英雄の帰還
間も無くして遠方で煙が上がり始めた。
それと共に鳴り響く爆音。
戦争が始まってしまったのだ。
「もう止められません。我々も反撃を!」
ネズ太が周りのネズミ達に伝える。
「桃太郎さん、浦島さんが帰ってこないのはやはりおかしいです。ここは我々に任せてあなたは一番可能性の高いユリウス卿の屋敷へお急ぎください!」
助力すると言ったが「ここは任せて!」と言って聞かないネズ太を見て俺も覚悟を決めた。
確かに戦争が始まってなお、ユリウスが現れないのも浦島が帰ってこないのも変だ。
俺と金太郎は互いに目を合わせ、ユリウスの元に向かった。
走っていく最中、多くのネズミが倒れ、民家は燃やされ、崩壊していた。
こんなことにするはずでは…。
「おい桃太郎!ここでそんな顔するんじゃねえ!始まっちまったものはしょうがねえ!全力で食い止めるぞ!」
金太郎が激励する。
おかげでやるべきことがはっきりした。
俺は今やれることをやらなくては。
ユリウスの元へ!!
〔ネズ太〕
桃太郎さん、どうかご無事で…。
あなたは強い方だ。なんとかしてくれる。
私たちはなんとかこの戦争を持ち堪えなくては。
火の周りが早い…。
相手の勢力も多い。
とにかく私は皆に指示を!
「全員、この際民家は捨てるのだ!自らの命を最優先に!倒れた者を運べ!後ろに後退するのだ!」
だめだ、皆指示が聞こえていない。
なんとかならないのか…。
桃太郎さんにああ言ったもののもう我々だけでは…。
その時、頭上から声がした。
『皆、聞け!焦ってはならぬ!救護が必要な者を最優先に後ろへ後退するのだ!!!』
透き通る声、遠くまで響く。
その場にいた者が全員、声の方へ振り向く。
アビリスさん!!!!
やはり来てくれたのですね!!
「ネズ太!遅くなってすまない。今からでも間に合うか?」
「ええ!大丈夫です!最強の英雄が来てくれたのですから!」
.
.
遡ること1日前。
私はあれから毎日アビリスさんの所へ赴いた。
何度も帰れと言われた。
しかし諦めなかった。
秘策を用意しておかなければ。もしものために。
最強の英雄を取り戻すために。
そうしてようやく、話を聞いてもらえた。
「アビリスさん。この国が終わろうとしています。あなたの力が必要なのです」
「もう剣は置いたんだ。俺は国のため、国民のためにと動いてきた。だがそれは全部間違いだったんだ」
「間違ってなんかいませんよ!あなたのおかげで助かった命もあるんです」
「だが!妻を救えなかった!!」
アビリスが怒鳴る。
そして我に帰り「すまない」と言い話を続けた。
「妻は俺の原動力だった。殺した貴族が捕まり裁かれた後も俺の中のモヤが晴れることはなかった。だから答えを探すために剣を置いた」
「私は…奥さんとは生前仲良くさせていただきました。とても明るく強いお方だった。あなたには言っていないかもしれません。でもいつも言っていたことがある」
「?」
アビリスがこちらを見る。
泣きそうな目で。
「戦う夫が好きだと。剣を持つ夫が好きだと。答えは剣の先にあるんではないですか?」
「剣の先…」
.
.
.
現在。
アビリスが飛んでネズ太の元へ近づいた。
「アビリスさん、やはりあなたは英雄だ」
「剣を置いて現役を退いていた身だ。かつてのように動けるかはわからんぞ」
その時攻め入ってくる西軍の方からドゴーンと大きな音がした。
なんだなんだ?と皆が見る中6メートルほどはある何者かがこちらへ進行してきているのが見えた。
あれは…まるで…鬼だ…。
桃太郎さん!!!!!
金太郎さん!!!!!
浦島さん!!!!!!
御三方は無事なのか?
あんなものがここへ到着してはこの国が終わる!
鬼は、西軍と繋がっていた!?
思考がまとまらない、、、
「ネズ太、ここは任せれるか?どうやら鬼はあいつだけではない、気配を感じる。」
「鬼がやつだけではない!?」
「しかし、勇者をここに呼んだのだろう、ネズ太。大丈夫だ、その気配はその者たちと対立している。任せて俺はヤツを仕留めにいく」
桃太郎さん達、まだご無事なのですね。
もう1人の鬼との対立。
勝ってください。どうか…。




