目覚め
「おーい、おーい」誰かの叫ぶような声…。男の人の大きな声。ゆっくりと目を開ける。
ん?白い天井…それに誰?この男の人…。病院?どうして?
「やっと目が覚めたか、もう3日も目覚めないから。」え、3日?どういうこと?
「あ、あの、私3日も眠ってたんですか?あの、貴方は誰なんですか?」
「え、俺の事分からないのか?ほんとに分かんないのか?」そんなに必死になられても全く思い出せない。
「ごめんなさい。本当に何も覚えていなくて分からないみたいなんです。」
体を起こそうとするけど体にうまく力が入らない。全然動かない。私何でこんなことになってるんだろう。
「大きな事故でね、生きて居られているだけすごい事なんだ。大型のバスが横転してそこに乗っていた君と他の5人は助かったんだ。他の乗客者30人は助からなかったみたいだ…。君は1人で仕事の調査も含めて静岡に旅行に行くと言っていたんだけど、行きの夜行バスでこんな事故が…」
あぁ、思い出した。途中の急カーブでバスが横転して……そこは覚えてる。そうか、私は生きていたのか…。こんな状態じゃ何もできないけど生きてたんだ…。
「そうだったんですね…。でもごめんなさい。何もわからないんです覚えてないんです。事故のあの瞬間しか…。」
----ガラガラ 病室のドアが開いた。
「吉野さん、良かった。意識が戻ったんですね。」白衣着てる…病院の先生?
「先生!意識戻りました。でも、記憶がなくなってしまっているみたいで…。」
「吉野さん、ご自分の名前はわかりますか?」
「みあです。実亜。自分の事はわかります。あの先生…そこの男性は?」
「吉野さん、旦那さんですよ。」え、旦那?私結婚してるの?どうしてそんな大事なこと覚えてないの?
そもそもどうして私この人と結婚したんだろう。何もわからない今のままじゃ…黙るしかなかった。
「目覚めてすぐで疲れていると思うから今日はこのまま1人にしてあげましょう。旦那さんもまた明日ゆっくりお話ししましょう。」
「じゃあみーちゃん、また明日来るね。ゆっくり休んで。」
「はい、ありがとうございます。おやすみなさい。」
何もわからないまま1人になった。頭が追いついていかない。整理がつかない。
思い出そうとするとあの日までの事しか覚えていない。どうしてそこまでしか記憶がないんだろう。
明日になれば思い出すかもしれない。今日はとりあえず寝よう……。




