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集合場所に第7部隊が揃った。
バーバラとキョウコを見るなり「昇級した?!」と詰め寄るショウキチ。二人は「もちろん」と頷いてみせた。
バーバラ(L)司祭 Lv.31
ショウキチ 双剣士 Lv.31
ケットル 炎魔道士 Lv.30
キョウコ 狩人 Lv.30
ラオ 斧戦士 Lv.37
怜蘭 大剣士 Lv.39
第7部隊はこれで全員が二次職となった。
大幅な戦力拡大が期待できる。
バーバラの選んだ〝司祭〟は、聖職者よりも更に回復能力に優れている。豊富な防御魔法と回復魔法を覚え、微量ながら攻撃魔法も強化されており、万能職に分類される職業だ。
キョウコが選んだ狩人は、弓に特化した射手と違い、副武器の短剣なども大幅に補正強化される職業。特に自己完結能力が高く、遠距離には弓、中距離には投擲、近距離には副武器と死角のない――こちらも万能職に分類されている。
最大の特徴は、盗賊系のスキルである罠解除や設置が行える点。エリア内の罠を無効化できれば回り道の必要もなく、攻略効率も更に上がるというもの。
大人二人は色々サポートに回れる万能職を選び、ティーン組二人は戦闘特化型の職を選んでおり、奇しくも普段の戦闘の立ち回り方がこの選択に現れているようだった。
「二人も昇級したんだね!」
「あったり前よ! 見てよ念願の双剣士!」
キョウコの言葉に、ショウキチは二本の剣を抜き放ちキメ顔でポーズを取る。その様子をラオと怜蘭は微笑ましそうに眺めてており、ケットルは「ほんと子供ね」と肩を竦めた。
「よし。それじゃあ色々試したい事はあると思うけど、焦らず行きましょうか」
バーバラの言葉を合図に、第7部隊は再びキレン墓地へと向かったのだった。
*****
現れたスケルトン・ナイトに向け、ショウキチが速攻をかける――両手に持つ二本の剣が、心なしか輝いているように見えた。
「《乱れづき》」
ズガガガガッ!
凄まじい斬撃音が響いた。
分厚い鎧を装備し物理防御に特化したスケルトン・ナイトは、目にも留まらぬ双剣の連続突きにより一瞬にしてHPバーを全損させる。
「すっげえええ全然威力が違う!」
確かな手応えを感じるショウキチ。
ラオはジト目で頭を小突いた。
「盾役より前に出るな」
「すみません……」
反省した様子のショウキチ。
一連の戦闘音に釣られて、待機していたマミーの群れがこちらにやってくる。
キレン墓地周辺mob図鑑から引用すると、蘇った死者であるマミーは土葬されたままの姿で夜間墓場を徘徊する。ゾンビと混同されがちだが、怨念を原動力としているため、マミーの方がより凶暴であるとされている。
「集団相手は任せて」
冒険者の成れの果てのような風貌をした五体のマミーを前に、今度はケットルが杖を構える。
「《煌く光》」
ケットルの端正な顔立ちが光に照らされる。
僅かな詠唱時間ののち、太陽が生まれた。
薄暗かったキレン墓地が一気に明るくなると、苦痛の唸り声を上げ徐々にHPを減らしてゆくマミー達。
この太陽はケットルの言葉で動きを変える。
最大の攻撃力・範囲を誇る言葉は――
「爆ぜろ!」
マミー達の真ん中に沈む太陽は、膨張したのちに大爆発を引き起こす。その威力は五体のマミーだけに留まらず、周囲を飛んでいた蝙蝠型mobをも巻き込み、その全てを消失させる。
「流石! 弱点特効で炎特化の職最大攻撃スキルは見た目も威力も段違いだなー」
眉の上に手を置き見渡すような仕草をして、惚れ惚れするような声を上げるラオ。
澄まし顔をして杖をしまうケットルにジェラシーを感じつつ、ショウキチも同じように剣を鞘へと収めるのだった。




