四天王【風神】
乙姫から貰った手紙…。
これを誰に渡すのか、いつ使うのか、結局話した内容しか教えてもらうことはできなかった。
しかし、仲間が2人もできたことはいいことだ。
力自慢の金太郎、俺と相性抜群の浦島、、
そうだな、あと1人。あと1人仲間が欲しい。
そんな想いを抱きながら、俺たち3人は次に行く場所について相談していた。
「ここからだと次の街にはあの山を越えないといけませんね。かなりの大きさの山です」
浦島が言う。
「山がどうだってんだ。俺たちなら余裕だい」
「そうだな、どっちみち次の街へ行くには山を越えなきゃ行けないんだろ?じゃあ道は一つだ」
こうして俺たちは目の前にそびえ立つ山を目指していた。
鬼王がこの世界に住み着いてからと言うもの、街や村だけではなく、平原や山にも鬼が出没するようになっていた。
俺たちは山に向かう道中、何匹もの鬼を倒した。
赤鬼や夜叉と比べるとどうってことない鬼ばかりだが。
一つ分かったことは、鬼王から直接指示を受けていない鬼は言語能力がなく、知性も低い。
逆に赤鬼や夜叉のような指示を受けている鬼は知性が高く、強敵だということだ。
まだどんな鬼が待ち受けているかわからないが、四天王以外の鬼ならば3人の力があれば倒せそうな気がしていた。
そんな考えをしている時、三人の前に強烈な風が吹き荒れた。
強風は周りの木々を倒し、砂嵐を巻き起こす。
「な、なんだ!?」
風が止んだと思えば、あの時と同じ感覚。
【殺気】である。
瞬時に悟った俺たちは身構える。
そこに強烈な地響きとともに一匹の鬼が現れた。
「おうおう、夜叉の野郎がやられたって聞いて来てみればとんだ小僧3人だけじゃねえかよう」
その鬼は言葉を発する。
確実に鬼王直属の鬼、、、。
「ま、あいつぁ弱えし、仕方がねえか」
その鬼は空中に浮く雲にあぐらをかきながら乗り、顎髭を手で撫でながらそう言った。
3人は強烈な殺気により、体が硬直する。
夜叉や雑魚鬼を倒したことで浮かれていた。忘れていた。この世には上には上があるということを。
「冥土の土産に名乗っといてやらぁ。儂は鬼王護衛軍四天王の1人、風神ってもんだ。お前さんらちょっと調子に乗りすぎたな、鬼王様から殺すように命を受けているんでな、悪くおもうなや」
そう言って風神は肩にかけている袋のようなものを構え、俺ら目掛けてなにかを発してきた。
俺たちは体が動かず、死を受け入れるしかないと目を瞑ったその時、
ガギンと鋭い音が鳴り響く。
目を開けると、そこには1人の男が立っていた。
風神が発したその何かを剣で弾き返していた。
男は背丈が高く、長いローブのようなものをみに纏っている。
男が持つ剣は白く光り輝く不思議な剣。
「下がっていろ」
低く、冷たい声でそう言う。
男が再び剣を構える。
風神も全く動揺せず、それを見る。
2名の間にしばらく硬直があり、時が流れる。
しばらくして、風神が口を開いた。
「ふん、まだ生きとったか。分が悪りぃな。おい小僧ら、また会おうや。」
そう言って風神はまた強烈な風を起こし、飛び去っていった。
俺たちは安堵からか腰を抜かし、その場に座り込んだ。
男は剣を鞘に収め、こちらを見る。
「怪我はないか」
冷たく淡々と、そう俺たちに聞く。
「だ、大丈夫です。助かりました。あなたは…?」
「名乗るほどの者ではない。お前は桃太郎だな?乙姫から預かっているものがあるだろう」
そこで俺は手紙の事を思い出した。
これが使う場所、渡す人。
乙姫は俺たちが風神に襲われることも、この男が助けに来てくれることもわかっていたのか?
だとしたら、少しくらい説明して欲しかったものだ。完璧に死んだと思ったのだから。
そして俺は乙姫から預かった手紙を男に渡した。
男は手紙を受け取り、それを黙読する。
読み終わったかと思えば、口を開いた。
「なるほど。よし、3人とも俺についてこい」
そう言い、ローブをなびかせて歩き出した。
俺たち3人はお互いに顔を見合わせ、言葉を発しず、焦るようにその男の後に続いた。




