戦争の予感
俺たちはネズ太とネズ美についていき、国王の間へ急いだ。
ユリウス卿を止めなければ、この国がさらに悪化してしまう。
鬼が今現在どこにいるかわからない状況ではまずはこっちの問題をどうにかするべきだろう。
そうして走ってネズ太について行って国王の間へたどり着いた。
扉の外からすでに中でなにか話している声が聞こえていた。
「ここが国王の間です!もうすでに中で話が始まっているようです。国王の前なので無礼なくお願い致します。」
そう言われ、俺たち3人は身構えた。
そうして、ネズ太が扉を開けた。
「王よ、先ほども申した通り、鬼がこの国へ侵入したのは王の責任だと、議会でも多数の声が寄せられております。」
ネズミの姿だが、細身で長身の煌びやかな衣装に身を包んだ者が言葉を吐いた。
「桃太郎さん、あれがユリウス卿です。今のこの国で最も発言力がある方です。注意して見ていてください」
ユリウス卿。
たしかにオーラが漂っている。
ネズミの中でも只者ではない雰囲気だ。
「ユリウス、お前の言い分はわかる。我々も体制を立て直し…」
「いいですか!王よ!そんなことを聞いているのではないのです。責任は責任、王という座を辞していただきたい。」
ユリウスは国王の話を途中で遮り、そう言い放った。辺りの空気がピリつく。
「ま、待ってください!」
ネズ太が会話に入り込んだ。
一斉に貴族数十名、国王、護衛達、国王の間に居たものがネズ太に視線を向ける。
「おぉ、これはこれは、東のネズ太さんではありませんか。貴族でもないあなたがこの神聖なる間へ入るとは随分といい度胸ですね?」
ユリウスがネズ太へ向けてそう言い放つ。
ユリウスの周りの貴族達もクスクスと笑いだす。
金太郎が割って口を出そうとしたが、浦島がそれを止める。
その判断は正しい。今はこの小さなネズミの勇気を邪魔してはいけない。
「そ、それは百も承知の上です。しかし、国王だけに責任を向けるのは違うと思うのです!」
「ほう、我々が間違っていると?いや、ここは公平な場だ。あなたの意見も聞きましょう」
ユリウスがニヤリと笑う。
いやな笑いだ。
「我々ネズミ族は元々、全員が公平な種族。鬼が侵入したことによる統治不足は我々ネズミ族全員の責任であると私は考えます」
「なるほど、あなたの意見はそうなのですね。では我々全員が責任を取ると?そんな方法がないから国王に全責任を負ってもらうのですよ」
「わ、わたしたちが鬼を…鬼を倒します!それができれば、王の辞職を無かったことにしてもらいたい!!」
辺りが静まり返る。
ネズ太の発言はそれほど重いもの。
貴族達は大声で笑い出す。
何を言っているのか、あのネズミはおかしいと。
王もただ、静かにその様子を見守る。
「いいでしょう!異国の方が後ろにいますが、まあ関係ない。あなた方が鬼を倒すことができれば、この件は無かったことにしましょう」
「3日です。3日の猶予でやり遂げてください。それができなければ、西の地域から東の地域へ全面的に戦争を仕掛けます。長きに渡る、対立を終わらせ、この国を一変するためです。もちろん、王にも辞してもらいます。いいですね?」
ユリウスはネズ太に向けてそう伝えた。
全面戦争、、宣戦布告、、。
そう捉えるのが自然だろう。
そして、ユリウスは「失礼」といい、王の間を去って行った。
「けっ、なんだあいつ、気に食わねえ。なんで止めやがった浦島。」
「あの方の勇気を無駄にしてはダメです。これは一応ネズミの国の問題。私たちはあくまで鬼を退治するのが目的です」
そう、浦島が金太郎をなだめる。
王は俺たちに向かって口を開いた。
「私が不甲斐ないあまりに、君たち国民まで危険に晒してしまってすまない。」
もう半ば、諦めているようだった。
ネズ太や、俺たちでは鬼を倒すことはできないとそう思っているのだろう。
しかも期限は3日。もう時間がない。鬼の位置もわからない。
「すみません。桃太郎さん。勢いとはいえ、無茶な約束をしてしまいました…」
ネズ太は肩を落とし、落ち込む。
ネズ美は背中をさすり、ネズ太を励ます。
「いやネズ太。お前の勇気は十分に見せてもらった。ユリウス卿。あいつは俺も気に食わない。どうにかしてこの国を救おう」




