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サンドラス甲鉄城冒険者ギルド。
各町に存在するNPC運営のギルドだ。
内部は他のギルドとさほど代わり映えせず、荒くれ者の酒場といった風景。そんなギルドの奥のテーブル、およそ10人ほどが座れそうな広い丸型テーブルにワタルとアルバは居た。
そして、東西南北に座るプレイヤー達。
ワタル達含めて7人がテーブルを囲う。
目の前には豪華な料理が並び、南の位置に座るワタル達の対面――北の位置に座る2人組だけが、すでに食事へと手を付けていた。
「よお。長旅お疲れ様」
そう発したのは、北の位置に座る一人。
癖のある黒髪と赤い瞳の男。
動物で形容するなら蛇といった所か。
冷たい目、そして声の持ち主。
隣に座る男は豪快に食事を続けている。
彫りの深い美男子。胸から肩にかけて太陽を模したサモア系のトライバルタトゥーが彫られており、見た目から暴力的な印象を受ける。
八岐。
最前線ギルドのうちの一つ。
在籍プレイヤー70名程で構成された戦闘集団で、元々はPvPメインで活動していた対人戦専門のギルドだ。
特徴的なのは八人の精鋭から成る幹部達。
ギルドの意向により、幹部八席を奪い合うため頻繁に一対一の「順位入れ替え決闘」が行われていたが、デスゲーム化した現在でもその伝統は継続されている。
幹部はその時々の最強達が席につき、驚くべきことにその中にはギルドマスターをも含まれる――つまり、現在ギルドマスターを名乗っている者こそ八岐の最強プレイヤーということになる。
癖のある黒髪がマスターのHiiiiive。
タトゥーの男がサブマスターのアランだ。
続いて動きを見せたのは東側に座る二人。
「今朝エマロから出発したと聞きましたが、ずいぶんハイペースで移動されたんですね」
落ち着きのある、よく通る声が響く。
白のローブに身を包んだ白髪の男性。
見た目は30代後半くらいだろうか。
自信に溢れるような笑みを浮かべている。
隣には同じ衣装の女性が座っていた。
10代後半くらいの黒髪美人。
女性は目を伏せ、何も発しない。
aegis
保護や庇護を意味する名前のギルド。
鎧という制服で意識を統一する紋章と同じく、白のローブを制服とするギルド。クエスト攻略、エリア攻略、ボス攻略など効率重視のプレイを好むプレイヤーが多く在籍する。
白髪男性がマスターの白門。
目を伏せている女性が松といった。
目を伏せている――という点では西側に座る女性も同じか。ただ、彼女に関しては顔まで塞ぎ込み、その造形を形容することはできなかった。
「では顔合わせということで、もう食べてる方もいらっしゃいますが乾杯でもしましょうか」
そう切り出すシロカド。
ハイヴが不服そうに睨み付けた。
「なんでお前が仕切るんだよ」
「貴方じゃ適当に終わらせて解散でしょう?」
黙り込むハイヴ。
沈黙を肯定ととったシロカド。
にこやかな笑顔のままグラスを掲げる。
「では、紋章ギルド合流を祝して――乾杯」
険悪そうな雰囲気で始まった最前線ギルドのマスター達による顔合わせ。事実、ここにいるプレイヤーが、現段階において35万人の命運を握っていると言っても過言ではない。




