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『警告! 遺跡内に強力なモンスターが発生しています。推奨レベル120。レベルが満たないプレイヤーは十分に注意してください。警告! 遺跡内に――』


 突然のアナウンスに身構える修太郎。

 魔王達には聞こえていないようだった。


「推奨レベル……120」


 その法外な推奨レベルに、修太郎は遅れて驚愕した。それは魔王達のレベルと同等だった。


 現在プレイヤーの最高到達レベルは52とされているが、この昇級試験ではそれよりも遥かに高レベルが要求されているのだ。このような警告文を見れば、まともな神経をしているプレイヤーは皆扉へ一目散だろう。


 ともあれ、唯一修太郎だけはその枠組みに囚われないのだが。


(推奨レベル120ということは、単純に考えて昇級4回分――これをクリアして成れる職業って、EXって、普通の職業じゃないって事だよね)


 修太郎には選択する権利があった。

 選択できるだけの力があったのだ。


 魔王達を見る修太郎。

 視線に気付いたエルロードは、膝を付いてかしずいた。


「我等は常に貴方の意志に従います」


 エルロードに習うように、他の魔王達も膝をつく。それを見た修太郎は決心を固めた。




*****




『昇級試験が開始されました。〝陰陽召喚士の幻影〟を探し出し討伐してください。討伐数に応じて報酬が変わります――セムイの力強まりし時、世界に帳が落ちる。カムイの力強まりし時、世界に陽光が差す。世界の陰陽交りし時、祀りし祭壇に彼の者現れん』


 意味深なアナウンスと共に、遺跡内の異変がピタリと止まる――しかし、漂う〝嫌な雰囲気〟は健在で、バンピーは警戒心を高める。


「一万は、いますね」


 鋭い洞察力で、この遺跡内に蠢くmobの大まかな数を弾き出すバンピー。


 修太郎がアナウンスの内容を魔王達に伝えると、髭を撫でながらガララスが長考する。


「セムイとカムイ、どっかで聞いた覚えが……」

 

 ガララスの言葉を、金属音が遮った。

 セオドールが剣を抜いた音だった。


 視線は、はるか前方の暗がりに向けられている。


「来たぞ」


 遺跡天井に空いた穴――そこから差し込める快晴の空に照らされるようにして姿を現したのは、無数の巨大な昆虫だった。


 ル=ビ砂漠周辺mob図鑑から引用すると、肉食昆虫鈍色ハルバは音に敏感な殺戮者である。保持する複数の毒は低位の治療魔法で治すことができず、ほんの短時間で鎧を溶かし、骨を溶かす。ハサミの力はオーガに匹敵するとされ、鈍色ハルバが生まれてからル=ビ砂漠の生態系が大きく変わったと言われている――


 形容するなら、不気味な色のサソリ。


 コンクリートのような色合いの体、鋭く光る巨大なハサミ、獲物に向けられる毒の尻尾。対物理攻撃・魔法攻撃に大きな耐性を持ち、高い敏捷と膂力、そして致死性の毒を武器としている。



 鈍色ハルバ Lv.117



 侵攻のボスモンスターが可愛く思えるような暴力的なまでに高いレベル。それがおよそ8匹。並大抵のプレイヤーでなければ見ただけで正気を失ってしまうだろう。


 しかし、たかが(・・・)117レベル。


「主様、道がいくつかあるようですが、どちらに進みましょう?」


 そう語るバンピー。


 前方にいた鈍色ハルバは、既に光の屑となって消え去る最中だった。それはバンピーの即死スキルによって、近付く暇すら与えられず殺されていたのだった。


「とりあえず、モンスターが来た方向に進んでみよう。そういうメッセージなのかもしれないし」


 修太郎の言葉に、魔王達が頷いた。


 たとえ全プレイヤーで共闘したとしても、蹂躙されかねない鈍色ハルバ達を瞬殺した修太郎達一行は、まるで町を歩くが如く堂々とした様子で、遺跡の奥へと歩いていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] セムイ(施無畏)は仏教用語で菩薩が衆生の畏れを祓って救うこと カムイ(神威、神居)はアイヌ語で「神(荒神)」のこと 意味としては陰陽が逆そうなんだがガララスが聞き覚えあるってことは別の固有…
[一言] このアナウンスってさ、月と太陽が交わるということは、日食のことだよね。謎解き楽しいな♪
[一言] レベル差たったの3でもここまで違うんだな まあラスボスとmobだもんな 頼もしい
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