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オルスロット修道院前――
修道院から少し離れた場所で、木陰に座る形で修太郎が帰りを待っていた。
(普通の召喚獣なら入れたのかな。シルヴィアもセオドールもボスモンスターだから無理ってことか)
心配そうに修道院を見つめる修太郎。
いかなるmobも、修道院に入ることは叶わない。それは通常の召喚獣も同じことがいえるため、一度還せば召喚士だけ入ることができる。
そんな事を知らない修太郎は、一人だけ入り口に弾かれてしまい、第7部隊の面々にも声を掛けにくい状況だったため、仕方なく外で待つことにしたのだった。
「ねえシルヴィア。墓地で言ってた〝変な臭い〟って、あの解放者って人からしてた?」
そう尋ねる修太郎。
シルヴィアは首を横に振った。
『アレではないです』
「そっかあ、なら安心? かな?」
シルヴィアの野生の勘が解放者に向いていたなら、Kが言うようにきっと胡散臭い人物なのだろうと断定できたのだが、修太郎の予想に反した結果となった。
「あ、出てきた」
修道院から第7部隊の面々が出てくる。
修太郎は人数を数え、全員揃っていることが分かると安堵の表情を浮かべた。
「おかえり!」
「あれっ、修太郎外にいたのかよ」
修太郎が居ないことに今の今まで気付いていなかったのか、驚いたような声を出すショウキチ。
とても言い難そうな様子で修太郎に近寄る怜蘭を、肩を掴む形でバーバラは止めた。
「とりあえず場所を移しましょう。中であったこと、修太郎君にもちゃんと伝えたいし、あのことも……ね」
含みのある言い方に首を傾げる修太郎。
第7部隊の面々はそれっきり黙り込んだ。
*****
紋章カロア支部にあるレストラン。
その一番奥にある席に座った一行。
修太郎は「あっ、そうだ!」と言いながら、何かを操作している。
「どうしたの?」
キョウコが尋ねると、どうやらフレンド欄を開いているらしい修太郎が微笑んだ。
「どうせならキイチさんとヨシノさんも呼ぼうかなと思って。皆とも仲良くなってほしいし、話したいこともあるし!」
そう語る修太郎の手を、怜蘭はそっと包む。
不思議そうな顔で見上げる修太郎。
見ればショウキチ達も皆、複雑そうな表情で押し黙っていたのだった。
「どうしたの?」
そう尋ねる修太郎。
意を決した様子でバーバラが口を開く。
「キイチさんとヨシノさんね、もういないの」
キョトンとした顔の修太郎。
バーバラはそれ以上何も語らない。
「それってどういう……」
そのままフレンド欄をスライドさせ、二人の名前を見つけた修太郎の手が止まった。
キイチ オフライン
ヨシノ オフライン




