信念、戦争、最初から。
〔浦島〕
その後はネズ太さんは入れないということで、関門で別れ、僕は奴隷取引屋に引き取られた。
あくまで僕は奴隷という役割、うまく権力の持っている貴族に仕えることができれば情報を聞き出せるだろう。
ここは恥を捨て、媚びを売るしかない。
そんな中奴隷取引屋につき、牢のようなものに入れられた。
店主は「ここで買い手がつくのを待ってろ」といい残し、その場を去った。
牢の中には多種多様なネズミ族がいて、その多くが痩せ細り怯えていた。
こんな現状を許していいわけがない。
僕は悔しい気持ちをグッと堪え、必ず助けると心に誓い、我慢した。
しばらくすると店主と共に1人の男が牢に近づいてきているのが見えた。
薄暗くてよく見えないが、近づいてくるにつれ、容姿がはっきりした。
ユリウスだった。
まさかこんなにも早く、、、
ユリウスと再会するとは。
しかもこんな状況で。
しかし、これはまたとないチャンスだ。
ユリウスはおそらく貴族で最も権力を持つ男。
ユリウスにさえ買われてしまえば情報が確実になる。
「ほう、なかなかの上玉が入ったようですね。」
ユリウスは僕を見てそう言った。
……バレていない!
あのユリウスでも誤魔化せた。チャンスだ。
「はい〜ユリウス様。こちらは今日入荷した人間の奴隷でしてなかなかの上玉でございます〜」
「なるほど、ちょうどいい。人間の奴隷が欲しかった所なのです。頂きましょう」
「これはこれは!ありがとうございます〜」
即決。
僕はユリウスに買われた。
その後手配があり、僕はユリウスに引き渡された。
と、言ってもユリウスの屋敷に着くまでユリウスと対面することはなく、ユリウスの執事に連れられた。
「では、旦那様がお呼びですのでお部屋へ」
そう執事が言い、部屋に入ると月夜に照らされたユリウスが椅子に座り、手をクイっとこちらに向けて見せた。
「こちらへ」
そう低い声で言い、僕は言う通りに歩いて近づいた。
「少し話を聞いていただけますか?」
そうユリウスが言った。
僕は素性がバレてはいけないと思い、声を出さず、頷いて見せた。
その後、ニヤッと笑い、ユリウスが話し始めた。
『私は。私には信念と言うものがあるのです。
分かりますか?……いえいえいえ、分かっていただかなくても結構でした。このネズミの国。
こんな狭い狭い国で貴族と称えられ、
私は今ではトップに上り詰めた。
あぁこれほどの優越感があったでしょうか?
いえ、無いのですよ。無いのです。無さすぎた。今までの人生で私はなぜこんなにも認められないのか?優秀な人材がなぜ国を統治しないのか?疑問ですよね。答えは簡単です。何かって?
それは【平等】なのですよ。優秀な人材と下等な劣等種と全てが平等?笑わせますよね、全く。
つまりですよ?私があなたのような方と同じ?
笑わせる。人間だろうがネズミだろうが関係はない。私は優秀なのです。
いずれ、この国だけではない、世界を統治する。
この私が。それに値するだけの力をあの方に頂いたのです。
だが、その大義名分を成すには邪魔な存在がいるのです。
東の地域の下等種族。なぜ?なぜ?なぜ?ここまで優秀で素晴らしい私に反抗する?
なぜあんな王がこの国にいる?
認められるのは私であり、あなた方ではない。
いいことをした者が称えられるのか?
違ウッ!!!ワタシは。ハァハァ……
あなた方がユルセナイ。その浅はかな考えが破滅を招くことをワカッテイナイ!!!!
全員、コロス。ワタシが!!!王になるのだ!!
そうだろう!浦島ァァァ!!』
バレていたのだ最初から。
鬼は近くにいたのだ最初から。
月夜が輝くその部屋で、酷く醜く形態が変わっていくユリウスを見て、悟った。
逃げられないと。
あとは頼みましたよ、桃太郎さん。
〔桃太郎〕
浦島を送り出してから1日。
ユリウスに貰った猶予の日だ。
結局、浦島からの情報はなく、鬼を倒すことはできなかった。
この国の、東と西の戦争を阻止することはできなかった。
人々救うと、そう誓ったはずなのに、悔しかった。
ネズ太は「気にしないでください」と俺を励ますが、その顔は酷く沈んでいた。
それもそうだ。もうすぐ戦争が始まってしまう。
戦争が始まれば多少なりとも死者や負傷者は免れないだろう…
俺たちが不甲斐ないばっかりに。
鬼を倒してくれると信頼してくれたのに。
「桃太郎さん、大丈夫です。こんなこともあろうかと秘策を用意しておきましたから!」
そうネズ太が言う。
「戦争が始まれば、俺たちも助太刀はする。犠牲を無くすため、全力で動く」
ネズ太にそう伝え、ネズ太は「はい!」とさも気にしてないかの如く、明るく振る舞った。
しかし浦島は大丈夫なのだろうか。
だがあいつも強い男だ。
そう簡単にはやられないだろう。
まずは目の前の戦争を止めること。
それのみに集中する。
金太郎も俺と同じ気持ちのようだ。強く握りしめた斧が震えている。
絶対に勝つ。そしてまた平和な国にしてあげるんだ。




