087
一夜明けて翌日――
紋章カロア城下町支部前にて、第7部隊が集まった。
「おはよ。……おっ、なんだなんだ〜? 早くも仲良くなってるじゃないの」
嬉しそうな笑みを浮かべる聖職者は、魔法使いと手を繋いで登場した大剣使いを見ていた。
「ラオさんから〝子供が苦手〟って聞いていたからさ、今後の連携に支障が出ても困るかなーと思って、ちょっと荒療治だったけど」
怜蘭は修太郎に視線を向け、再び視線を戻す。
「お陰さまで、なんとか懐いてもらえました」
笑みを浮かべる修太郎。
遅れてやって来たラオがあくびを一つ。
「おっはー。いやー、私も気分転換できたし、怜蘭も仲良くなれたし、良かった良かった」
そう言いながら斧使いがノビを一つ。
しかしその発言とは裏腹に、髪は乱れ、顔色も悪く、目の下が腫れていることに大人組は気付いていた。
怜蘭は複雑そうな表情を向けるも、何か声をかける事は無かった。
「二人共装備新調してきたんだね! えらい!」
「でしょでしょ? 流石の性能だよこれ。めちゃくちゃお金もっていかれたけど!」
ショウキチとケットルの武器が変わっている事に気付いた弓使い。キョウコ自身も弓と鎧を新調しており、装備面は万全といった様子であった。
「とりあえず戦力も増強できたことだし、ラオさん達も私達がどれくらいのモンか知りたいだろうから、受付で話を聞いたあと訓練場で模擬戦でもやってみよっか!」
「大・賛・成!!」
一行はそのまま紋章カロア支部へと入った。
* * * * *
受付へとやって来た第7部隊。
受付係が笑顔で手を挙げ、互いに軽い挨拶を交わした後、バーバラは早速自分達の今後の予定を伝える。
「私達第7部隊はしばらくここを拠点に活動して、ゆくゆくはエリアに挑戦するつもりです。最前線に行く予定は……今のところ、ありません」
横目でラオに視線を向けながら。
それを聞いてKは笑顔で答える。
「ん、OK! じゃあそのように俺もサポートするよ」
「ありがとうございます」
長期的な目標はできた。
続いて短期的な目標である。
「じゃあどうする、早速キレン墓地辺りに挑戦してみる?(まぁ行くって答えたら止めるんだけどね)」
発した言葉とは裏腹に、Kは第7部隊を先に進ませるつもりは毛頭無かった。
その理由は後々に判明するのだが――
「いえ、その前に訓練場で互いの実力を測っておこうと考えてます。装備も新調したメンバーもいるので」
「お、それはいいね! 訓練場は受付抜けた奥の扉の先にあるから、満足いくまで使ってよ(浮き足立ってもいない。諸々心配いらなそうだな……)」
冷静に準備を進めるバーバラの存在に内心胸を撫で下ろしながら、Kは嬉しそうにそれを承諾する。
Kに会釈しながら受付の横を抜ける一行。
扉を開けた先には、訓練場が広がっていた。
「(ここも結構広いんだ)」
関心したようにキョウコはあたりを見渡す。
アリストラスほどでは無いが、かなりの広さがある。見ればポツポツと戦闘訓練を行なっているプレイヤーの姿も確認でき、第7部隊は近くの一ヶ所を使う事にした。
「対人もできるけど、とりあえずは対mobでやろっか」
設定をいじりながらバーバラが言う。
その目は「一番手は誰?」と言っているように見えた。
「じゃ俺が一番な!」
真っ先に名乗りをあげたのはショウキチだ。
仮装フィールドにはスケルトンが8体現れ、それと対面する形で5つの青いシルエットが浮かぶ――これらは〝味方〟を表すもので、よく利用するプレイヤーなら、今回行うのが〝パーティの連携と役割毎の動き〟を見るためのテストだと分かるだろう。
「よっしこい!!」
ネグルスの素材から作った剣を両手に構えるショウキチ。
調子のいい声色とは裏腹に、その瞳は冷静に敵mobを捉えていた。




