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 装飾品屋、防具屋、投擲練習場、占いの館――など、色々な施設をまわった四人。占いの館を出る頃には、特に魔法使いの少女(ケットル)大剣使いの女性(怜蘭)にべったりくっ付くほど懐いていた。


「はー。男難の相アリってなんだよ」


「この場合は男性NPCからのクエスト発生率低下とか、店頭販売価格上昇とか、そんな感じだった気がする」


「ええ! 最悪!!」 


 占いの結果に文句を垂れるショウキチ。

 くすくすと笑う怜蘭(レイラン)が解説する。


「ちなみに占いの効果はもう一回占いするまで継続だよ」 


「ならもう一回やってくる俺!!」


「あ、でも24時間経たないとやってくれないから……」


「ノーーーン!!」


 項垂れた様子で歩く剣士の少年(ショウキチ)に、三人はたまらず笑い出す。


「私は幸運来たるだって! これが日頃の行いの差ね〜」


「お前と一緒のパーティなことが、そもそも男難だよ!」 


「残念、女ですよーだ!! 一緒が嫌ならアリストラスに帰れ! このへっぽこ剣士!」


「んだと! 投擲テストで最低点叩き出したくせに!」


「一点しか違わなかったじゃない! ならもう一回勝負する?!」


「ッたり前だ!!」


 仲良く喧嘩しながら、館の対面にある投擲練習場へ向かう二人を見送りつつ、怜蘭と修太郎は適当な建物のデッキ部分に腰掛ける。


「良かった、なんとか慣れてくれたみたいで。私、昔から冷たい印象持たれるから」


 そう言いながら、練習場へと消えてゆく二人の姿を見つめる怜蘭。


「そんな事ないよ。怜蘭さんと話してると楽しいし、二人もそう思ってるはずだよ」


「そか。なら嬉しいな」


 鎧に包まれた脚をぶらぶらさせ、照れたように目線を落とす怜蘭。修太郎もしばらくたそがれた後、彼女に尋ねる。


「最前線はどんな所だったの? どうしてアリストラスに戻ってきたの?」


 子供だからこそのストレートな質問。


 怜蘭は特に気にする様子も無く、一つ一つ、思い出すかのように語り出す。


「私が最後に参加したのは〝シオラ大塔〟っていうエリアでね、途中までは順調だったんだけど、大きなギミックを一つ見逃しちゃって――結構死んだなぁ」


 虚空を見つめながら、怜蘭は悲しいような寂しいような表情で続ける。


「私とラオが前線から退くキッカケになったのは、私達とずっとパーティを組んでた親友の回復役(ヒーラー)が死んじゃったからなんだ」


 テリアっていう名前でね。

 ムードメーカーだったの。

 笑うとすごく可愛くてね。


 ポツリポツリと、思い出しながら怜蘭は力なく語る。


「簡潔に言えば、責任を感じたギルドマスターとラオの心が折れちゃって、ギルドマスターは引き篭もってしまった。特に荒れてたラオをそのまま最前線に置くのは危険だから、私達は離脱することになったの」


 修太郎はそれを黙って聞いている。

 二人の間に、優しい風が吹いた。


「道中はラオも病んだりしてたけど、アリストラスに着く頃には〝責任を果たさなきゃ〟ってまた気合いを入れ直して、皆と出会った。このパーティはラオにとっても、もちろん私も居心地が良いから結果的に良かったと思ってる――でも、ここに来て親友の春カナタも死んじゃったから、正直ラオもかなりいっぱいいっぱいだと思う」


 ラオはもう最前線に戻らないかもしれないなぁ――と、寂しそうに呟く怜蘭。


 自分の背中の剣を抜き、優しく撫でる。

 鞘に収まる剣の腹には、今は亡き友人の名前が刻まれていた。


「春カナタさんも大事な人だったんだね」


 名前を見つめながら、修太郎が尋ねる。


「うん。あの子とは活動場所こそ離れてたけど、ずっと支え合いながら必死に生き延びた親友だったから……ごめんね、重い話で」


 そう言って、瞳の端に溜まった涙を指先で拭いながら怜蘭は笑顔を作った。

 

「修太郎君はどうしてこのパーティと一緒に行動してるの? 知り合ったキッカケはなんだったの?」


「あ、それはね――」


 そこからしばらく修太郎が第7部隊との馴れ初めの話をして、また怜蘭が別の話、次は修太郎――と、二人はたくさんの事を話して過ごしたのだった。

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