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キレン墓地へと向かう途中――
修太郎は大勢のプレイヤーを引き連れどこかへ向かう、解放者の姿を見つけた。
(この状況でログアウトさせに行くの?)
足を止め、考える。
魔王のどちらかを尾行させる手もあるからだ。
二手に分かれるかどうか――
とはいえ、解放者がログアウト場所と唱えている教会には魔王達を連れて行くことができないため、尾行するなら修太郎本人ということになる。
しかし、仮に応援として魔王をバーバラ達の元へ向かわせた所で、他のプレイヤーから見れば〝主から離れて行動する召喚獣〟という異様な光景に映る。
(今はこっち優先だ)
修太郎は解放者の尾行を諦め、再び走り出した。
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修太郎がキレン墓地の中腹付近に差し掛かった所で、帰路に着く遺品捜索部隊に遭遇した。
「し、修太郎君?! なんで?!」
駆け寄ってくるバーバラ達。
別のパーティは不審そうな表情を向けている。
修太郎は他の面々を一切無視する形で、自分がここへ来た経緯を話すと、それを聞いたラオは腕を組みながら語り出す。
「やっぱおかしいと思うよな。実は私達もそう思ってた所で、遺品の回収地点で疑問が確信に変わってきた」
「あ、回収できたんだね!」
「おう。遺品が消えるまでは結構猶予があるからな――っと、その回収地点なんだけど、そこがボス部屋だったんだよ。そんで妙な事に、装備品が昼間見たまんま」
ボス部屋に遺品が散乱していた。
装備品に変更がなかった。
それが意味するのは――
「あの無所属パーティは、私達に会った時と同じ装備でまたボス部屋まで来てたって事になる」
と、怜蘭が言う。
あのパーティに忠告した立場である彼女は、より一層、その違和感を覚えざるを得なかった。
「リーダーの意見に引っ張られてはいたけど、色々弁えてた人達だった。あのリーダーも最後は本当に心を入れ替えていたし、少なくとも装備をそのままの状態で挑むなんてどう考えてもおかしいの」
帰路に着く足を止めないまま、
ラオを先頭に進む一行。
後ろから突き刺さる複数の視線を鬱陶しそうにする修太郎に、バーバラが耳打ちする。
「(皆も今回の件は事故に見せかけたPKの線で考えているみたいなの。だからいきなり一人で登場した修太郎君を、ほんの少し疑ってる人もいるわ)」
それを聞いて、修太郎は自分の考えの至らなさに顔を赤くして俯いた。
自分の生命の心配が無いからと、バーバラ達にも疑いの目を向けられ、他のメンバー達を疑心暗鬼にさせてしまったから。
修太郎の頭に手が置かれる。
先頭を行っていたはずのラオだった。
「修太郎が来てくれたら百人力よぉ! たとえこれがPKの仕業でも、修太郎の力があれば速攻返り討ちできるしな!」
わっしわっしと撫でるラオ。
修太郎は彼女の気遣いを心の中で感謝した。




