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「誠さんの盾は適正いくつなんですか?」
ミサキは重戦士が背負う大盾に視線を向けた。
「……20のやつだ。わーった、わーったよ! ただし! 金はお前らから借りたりしねえ! 使うなら自分の装備の足しにしろ!」
そう言って誠は頭を掻きながら、立て掛けてある新しい大盾の前でウィンドウを開き、購入手続きに進んでいく。
他のメンバー達は「武器買えるか見てくる!」などと散り散りとなり、その場には誠とミサキだけが残されることとなる。
「部外者が口出ししちゃってすみません」
「いや、いいよ。確かにレベル36で20の装備を持ってるのは信頼にも欠けるからな」
誠の背中の盾が新しくなり、武具屋の木枠に立て掛けてあった盾が消え去った。
誠はミサキに顔を向け、肩を竦める。
「というか、ミサキさんが加入したら俺の盾もあいつらの武器も必要無さそうだな――えらい強いって噂だし」
「私は……運が良かっただけで、私自身はまだまだですし」
「強いのに驕らない姿勢は好感が持てるよ。不相応に力を得た奴等がコロッと態度変える世界だからな、ここは。俺も……そんな奴等に命賭けたくないし」
二人が雑談して過ごしているうちに四人が戻りはじめ、揃ったところで、全員で自己紹介をする事になった。
「私は部隊無所属のミサキです。今回はよろしくお願いします。レベル29の弓使いです」
ミサキが最初に頭を下げる。
続いて第21部隊の最年少から順に紹介が始まった。
「俺は剣士のショウキチ! 将来は双剣士に転職予定! レベルはそろそろ18になるぜ!」
活発そうな男の子が元気よく手を挙げた。
背中にはクロスした形で剣が収まっている。
その背格好がどことなく恩人とダブって見えた。
ミサキは一瞬どきりとしたが、すぐに笑顔を作って「よろしくね」とお辞儀した。
彼であるはずがない――
そう自分に言い聞かせながら。
「私はケットル。将来的なりたいのは火属性に絞った赤魔道士! レベルは15だから足を引っ張るかもしれないけど、よろしくお願いします!」
とんがり帽子の眼鏡の少女が頭を下げた。
可愛らしい赤色のマントがよく似合っている。
見た目は物静かそうなイメージで戦闘など縁がなさそうにも見えるが、ショウキチ含めちゃんと自分の将来進む方向を決めている所に感心するミサキ。
「わた、私は弓使いのキョウコで、です。あのっ、後で色々、その聞いてもいいですか? 弓の扱い方とか、短剣の振るい方とか」
「ええ、もちろん!」
「! ありがとうございますッ!」
そう言って頭を深々と下げたのは、黒髪少女キョウコだ。
彼女は黙々と自己鍛錬を行う孤高の存在たるミサキに憧れており、初対面がパーティ内になるとは思ってもいなかったため、緊張で言葉に詰まっていた。
「聖職者のバーバラよ。うちは盾役がやり手だからあんまり活躍する機会無いけど、ちゃんと働いてるからね」
ウェーブのかかった茶色い髪の女性。
バーバラは28歳の、ミサキからしたら憧れる年上女性である。ミサキ的には、恐らく年上であろうフラメやルミアのことは年の近い姉妹のように思っていたため、とても新鮮な気持ちでお辞儀した。
「そんで俺がリーダー兼盾役の誠だ。レベルは紋章トップ10にランクインする36! 気軽にまこっちゃんって呼んでくれ」
「呼ばれた事ないだろ!」
軽薄そうに笑う誠に、ショウキチが蹴りを入れる。それは当然システムブロックによって防がれるわけだが、誠は楽しそうに「いでえ!」などと戯けてみせていた。
なんかいいな、この雰囲気――
ミサキは永らく縁の無かった家族のような団欒に、自然と笑みが溢れていた。




