30年の苦悩の日々
第12章 息子が居なくなって
息子が家を出て
私達夫婦にとって
どうしていいかわからないまま
眠れない夜も続き
ご飯も欲しくない日が続き
ストレスは溜まるばかりで
はけ口もなく
寂しい、不安、心配、悲しい、色々な感情が
胸をえぐるような日々で説明はうまくできませんが
内蔵が口から出てしまいそうな苦しみが
毎日毎日続いていました。
結局その苦しい毎日から
主人は冷静さを保つことができずに
ただ笑って生きているだけの人
になってしまいました。
そんな主人のことを見ながら本当に何度も
この人を殺して私も死のうと思いましたが
疎遠になってしまったとはいえ
私にも主人にも身内がありますので
これ以上問題を起こすこともできないと
思い直しとどめて参りました。
息子がヨガの集団に入り家を出て
どうしていいのか解らずにいる頃には
色々な侮辱の言葉やお叱りの言葉、どのように調べたのか解りませんが
電話がひっきりなしにかかって来ていました
でもそのたくさんの電話にも
お詫びの言葉を申し上げ対応致しておりました。
ヨガの被害者の会を結成する
この誘いの言葉に私は
わらをもすがる
そんな気持ちとはこの事かと
思うほどすがりついてしまったのです。
本当ですか?
息子を連れて帰れるなら
是非私もその会に入れて下さい。
宜しくお願い致します。
大丈夫です。
ご安心下さい。
必ず連れて帰れます。
のちほどそちらへお邪魔しても大丈夫ですか?
はい。
大丈夫です。どうぞお越しください。
住所わかりますか?
ええ。現段階で
被害者の名簿を作っていますので
教えて下さい。
この電話で住所と私の名前や生年月日
主人の名前や生年月日、あらゆることを聞き取られ
すべてお答えしました。
それでは入会の意思確認ですが
入会金が必要となります。
弁護士費用や色々なお金がかかるので
皆様一律に500万円お支払いいただいてます。
解りました。
今すぐに銀行で下ろしてきます。
それではこちらも大金なので危険です。
銀行で待ち合わせましょう。
ご親切にありがとうございます。
うちの近くの信用金庫なので私は
10分もあれば着きます。
それなら30分後に信用金庫の前で
待ち合わせましょう。
解りました。
お待ちしています。
そそくさと通帳と印鑑とかばんを準備して
口紅も塗らずに急いで
信用金庫に向かいました。
番号札を取り
番号を呼ばれるまでとても長く感じました。
番号を呼ばれ窓口の人に
急にお金が必要な事ができたと説明すると
定期に入れて貸付を受けたら利率も安いとか
長い説明をだらだらと話してきました。
キャンペーン中なのでとか、結局自分の成績のためにしゃべっていると思えてきて、いや
そうとしか思えなくなって
段々イライラしてきました。
とにかく500万円が必要なの!!
時間もないの!!
人を待たせてるの!!
早くしてちょうだい!!
500万円を信用金庫のまちのある大きな紙袋に
入れて渡してくれました。
紙袋を持って外に出ると
エンジンをかけた車が止まっているのに
すぐ気がつきました。
向こうからも私に気がついて降りてきてくれました。
奥さん急にすみません
次の入会の人のところに行くことになって
入会金お預かりします。
私は袋のまま渡しました。
被害者の会の人は袋の中を
のぞくように確認して
確かに。
と言い
後で連絡いれます
次の人のところ行くんで
頑張りましょう
これからすぐに取り返しましょう。
宜しくお願いします。
私は深々頭を下げて
車をお見送りしました。
その後この人を見ることも
話す機会もまったくありませんでした。
いわゆる詐欺に合いました。
名刺も領収書ももらっていないうえに
深々と頭を下げてお見送りしましたので
車のナンバーも解りません。
弱り目に祟り目という言葉がありますが
この後も同じようにお金を払い
息子が帰りたがっているとか
あるところに息子を連れて来ているとか
総額3千万円詐欺に合いました。
バカな親からお金を出させるのも
意図も簡単な事だっただろうと
思います。
なんの解決策も見つけることさえもできず
騙されては、すがる思いで
また騙されて、またすがって騙されて
安心も安眠もできる日は1日もありませんでした。




