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 一行がしばらく進むと、最初の注意ポイントに差し掛かった。注意ポイントとはつまるところ〝強力mob、複数mob、罠、多分岐〟を指している。


 今回は〝罠〟であった。


 道が分かれる部分にある墓は、ある程度近づくと毒針を飛ばしてくる。治癒の魔法や毒消しが無ければ回復できない厄介な状態異常だが――慎重な面持ちでキョウコが口を開く。


「毒矢の罠ですが、ちょっと試していいですか?」


 なにかツールのようなものを持つ彼女がその墓の後ろへと向かい、罠の解除を試みる。スキルのレベルによって成功度は変動するのだが――


 カチリ。と、音が鳴る。


「無事外せました! 外した罠は私の所持品に入れられるんですねこれ」


 スキルのレベルが低いため、成功率にしたら15%程の罠外しを成功させたキョウコ。


「でも失敗したら暴発して自分の方に飛んできたりとかあるから気を付けろよ」


「ちょ! 先に言ってください!」


 カラカラと笑うラオに怒りの抗議をするキョウコ。怜蘭もつられて笑いながら、ラオの言葉を弁解する。


「言うタイミングはともかく事実だよ。でも司祭になったバーバラさんも居るし、こういうのは挑めるときに挑まないとレベル上がらないし、臆さず挑戦すべきだと思う!」


「ううう、ボウハツ、コワイ」


 早くも心が折れかけているキョウコ。


 エリア難易度が高くなるにつれ、罠の殺傷能力も上がってゆく。回避できるうちはそれでもいいのだが解除必須の場面も珍しくない。〝罠解除〟のスキルを鍛えているプレイヤーは、少なくとも現在の最前線では必須級となっていた。


 その上、先ほどキョウコが気付いたように解除した罠は持ち物として入手ができる。それを用いてボス攻略をしたり、PvPを優位に立ち回ることができるのである。


 とはいえ、設置には別の〝罠設置〟スキルを育てなければならないのだが、それはまた別の話。



*****



 ケットルが墓に花を添えると、現れていた幽霊らしき人影が満足そうに微笑み、光と共に消え去った。面々の通知の欄に、クエスト完了の文字が浮かぶ。


「よっし、これでクエスト二つ目も終わり、と」


 腰に手を当て頷くラオ。


 Kが受注した三つのクエストは、正規のルートを進めば道すがら完了できるものばかりであるため、殆ど手間も要らずに報酬が得られる。といっても、報酬はクエスト受注場所であるカロア支部に戻る必要があるのだが。


 最後のクエストも、ボス撃破が条件である。


「残るはボスのデュラハンのみ?」


「だね。最後の戦闘エリアを制覇すればデュラハンの居る館まで一本道」


 バーバラの問いに答えるラオ。

 ショウキチとケットルは緊張から息を飲む。


「やっぱり修太郎君は緊張しないね」


「えっ? そう見える?」


「うん、全然普通に見える。初めてのボス戦って、私はいつになっても緊張するから素直に羨ましいよ」


 いつも通りの様子でいる修太郎に、怜蘭は微笑みながらそう語りかける。


「デュラハンはそうかも。だって僕、βテスト外れたから、デュラハンの戦闘動画とか攻略記事読むしかなかったし――だから緊張よりも、ワクワクの方が強い!」


 いつか自分も、剣を手にデュラハンと戦うんだ――舞台こそ〝ゲーム〟から〝デスゲーム〟へと変わったものの、修太郎の気持ちは変わらなかった。


「それに、僕にはシルヴィアとセオドールが居るから、やっぱり他の人よりもデスゲーム(この状況)にかなり楽観的なんだと思う」


 実際、侵攻発生時にレベル37のネグルスを瞬殺したシルヴィアが居れば、推奨レベル30前後のデュラハンなど脅威にはならない。


 緊張した面持ちのショウキチは、修太郎がいつも通りである理由に納得したらしく、安堵のため息をつく。


「まあ打ち負かされた身からすると、修太郎君は召喚獣(仲間)の有無は関係なく、かなり肝の座った性格してると思うな」


「そうなのかな?」


 不思議そうに首を傾げる修太郎に、怜蘭は「絶対そう」と苦笑してみせたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 暴発の場面も見てみたいな
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