ネズミの国への入国条件
「桃太郎さん、ここが我々ネズミの国への入り口でございます。」
ネズ太に案内されたそこはなんの変哲もない大きな木の根元。
ここから本当にネズミの国へ行けるのか?
「どこから入るんだ?入り口のようなものは見えないけど…」
「少しお待ちください」
そう言うとネズ太は木の根元へぴょこぴょこと歩いていき、根元を叩き始めた。
するとその根元に直径2センチほど穴が空いた。
「他の侵入者を妨げるためにネズミほどの小ささがある我々が門を叩かない限り開かないようになっているのです。」
ネズ太はそのように説明してみせた。
「それならなんで鬼に入られたんだぁ?」
確かに金太郎の言う通りだ。
鬼が最初からネズミのような小ささなわけがないし、なぜなんだ?
「それは…恥ずかしながら、ネズミ族の中に裏切り者がいるかもしれないのです。」
ネズミ族の中に裏切り者!?
確かにそれなら門を開け、鬼を中に入れることが可能だが、なぜ鬼の仲間になっているんだろう。
「我々も信じたくはないのですが、その可能性しかないと考えております。」
「つまり、鬼を倒すだけではなく、そのネズミ族の裏切り者も炙り出さなければ万事解決とはいかないわけか」
「そう言うことになります…。ですが!そこまで桃太郎さん達に任せるわけにはいきません。同族の責任は同族が取りますゆえ、桃太郎さん達は鬼さえ倒していただければと…」
まあ、そこまで言うならそうだな。
実際、ネズミ族なんてネズ太しか知らないし、任せるのが一番妥当だろう。
裏切り者がどういう処遇になるのかはわからないが、明るい未来は期待できないな。
「とりあえず、我々の国へ入国しましょう!ではみなさん近づいてきてください」
そう言われ、俺たち3人はネズ太の方へ近づいていった。
するとその瞬間、目の前の景色が歪み始めた。
めまいに近いが、少し違う。
そんな感覚が襲い、そのあと視界がはっきりした時には直径が2センチほどしかなかった穴が見上げるほどの大きな穴になっていた。
「小さく…なったのか…?」
周りを見渡すと、木々や草花が軽く自分の目線を超えていた。
「おいおい!本当に小さくなっちまったのか俺たちは!?」
金太郎と浦島が驚いている。
俺も正直びっくりしていた。
小さくならなきゃネズミの国へ入れないのだから当然のことだが、やはり実際に体験してみると変な感覚だ。
先ほどまでとても小さく感じていたネズ太も俺たちと同じ背丈になっていた。
「皆さま、無事小さくなれたようですね。これで我々の国への入国条件は満たしております。さ、行きましょう」
俺たちは言われるがまま、ネズ太の後に続いた。