力はひと踏みで家屋を全壊させてしまうほど。
アビリスは家屋を軽快に飛び移り、その巨鬼の元へと向かう。
あの鬼を放っておいてはこの国は終わってしまう。
もう一方の鬼の気配も強くなっている。
早くここを片付けなければ!!!
だが、あのような巨大な者を相手にしたことはない。
私の技があの巨体に通じるのか…。
そうして家屋を飛び越えているうちにその巨鬼の元へとたどり着いた。
対面してみるとなお、その大きさをひしひしと感じる。
そしてまた、この鬼を野放しにしてはいけない。
そう長年の直感が告げている。
やるしかない!!
剣を抜き、鬼の肩へと飛び移る。
幸い、この巨体で体の動きは鈍い。
これならダメージを受けずに立ち回れる!
肩から首へと剣を振り切るが、刃が通らない。
肩に乗った異物を検知したのか、鬼は片手でそれを振り払おうとする。
まるで蠅でも潰すように。
咄嗟にアビリスは肩から飛び退き、体制を立て直す。
剣が通らないとなると、威力が必要だと考える。
落下していく体を高速回転させ、腹から足へと切りかかる。
回転が生む剣の威力は鬼の皮膚へと通じる。
だが、傷は浅い。
切りつけられた鬼の皮膚が瞬時に修復していく。
再生機能が特出していた。
地面に着地するアビリスを鬼は咆哮と足を大きく上げ、踏みつけようと試みる。
長年の経験がアビリスの体を動かす。
再生機能が厄介だ。
切りつけたとして致命傷にならない。
私の技が通じるとも決まったわけでもない。
どうする。考えろ、国を救え!英雄よ!
そんな迷いが鬼の追撃を許してしまう。
鬼は片手でその一帯を消し去るように薙ぎ払う。
案の定、家屋は壊れ、砂と壊れた扉や襖などが空へと舞う。
迷いは時に人を蝕む。
剣の先に答えがあると言われたのではないのか!
例え技が通じなくても、それでも!
打ち出すことに意味があるのだ!
一ノ剣。三日月斬。
三日月の形に切り刻むその剣技は鬼の胸に直撃するが傷が残るだけ。すぐに修復を開始する。
修復する暇を与えるな、次の技を繰り出せ!
ニノ剣。稲妻斬。
雷魔法を剣に宿し、切りかかるその剣技。
雷がかすかに鬼の動きを止める。
感電し、わずかに修復が遅れる。
この隙を、私が!見逃すはずがない!!
三ノ剣。一点一画。
心臓に向かって放たれるその剣技は一点を集中して斬りつける剣技。
あまりの速さの剣技の連続に鬼の修復はわずかに遅れる。
だが、このまま鬼が許すわけがなかった。
心臓を狙われていると分かった鬼はその部分を重点的に守り始めた。
そして足を大きく振り回し、アビリスを攻撃する。
連撃後の隙を突かれ、その足はアビリスに直撃し、吹っ飛ぶ。
アビリスは家屋に激突し、血を吐き出す。
肋の骨が数本折れているようだった。
幸い内臓には刺さっておらず、まだ動ける。
ふと横を見ると倒れて、死んでいるネズミ族がいた。
また俺の剣は誰も守れないのか。
また悲しみを増やすのか。
また君を失うのか。
「シェリル…」
妻の名を呼ぶ。
極限状態のアビリスには妻、シェリルの幻影が見える。
「あなた。私は幸せでした」
「あなたが民を守っている姿。剣を持つ姿。それが私の誇りです」
「だから、後悔しないで。剣を持ったことを。私を失ったことを。前を向いて、国を救って」
「愛してる。ずっとあなたを」
アビリスは目を赤く光らせ、咆哮を上げる。
勢いよく地面を蹴り、鬼の元へと一瞬で到着する。
鬼は反応できなかった。
四ノ剣!!!
春ノ木漏れ日!!!
桜の幻覚が舞う。
先程までの剣技とは比べ物にならない威力のそれが鬼の片手を削ぎ落とす。
「アビリスさん!!」
「アビリスさん!勝って!!」
「あなたが勝てなければ誰が勝てるんだ!」
「負けないで!アビリスさん!!」
下から民の声が聞こえる。
数年、姿を消していた私を覚えててくれている。
こんな私を信じてくれているのだ。
また誰も守れない?
違う!!
俺の剣は民のためにあり、国を救うためにある!
感謝するぞ、ネズ太。
ここが俺の居場所だ。
全て、私が救ってみせる!!!
シェリル、見ていろ。これがお前が愛した男の剣技だ。
「英雄として!負けるわけにはいかない!!」
奥義。
天叢雲剣ーアマノムラクモー
振りかざすその一刀は。
鬼の体を真っ二つに引き裂いた。




