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第三章 ワタル・ミサキ編 開始

 

 時間は精鋭出発日まで戻る——



 カロア城下町から遠ざかるように、複数の足音が響いていた。


 紋章ギルド。

 アリストラスの英雄。


 その後の救援活動が身を結び、アリストラス在中プレイヤーは強固な結界によって身の安全が保証された。彼等の働きに胸を打たれた者も多く、その在籍数は今もなお増加している——


 そんな紋章ギルドの総勢30名から成る精鋭部隊が目指すのは、最初の難関と呼び声高いキレン墓地である。


「しかし壮観だなー」


「?」


 誇らしげに呟く誠をミサキは見上げる。


「知ってた? 紋章ギルドの最大戦力まで揃ってるんだぜ、いま」


「そうなんですか?」


 誠は紋章ギルドでも最古参に位置し、紋章メンバーにどのような人物がいるのかをよく知っている。対してミサキは、加入後ほとんどの時間をひとり自己鍛錬に費やしているため内情に詳しくない。


 誠は鼻を膨らませ得意げに続ける。


「先立って最前線に向かったフラメさんと留守番してる何人かを除けば、いまマスターと話してる人達が戦闘面における紋章の中核メンバーだよ」


 ミサキは何度か背伸びをして先頭を覗いてみる。


 確かに三人ほどがワタルと何か話しているのが見える。しかし、前をゆく武器やら兜やらが邪魔で顔まで確認はできなかった。


「恥ずかしながらアルバさんくらいしか分からないです」


 赤面し、肩を縮こませるミサキ。

 誠はキョトンとした後、愉快そうに笑う。


「ッかかか! 自己鍛錬しか興味ないっつー噂は本当に本当だったんだなぁ。むしろ銀弓の女神(アルテミス)を知らないメンバーは少ないから向こうはガンガンに話しかけてくると思うぞ」


「ええ!? 知らずに失礼なこと言ってしまいそうで怖いんですが……」


「んなこと気にする人いないって。ミサキさんはアリストラス防衛の立役者なんだぜ。ドンと構えなよドンと」


 最前線に向かう列でワイワイ盛り上がる二人。


 不安と緊張に呑まれたメンバーから恨めしい視線を向けられているのだが、図太いのか肝が据わっているのか、二人はそのことに全く気付かず足を進めていたのだった。


「キレン墓地に到着! 各隊員は決まった配置へ!」

 

 いよいよエリア攻略が始まる。

 万全の状態とはいえミサキにも緊張が走る。


「ま、俺は最後尾だからこのままだけど。移動せずに済むし楽だな」


 そう言いながら誠は気楽そうに笑った。


 戦闘の配置は雑魚戦とボス戦で大きく分かれており、エリア攻略道中の今回は雑魚戦を想定した配置となる。


 具体的には盾役が最前列に移動し、近距離攻撃役、回復役、遠距離攻撃役という順だ。


 しかし今回は最後尾にも盾役を二人置く。

 理由は強力な徘徊モブの存在だ。


 経験の浅いプレイヤーは「やる気のない奴」と評価しただろうが、ことキレン墓地においては最後尾の盾役が一番危険という意見もある。


 というのも徘徊モブが現れた場合、状況によって一人で食い止める技量を要するからであり、加えて、モブが連れ歩く犬型の敵視も全て集めなければならない。


「あ、誠さん! よろしくお願いします」


「おうよろしくな。犬は頼んだ」


「はい!」


 二十歳くらいの男性とそんな会話を交わす誠。男性は装備からして誠と同じ盾役であることが分かった。


 男性の表情に安堵の色が見える。


 一連のやりとりを微笑ましく見ていたミサキに、誠が目を細めて尋ねる。


「なにその嬉しそうな顔」


「ふふ。なんでもないですよ」


 楽しそうにそう答えるミサキ。


 誠が他のギルドメンバーからも信頼されている姿を見て、ショウキチやケットルの事を思い出しながら誇らしい気持ちになったのだ。


長らくお待たせして申し訳ありません。

三章後半部分開始となります。


本当は三章の途中に挟む予定だったお話ですが、頻繁な視点変更が不評だったため、ワタルとミサキ視点をまとめたものになります。


三章完結まで修太郎近辺がほぼ出てこないので、ご了承の上お読みくださいませ。


未実装三巻発売&コミカライズ決定しました。ついでにFrontier Worldも再書籍化します。詳しくは活動報告にて

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― 新着の感想 ―
[一言] 頻繁な視点変更はテンポ悪すぎるからね
[一言] 待ってましたー!
[一言] 更新ありがとうございます!
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