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死刑囚の母  作者: TAKIMARI
6/22

30年の苦悩の日々

第17章 Xデーと言われた日


毎日のワイドショーや

ニュースなどで

エックスデー、エックスデーと

頻繁に耳にするようになりました。

最初は何を意味するのかわかりませんでしたが

前後のニュアンスなどから

ヨガの先生の逮捕の日の事を

エックスデーとしきりに

報じていたのです。

息子も含め多くの生徒さんたちは

逮捕されていますが

先生のゆくえはわからなくなっていたのです。

どこかに逃げたとか色々な

噂や憶測はたくさんの番組が

テレビで報じて視聴率の取り合いみたいになっていました。

でもどこへ行くにしても

あのいでたちで

目が見えないという事ですので

そんな急にどこかにという訳にも行かないのではないかと思っていました。

きっとあの敷地の中に隠れてみんなで守ってくれているに違いないと思いました。

尊敬する先生の事を警察には渡さないと考えて必死で隠して庇っているのだと思います。

そんな考えを持ってる人は私だけではなく多分世の中の人のほとんどではなかったでしょうか?

どこかでみたら一目でわかるだろうし、必ず通報されるはずなので必ず生徒たちのところで隠れていると思えたのです。

その考えは見事に的中していました。

屋根裏部屋で隠れていた先生は

生徒たちとは違って往生際悪く最後まで隠れて見つけ出されひこずり出されて逮捕され護送車で連行されていきました。

これがエックスデーでした。

とても大掛かりに空からヘリコプターで撮影して道路を走る護送車の屋根を長々と映しテレビ番組が成り立っているのでした。

こんな人と知り合わなければ

息子は医学部で模範学生として

学長や理事長や医局長にも信頼されていたのに。

こんな人のために何もかもがバラバラになってしまった。

こんな人のために息子の人生も

うちの家庭も

たくさんの被害者の人も

この人の何が息子の人生を

狂わせるほど

信頼できるものがあるのか

どう見てもいくら考えても

わかりませんでした。

ただ憎んでも憎みきれません。

逮捕されたエックスデー。

本当の事を話して

説明してほしいと願いました。

被害者の人のためにも。

息子たちのためにも。

このエックスデーの事を息子が知ったらさぞかし慌てふためき

心配するのかと思うとまた私は

情け無い気持ちになりました。

ところが何日経っても息子から手紙は届きませんでした。

定期的に下着と洋服の差し入れと持ち帰って洗濯する物を受け取る宅下げとゆうものがあるので

東京拘置所へ出かけていました。

週に1度か2度の割合で手紙と面会もうまく調整してバランスよくしてあげないと入れ違いとかの内容が後から手紙で届いたりして

とても不便な伝達でした。

エックスデーの後も手紙にも面会でも息子の方から先生の事はまったく触れてきませんでした。

だから私は洗脳が解けてきたのかなと思っていたのですが全くの逆でした。

先生をかばうためにあえて何にも触れずにいたのです。

どの生徒さんたちも同じことだったと後々刑事さんから聞きました。

このまま一生洗脳が解けてしまわないとどうなるのか

面会しても鋭い目つきと、憎い者を見るような目つきで私をたまに見ますがほとんどは、足元を見ているような感じで下を向いています。

アクリル製の透明の仕切りの向こう側とこちら側での温度差はいつも感じていますが、気づかない

ふりをして笑って見せています。

息子は私を冷めた目で見るだけで話すことは何もなくどちらかといえば、早く面会終わりたそうにしか見えないので、

じゃあお母さん帰るわね。

身体気をつけてね。

と言い終わらないうちに

立ち上がり背中を向けて

ドアの向こうへ消えてしまいます。

帰りにはいつも何で面会したんだろう

しなければ良かった

何しにきたんだろう

来なければ良かったと

悲しみが残るばかりで

冷たい息子の私を見る目が悲しくてたまりませんでした。

毎回毎回そうなるのに

洗濯してできたら着替えを用意して宅下げをもらい

せっかく来たから会って帰ろうと

面会を申し込み何十分も待たされてやっと会えても結果は毎回

後悔しながら家路につくのです。

東京拘置所本当に広くて

不親切でわかりにくくて

慣れたくもないのに

慣れないとできない

面会、宅下げ、差し入れ

東京拘置所23年通いアホな私でも慣れてしまいました。

東京拘置所何千人もの人が収容されているそうですが

私の息子もこんなところに入るとは夢にも思っていませんでした。


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