30年の苦悩の日々
死刑囚の母
第15章 ある日突然
初めて警察に行ってから
何度となく現金、服、下着、靴下を差し入れに行きました。
毎回同じように刑事さんに会い
面会ができないかと聞いてみても
まだ無理ですね
接見禁止がついてるからね
と同じ返事ばかりでした。
接見禁止?
最初私は石鹸が使えないのかと思っていました。
ですが教えていただき理解したのです。
接する事、見る事が禁止されているから会えないと。
裁判所が決定しているので
裁判所が解いてくれるまではダメだとゆう事でした。
何もかもにガッカリする事ばかりでした。
息子さんまだまだ
洗脳が解けてないからね
私もなかなかやりにくいよ
刑事さんから言われて
息子をそこまで思い込ませ
信じ込ませたあの悪魔のような
ケダモノのような人の事を
何故そんなにも
信用してしまったのか
全くわかりませんでした。
すみませんがよろしく
お願い致します
はいはい
健康は健康だからね
心配ないよ
食べてるし
寝てるから
そうですか
被害者の人に対して
反省はしていないんですか?
いやーー
それはどうかな
今のところまだわからんからね
やったも、やってないも
まあ、お母さん
心配ないよ
お父さん置いてきて大丈夫?
はい短時間なら
大変だねー
早く帰ってあげて
よろしくお願い致します
失礼します
刑事さんとの会話は
毎回変わりなく
私たち夫婦の事を心配して
言葉をかけてくれていました。
それから二、三日目に
郵便受けを開けると
色々なパンフレットや
フリーペーパーなど
入っていました。
その中に封筒があり
裏書きを見てみると
息子からの手紙でした。
すぐに開けました。
たった1枚
それも二行だけ
東京拘置所に来ました
元気です
これだけ書いた手紙が届いても
理解に苦しむとゆうか
内容がなさすぎて
どうゆう意味なのか解らずに
刑事さんに電話してみることにしました。
電話は携帯電話の番号を教えて
くれているのですぐにつながりました。
息子からの手紙の手紙の事を話すと刑事さんからの返答は
そーなんですよ
この前来てくれた次の日の朝に
急に決まってね
移送されて僕が送って行きましたよ
手紙が来たんなら返事を書いたら手紙届けてくれて読めると思うから書いてあげてみて
面会もできるなら行こうかとか
書いてみてあげてよ
向こうで取り調べはまだまだしてるけど検事さんが向こうに行ってるからね
僕も行ってるから取り調べに
向こうのご飯が美味しいって言うてましたよ
そうですか
ありがとうございました
手紙書いてみます
うん、そうしてあげて
色々ありがとうございました
またよろしくお願い致します
刑事さんとの電話を終えて
身体の力がひざから
抜けていくのがわかりました。
あの手紙
こんなに心配してるのに
こんなに尽くしてるのに
たった二行だけ
ある日突然届いた手紙
たった二行だけ
急いで開けたら
たった二行だけ
こんなに長い時間離れて
こんなに長い距離が開いて
手紙書いてあげてと言われても
たった二行だけの手紙に
なんて返事を書いたらいいのか
書き出しは
どんな風に書いたらいいのか
思いもつかなくて
私宛の手紙の内容が
たった二行
親子の溝みたいなものを感じて
打ちのめされた気持ちでした。
それでも東京拘置所へ息子宛の手紙を書いて郵便ポストに投函したのです。