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096

 


 ロス・マオラ城――王の間


 深淵を囲うようにして、置かれた椅子。

 そこに座る魔王達は、いつになく落ち着きのない様子を見せている。


「召喚するメンバーと順番を決めたい」


 修太郎は魔王達にそう告げ、集めたのだ。


 修太郎はいつものようにプニ夫を抱いて束の間の癒しを得ている。魔王達の中でも、唯一召喚獣としての椅子を勝ち取っている銀髪の美女(シルヴィア)だけは余裕の表情で静観していた。


 とはいえ、次の召喚枠は竜の姿をとった黒髪の騎士(セオドール)と確定しているため、残す所はあと3枠となっている。


「どうした、落ち着きがないな第二位よ」


「あら、貴方こそ図体の割に不安で震える小鹿のようだけど?」


 罵り合っているのは主に白い少女(バンピー)髭の巨人(ガララス)で、執事服(エルロード)金髪の騎士(バートランド)に浮き足立つ様子はない。


「あのね、三つ目の枠についてなんだけど……」


 修太郎の言葉で罵り合いがピタリと止む。

 主に二人からの熱い視線を受けながら、修太郎はプニ夫を優しく撫でた。


「三つ目はプニ夫にするつもりなんだ」


「主様の理想とする構成から見ても、妥当な人選だと考えます」


 それを肯定するエルロード。

 バンピーとガララスも納得して頷く。


 修太郎は「黒騎士」の時に連れ歩いたメンバーを連想させないような、いわゆる人外的な形のメンバーで構成したいと考えている。なので狼になれるシルヴィアと黒竜になれるセオドール、そして元々人外で実力も申し分ないプニ夫の選出は妥当であった。


 問題はその次――四つ目、五つ目の枠だ。


 バンピーとガララスはその枠を狙っている。そんな様子をバートランドは楽しそうに眺めていた。


「とりあえず五つ目の枠は保留にして、四つ目を決めたんだけどね」


 前傾姿勢で修太郎の言葉を待つ二人。 

 ひと呼吸置いたのち、修太郎が口を開いた。




*****




 ダンジョンコアの部屋――楽園レジウリア


 修太郎が魔王全員を連れ歩く姿は、なによりもよく目立つ。仕事に勤しむ住民達はその手を止め、道端で深々と頭を下げている。


 大名行列さながらのその光景に、修太郎は思わず苦笑いを浮かべた。


「どうにかならないかなこれ。恥ずかしいや」


 愚痴のような呟きに対し、やや暗い表情のバンピーが答える。


「王たる王の御前ですから」

「……なんか怒ってる?」

「いえ、私はいつも通りです」


 バンピーとガララスが肩を落としている理由にも薄々気付いていた修太郎だったが、あえて聞かないよう努めながら目的の場所にたどり着く。



 闘技場――



 かつて民衆への見せ物として場合によって死刑場としても用いられたソレとは違い、ある種スポーツのような感覚で剣戦士達が戦い合っている場所。参加するのは奴隷でもなければ、単純な力自慢の者達である。


 闘技場での掟は一つ。


 「無殺」である。


 殺さずに勝敗をつけるというのは、得てして殺すよりも難しい。闘技場では血みどろな殺し合いではなく、力と技を競う試合が繰り広げられているのだ。


 修太郎達が会場に入ると、割れんばかりの歓声と熱気で広がった。


アイツ(・・・)は稽古を付けてやった時点で、主様に恩を返すため自分は何をすべきかを模索して剣闘士になる事と決めてましたからね」


 感慨深そうにバートランドが言う。


 ふと、彼の方を見上げる修太郎。

 会場内の光に照らされたバートランドの顔は、どこか嬉しそうに見えた。


 会場に聞き心地のいい実況の声が響き渡る。


『挑戦者はハイリザード族の若頭ペリオン! 戦績は49勝無敗と、今最も勢いのある新人剣闘士だ!』


「すごいや、こんな本格的なんだ」


 熱狂する民衆達を眺めながら、感激の声を上げる修太郎。中央にある石造りのリングに体表の赤い人型の蜥蜴が上がると、民衆の声援はより一層強くなっていく。


『そして対するは闘技場不動の頂点! 1330戦無敗の生ける伝説――アイアン!!』


 会場のボルテージは最高潮に達する。

 

 ゆっくりとした足取りでリングに上がったのは、かつて錆び付いた金属塊だった体は全盛期の輝きを取り戻し、より人型に近い形に変化したアイアンであった。


「四つ目の枠は、アイアンに決めてたんだ」


 ハイリザードと激しい戦闘を繰り広げるその姿を見て、修太郎は改めて、自分の決意を揺るぎないものとしたのだった。

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