第1話
第1話 きっかけが欲しい
「しゅう!お前SNSやってないの?」
友達から学校の帰り道に言われた。
「SNSとかめんどくさい笑」
僕はそう言い返す
「なんやそれ笑お前の事やからSNS自体よく知らんやろ笑笑てきとーに言うたやん笑」
なんて友達から言われる。
図星だった。
楽しい事が好きで、何をするにしても楽しそうと思えないとやる気が起きないタイプだった僕にとってはSNSに自体に興味が無い。
楽しそうに思えない…
どうでもいいと思っていたから冷や汗をかいた。
一瞬だけ身体中の肌に汗がまとわりついた様な気分になった時に
「やってみたら案外便利やで笑」
そう言われた時、何故か僕は安心した。
その流れで言われるがままに、SNSのアカウントを作らされ、プロフィールの設定やら色々と友達にやってもらった。
「できたぞー!笑」
と笑いながら携帯を渡される。
「ありがと」
とりあえず返事をする
「お前のアカウントフォローしといたから、後でなんか送るわー」
そう言いながら友達は向こうの方に行ってしまった。
いつもなら少し見ていた、友達が小人になっていく姿を見る気も無く、右に曲がり真っ直ぐ家に帰った。
家に着いて、自分の部屋のベットに寝っ転がるや。
携帯を開くとSNSの自分のアカウントが目に入る、手紙のようなマークの所に①と表示されていた。
思わず気になって開くと友達からのメッセージだった。
「よろしく!」
その言葉と共にピースのスタンプが送られて来ていた。
どんな風に返したらいいのか分からなかったので自分もピースのスタンプを送り返す。すると…
「SNSどうや?思ってたよりも便利やったやろ笑」
友達から送られてきた。
「SNSやっぱりあんまよくわかんね、便利か?」
なんて思ったが、僕にはそんな言葉も伝える事が出来ずに、
「ほんとにそれ笑笑」
なんて思ってもいない言葉を送った。
その後、友達からグッドマークのスタンプが届いていた。
胸とお腹の間に大きな石のような重たい物がのしかかっている気分になった。
「今日は疲れてんなぁ」と思いながら携帯を閉じ、布団の上に置いて、リビングに行く。
いつも通りご飯を済ませ、お風呂に入り、寝る為に部屋に戻る。いつも通りの流れ…
その頃には胸とお腹の間に大きな石のような重たい物がのしかかっている気分など忘れ、「疲れてんなぁ」と思った事さえ頭の中から無くなっていた。
部屋の前に立つ、ドアノブに手を伸ばす…そのまま掴んで捻り始めた時に引き出しの奥から無くした靴下が出てくるように何かが頭の中に流れた。
部屋のドアが開く角度と比例するかのように、さっきの友達とのやりとりが頭の中に鮮明に浮かび上がる。
部屋に入ると思わず携帯が目に入る。
思わず携帯に手が伸びる、携帯を掴む。
すると、胸とお腹の間に何かがのしかかっている気分になった。
携帯と自分との距離が縮むに連れ、のしかかっている物が重くなって行くように感じる。「ダルい」と思った。
携帯を持ったままリビングに向かう。リビングに入ると母と妹がテレビを見ている。2人は今テレビでやっているドラマに釘付けで、自分がリビングに来たのも気づいてないと思った。
そのまま机にそっと自分の携帯を置いて部屋に戻ろうとした時に、
「こっちに携帯持ってくるなんて珍し、勉強する気にでもなったんか!?部屋にずっと居らんでテレビでも見よ」
と母親が言ってくる。
「べつにー気分的にー」
とりあえず何か返さないとと思い、棒読みでそう応える。
リビングを立ち去ろうとした時…
「ちゃんと勉強しんなんよー!」
という言葉が床を通して足に当たり、じわじわと耳に響いてくる。
「はいはい」
ってなんの気持ちもなく返す。
「はいは1回!」
と言う言葉が自分の返事の倍くらいの声の大きさで返ってくる。
「ウザい」
その言葉を自分の心の半分ともう片方がキャッチボールでなすりつけあっているような気持ちになる。
「はーい」
熱々のやかんに触ってしまった時思わず手をひっこめるかのように、反射的にそう返事をした。
母と顔も合わせること無いまま、自分の部屋に戻る。
布団に飛び込み毛布で自分の身体を覆う。
電気を消し忘れたことに気づき、毛布を足で蹴り立ち上がる。電気を消す、蹴った毛布を身体にかけ、目を瞑った。
今日が終わる…明日の事を考えることも無く、眠る。