漁師の国 富玄国に、日帰り旅行
夜明け前、まだ空にはまだ無数の星が輝いていた。まだ、日の出の兆しはない。
そんな時間に、柵に囲まれた庭で、仮面を被った卑弥呼様と私達姉弟が朝練をしていた。
そこに、小さな女の子がトコトコと歩いてきた。
「お弁当 もってきたよ。おかあちゃんが、作ったんだよ。」
「おはようございます。姉様。妻の作った弁当を持ってきました。」
「ありがとうな。こんな、朝早くにすまんな。」
寿沙副国王の奥さん胡琴が、朝ご飯と弁当を作ってくれたそうだ。それを、3歳の娘の台与ちゃんが持ってきてくれたそうだ。
彼女達の一時間に及ぶ攻防は、無事に終わった。だが、それでもまだ足元が見にくいほど明るさだった。
姫子は、馬の上であくびをしていた。あんまりにも、早く起こされたため、また眠気が襲って来た。肉を振り落とさないように、気をつけながら乗っていた。
早朝練習の時は、なんとか目が覚めた。だが、お腹一杯食べた後は、油断をしている居眠りしそうだ。
そういえば、昨日の乗馬の練習疲れがまだ残ってる。疲れと寝不足のダブルパンチでダウンしそうだ。
昇る朝日は、綺麗だけどそんなことを考えれないほど眠い。そのまま、眠気を堪えていると今度は、お尻に痛みが襲った。
我慢し続けていると、北へと向かうとようやく海が見えて来た。朝日を浴びてサファイヤを散りばめたように輝いていた。
ようやく、富玄村についた。この村は、取った魚を運河で各地の村に運んでいるらしい。
海辺の村らしく潮の香りが強く、ウミネコなど鳥が飛んでいた。
船大工や漁師が多く自分達の村より、男性の話し声が大きく聞こえる。
他の国から、鍛治師のドワーフや商人コバルトなどが買い付けや卸しをしていた。
ここの国民のほとんどは、猫耳や猫獣人。翼人やウミスズメ人などウミスズメ人は、なんとなくペンギンぽい顔で背中に翼を生やしていた。
街の風景を見ながら、潮風に吹かれて休憩をした。
ここは、加盟国の漁業の盛んな富玄国だ。
一昨日、塩を練り込み一時間置き、洗った肉を持って来た。これで様々な魚と交換するために村長に会いに行った。
「おはよう。浜虎黒王、元気だったか?」
「おお、卑弥呼様か。あんたが、この村に来るのは珍しいの。」
「まあ、あんたに会わせたい子ども達がおるんだが。どうじゃ?」
「神童が、舞い降りたのかい?それなら、会いたいの。」
「察しがいいの。本物の神童の姉弟じゃ。ほら、おいで。」
「日野 姫子 10歳の天気予報士です。特技は、タロット占いです。よろしくお願いします。」
「日野 武 7歳です。」
「おお、よかったな。占い師の弟子ができたんだな。これで、天気を予報するの少しは、楽になるんじゃないか。」
「たしかに、そこまで考えていなかったわ。」
「えっと、私の占いはこのカードを並べてやるものです。
それと、雲を眺めたりするのは、好きですが占いで天気を当てられません。」
言ってカードを見せた。
「それは、占いより確かなものなの?」
「雲の形や風の強さで、予報するので。確率は、半分ぐらいですね。」
「凄いな。そんな技術が、あるのか。私にも、教えてくれないか?」
「いえ、卑弥呼様には、及びません。ありがとうございます。」
「そういえば、タケルといったな。君は、漁に興味があるか?」
「はい。漁も狩もどちらもやってみたいと思っています。」
「この村なら、海に出て漁ができるぞ。多分、川での漁にも役に立つぞ。」
「分かりました。やらせて下さい。」
「よくぞ言ってくれた。卑弥呼様、いつ頃なら大丈夫か?」
「三週間後かの。それでいいか?浜虎。」
「ああ。最後にタケル。一週間船に乗るけど、それでも大丈夫か?」
「大丈夫です。」
「そういえば、卑弥呼様や。紹介のためだけに来たんじゃないだろ?わざわざ、休日に来るぐらいだし。」
「紹介ついでに、買い物じゃ。活きのいい魚を分けてもらおうと。ほら、そのために肉も持ってきたわい。」
「いい肉じゃな。それなら、最高の魚をやろう。見てって、どんな魚でも持って行きな。明日の朝一で運んでやる。」
アジやヤリイカ、キスなどの魚。ワカメやひじき、もずくなど海草や貝、塩となどが、並んでいた。
3人で目利きを体験した後、沢山のお土産を貰った。
今日は、とても充実した日だった。なんだか、日帰り旅行みたいで楽しかった。
帰り際、唾を飲むような夕日を眺めていた。
潮が引いてできた水溜りができていた。無風で鏡のよ
うになって綺麗だった。
夕日を、背にして3人で邪馬台国へと帰った。
日が暮れるまでに村に着くと、バッタ男の来訪者がいた。卑弥呼の弟が、駆け寄って来た。
「姉さん。星彦国の配達員が到着しました。日が暮れそうなで、泊まらてもらってもいいですか?」
持っていた仮面を被って応対した。
「分かった。姫子、部屋を使ってもいいかな?」
「いいですよ。急いで空けますね。行くよ武。」
「荷物は、妾の部屋に置いて構わないよ。」
急いで階段を上り、荷物を集めて3階の卑弥呼様の部屋に上げた。
水浴びを済ませた帰り、部屋の前に配達員がいた。
「あの、どうしたんですか。」
「夕食は、村人全員で食べると聞いたのですが、場所が分かりません。教えてもらえませんか?」
「いいですよ。付いて来てください。」
「ありがとうございます。この国は、いい所ですよね。海と山の恵みたくさんあって、人も優しいですし。」
「確かに、いい所ですよね。でも、貴方の国も海産物たくさんあるんじゃないんですか?」
「ありますよ。でも、卑弥呼様は、魚じゃくて、ハンペンしか頼まないんですよ。
その加工する魚、スケソウダラも身しか使わないんですよ。臓器も卵巣も使わないんですよ。」
「スケソウダラの卵巣の塩漬けは、美味しいですよ。唐菓子は、ありますか?。」
「それは、わかりませんね。」
「そうですか。それがあれば、よりピリッとしてより美味しいのですが。」
「ありがとうございます。捨てていたので、卵巣だけでも有効活用出来るなら、嬉しいです。お願いします。」
「卵巣の血抜きをしっかりした後、塩を満遍なくふり、1時間したら、ひっくり返してください。そして、半日ぐらい置くと水分が抜けるはずなので、水にしばらく浸して水分を吸ったら洗ってください。そして、3日ほど。星彦国から邪馬台国を馬で走るくらいで出来上がりますよ。」
「1時間ってなんですか?」
「ご飯が炊けるぐらいの時間ですよ。」
「なるほど、わかりました。それぐらいで、作れるんですね。是非、やらして下さい。」
「絶対に流行らします。任せて下さい。」
配達員の人と村人は、楽しく夕食を共にした。
星彦国、邪馬台国非加盟国の貿易相手だ。
卑弥呼様の部屋で、姉弟と寝食を共にした。
卑弥呼様は、御簾の奥で朝ごはんを食べた。
「卑弥呼様、姫子さん。この国は、いつ来ても良いですね。」
「ありがとう。なんとか、他の加盟国の国と争わないように。村人や村長達の知恵を借りて、保ってる状態じゃ。」
「そうですか。今度来るときも、素晴らしい国であって下さい。そのとこは、スケソウダラ卵巣の塩漬けをお土産として持ってきますね。」
村にまた訪問者二人が来た。黒髪の男と金髪の兎耳男がいた。
「志蘇国から、魔法の箒を持ってきました。」
「これなんですか?見たことのない箒ですね。」
「これかい。君たち姉弟のために持ってきたんだ。魔術の教科書もあるよ。」
「そうなんですか?本当に、もらっていいんですか?」
「いいよ。好きな動物あるかな?なんでもいいよ。」
「鼯龍です。それが、どうしましたか?」
「わかった。ドラゴンなら他に、犬耳龍や猫耳龍、兎耳龍とか。栗鼠龍は、どう?」
「栗鼠龍は、リスと同じ大きさで可愛いくて好きです。他のは、耳とモフモフな所は可愛いけど大人の倍程の大きさは、さすがに大きすぎるので。怖いです。」
「弟君は、どうかな?」
「パンダです。」
「おーー。分かった。それじゃ、卑弥呼さんの所に行ってくるね。ちょっと待ってね。」
兎耳男が携帯を触った直後、彼の足元に数個の段ボールが出現した。
「お姉ちゃんには、栗鼠龍型、宝石型、腕時計型の携帯。
弟には、小型のパンダ型、指輪型、腕時計型だよ。大事に使ってね。」
「その前に、使い方を教えてくださいーーー。」
そのまま、行ってしまった。
加盟国 志蘇国は、西にあるらしい。
山菜の下ごしらえや掃除が終わった頃に、下りてきた。そして、急いで帰ろうとしていた。
「あの、もうすぐ日が暮れますよ。泊まっていって下さい。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます。」
どうにか起動の仕方を教えてもらうと。動物型のは、リアルに動き飛び回った。