コンビニで起きた恋愛実話
辻本しずく22歳!1歳の娘れもんと0歳の息子らいむ
を連れてこの度、独身に返り咲きました!
と友人にメールを送るが、この時しずくの脳裏に浮かんだのは、田舎の噂好きの友人とその家族だった。
人の不幸話しが好きなこの街で産まれて早22歳
今までもお付き合いしているお相手がコロコロ変わる度にいらぬ噂を立てられては、平気な顔をしてヘラヘラ笑っていた。
まぁ仕方ない。自由な恋愛をしてきたのだから。
だからと言ってしずくにとっても今回の離婚は想定外だった
まぁ俗に言う夫の浮気だ
思えば元夫と出会ったのもしずくの働くスナックだった。
当時の初々しいしずくに一目惚れしたしずくの元夫
通い詰めようやくゲットしたしずくの携帯番号を嬉しそうに眺めていたが
釣った魚にエサをやらないのが男と言う生き物だ
これは昔から変わらない現実だからこそ不倫のワイドショーがお茶の間を賑わせている。
そんな不倫による嫉妬地獄から抜け出し
実家に出戻りをしたしずくは
これから幼い子供を抱えてどう生きて行こうかと母に相談をしていた。
まだ子供も小さく、昼間働きに出たくても
保育園の空きがない
困り果てていたところに
たまたま空きがあった母のパート先のコンビニ店長さんが、娘さんをぜひぜひ夜勤にと言って下さり
働く事になったコンビニ
そう、それはこのコンビニで起きた恋愛物語だ
しずくはその日も昼間の子育ての疲れを隠すかのようにニコニコと笑顔を振りまき接客をしていた。
もともと美人とまでは行かないが、どこにでもいるような素朴で愛想の良い可愛いらしいしずくの笑顔は、夜の仕事帰りにコンビニへ寄る男性客に癒しを与えていた。
そんな中あれは起こった
ドコドコズコズコと爆音を放つ車がコンビニの駐車場に停まった
降りて来たのは、金髪のツンツン頭のストリート系ファションの男だ
しずくはいつもの笑顔で
「いらっしゃませ〜」と言って男を見た。
目が合った瞬間にしずくは
あ、嫌いなタイプだ
でも私この人の事…
とよくわからない心のざわつきに襲われた
男はしずくを流し目に見ながら、まっすぐドリンクコーナーに行き
店内をウロウロしながらチラチラとしずくに視線を流している。
その視線に気づいたが
気づかないフリをし
男性店長とわざと会話をするしずく
平然を装ってるつもりだが
視線は男を追っていた。
間も無くレジが混み出し
店長と二手に別れ
二台のレジを使って接客を始めたが
なぜか気になり接客の合間も男をチラチラと視線で追ってしまう。
しずくは心の中で
ダメダメ、この男は絶対にダメ
そもそもタイプじゃないし
絶対チャラいでしょ!
と男を目で追ってしまう自分に
言い聞かせるように心の中で呟きながら平然を装っていた
そしてレジが空いて来たのを見計らって
男がレジに近づいて来た
しずくの心の中はなぜか複雑だった
どうしよう緊張してきた
え?なんで?なんで緊張するの私
そんなしずくを知ってか知らずか店長は
こちらへどうぞと大きな声で男に言った
男は一瞬
え?
と戸惑う顔をしたが、店長のレジへ向かいしずくの方をじーっと見ながら会計を済ませた。
そして男はしずくを流し目に見ながら外へ出て行った
しずくは
「ありがとうございました!」と笑顔で言いながら、内心ホッとしたような、残念のような、複雑な心境だった。
間も無く店長がしずくに「ドリンク補充行ってきます。」と声をかけ
しずくは店内に1人になり
客も落ちついて店内では春の名曲が流れていた
ほっと一息していると
数分後またしても賑やかな音が聞こえてきた
ドコドコズコズコ。
しずくはもしかして?と戸惑いなのか期待なのか、なぜか胸が息苦しくなるのを感じた。
ドアが開いた瞬間、しずくはちょっと上ずった声で
「いらっしゃませ〜」と言った
上ずったのが恥ずかしかったので
ゴホゴホと咳をして誤魔化した。
男はしずくを見てニコリと笑った
しずくはその瞬間息が苦しくなり、体温が急上昇し
顔と喉の奥が熱くなった
男はさっきと同じようにドリンクコーナーへ行き
イチゴミルクを片手にしずくの元へまっすぐ向かって来た。
しずくはなぜか緊張していつもより笑顔がこわばった
「いらっしゃませ〜ポイントカードはお持ちですか?」
としずくが少しどもりながら言うと
男は
「ありません。」
意外と低めの声で言いながらしずくをガン見した
しずくは会計を無事終わらせようとするが
緊張で手がこわばってしまい
お釣りを落としそうになった
それを見た男はしずくにニコリと微笑み
「今日何時まで?」
と聞いた
終わり時間を伝えると腕時計で時間を確認し
男は
「そっか頑張って」と去って行った
思った以上にあっさりと去って行った男にしずくは
物足りなさげに
「ありがとうございました」
と言った
しずくはそれから仕事が終わるまで
なんとなく悶々としていた
あの人はやっぱりただのチャラ男?
気さくなお客さん?
あーそっかイチゴミルクを買い忘れただけ!
と考えるうちに意識し過ぎた自分が恥ずかしくなった
顔を赤らめているしずくを見た店長が
「大丈夫ですか?日中はお子さん達のお世話で夜は夜勤なんて疲れてるでしょう〜」
そう言いながらしずくの大好物のプリンアラモードをしずくに渡し
「今暇だから食べてきて!」と休憩を与えてくれた。
しずくはプリンアラモードを頬張りながらこう思った
どうせ付き合うなら店長みたいな優しいタイプが良いでしょう!見た目も悪くないし、優しいし、そこそこ稼いでそうだし!うんうん
あんなチャラ男より断然良い〜
なんて考えながら残りのシフトが終わり、
外に出て帰ろうとしたその時
ドコドコズコズコドコドコズコズコとまたあの爆音が聞こえてきた。