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道中のmobはバンピーの即死スキルによって近づく権利すら与えられず殲滅されており、修太郎は開拓されてゆくマップから目を離しメニュー画面からクエスト内容を開く。
昇級試験とはいえ扱いはクエスト。
進行中一覧の中に、それはあった。
○○○○○○○○○
依頼内容:昇級試験(EX)
依頼主名:職業案内所
有効期間:47:57:36
第一段階:陰陽召喚士の神殿から宝玉を取り持ち帰る(0/1)
第二段階:???(第一段階達成後に詳細が開示されます)
第三段階:???(第二段階達成後に詳細が開示されます)
○○○○○○○○○
開示されているのは第一段階のみで、残りは順次開示されていく仕様となっているようだ。それを見た修太郎は魔王達に相談する。
「こう、魔力素が方々にあるとどの道が正しいか、確かに分かりませんね」
神妙な面持ちで唸るエルロード。
閃いたようにバンピーが顔を上げた。
「ならば二手に分かれるというのはどうでしょう。我々の中で三人ほどが、別の道を進んでその神殿を探します。主様と残りの二人も同じように引き続き神殿を探していただく――というのはいかがですか?」
分岐した道は全部で四つあるようだ。
修太郎は再び、ほぼ未開拓のマップを見る。
最前線のマップ開拓には3日ほど要すると聞いていたし、明日もまた第7部隊とエリア攻略に行く予定もある。時間省略にもなるため、修太郎は名案だと頷いた。
「分かった。なら誰が何を担当するかだけど……」
「私は主様と共に」
いの一番に名乗り出るバンピー。
頬を染め、ぴったりと横に陣取る。
ガララスが胡散臭そうに眉を潜めた。
「それは筋が通らないだろう。少なくとも言い出したバンピーは、別働隊として働くべきではないか? 索敵能力に関してはシルヴィア除けば皆トントンだと認識しているが?」
「強い者が主様の護衛につくのはおかしい?」
「ほう? ならば誰がその強い者か、ここで決めてもいいんだがな」
白と赤のオーラが立ち上り、遺跡内がビリビリと振動する。見かねたエルロードがため息混じりに仲裁に入った。
「そんな下らない見栄で主様の貴重な時間を割くのはやめなさい。私を含めたあなた方三人で別行動。これが認められないのなら、探索の邪魔と判断し即刻城に送還してもらいます」
第一位、第二位、第三位の殺気というのは凄まじく、それは侵入者を討つべく進んでいた数千ものmobが秘密裏に退却していたほどだった。バンピーとガララスも頭が冷えたのか、通常の状態へと戻ってゆく。
「それじゃ俺とセオドールの旦那で主様の護衛を務めさせていただくよ」
満面の笑みでそう告げるバートランド。
腕組みをして静観していたセオドールも、静かに頷いた。
修太郎は心配そうに三人に声をかける。
「くれぐれも無理しないでね。危ないと思ったら必ず連絡して。僕らでそっちに向かうから」
その言葉に、バンピーとガララスがよろめいた。
(あぁ、主様。なんと慈悲深い。私は護衛から外れて正解だったかもしれない。主様のお側は私には眩しすぎる)
(おお、なんとお優しい……我々の身の安全を第一に考えて下さっていたとは)
若干二名が陶酔状態に陥るも、すぐさま目つきを変え、未開拓の道へ視線を向けた。
(私が神殿を発見したら、褒めてくださるだろうか。また頭を撫でていただきたい。それだけで私は向こう500年は戦える)
(我が神殿発見を成した時、主様はどんなお褒めの言葉を掛けてくださるのだろうか。それはまさしく我一人だけに向けられる言葉。至極のひと時と言っても過言ではない)
雄叫びと共にバンピーとガララスが消え、エルロードは修太郎に「行ってまいります」と深々とお辞儀をした後、二人とは別の道へと進んでいった。




