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五作と手のり犬  作者: 小出 花
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世界最小!

驚異の手のり犬

さあ、飼いませう!

ご用命は、たちばな商会へ!



 ざっざっざっ。

 汚れた藁を熊手で集め、塵取りで運び出す。新しい藁を敷く。繰り返し、繰り返し。永遠に終わらない気がする。

 使われている犬房は三十。手のり犬を産むため小型化された柴犬、通称ぽち犬の牝は二匹一組で入っているので、全部で四十六匹、牡は三匹がそれぞれ別房、普通の柴犬が牡牝六匹。手のり犬は全て飼い主の手元に渡っていて、今はここにはいない。

 最後にしているのが牝のぽち犬三歳のㇳの一と一歳半のヌの七の房で、なぜかというとトの一は気難しくて、他の犬より気をつかうから。今も房の奥に行ってこちらをじっと見つめている。吠えられたり、噛まれたりしないだけましだ。

 猫ほどの大きさにもかかわらずトの一がどれだけ世話係に吠え、噛みついてきたか、五作ごさくは散々脅されてきた。幸い、五作はまだ噛まれていない。初めて掃除をしたとき、唸られたが、それですんだことに先輩の幸造こうぞうは拍子抜けしていた。残念そうでさえあった。

 トの一はもうすぐ出産で、神経質になっても仕方ない。五作はトの一に唸られるくらいはなんでもないと思っていた。正直、犬に唸られたのは初めてだったのでびっくりしたが。

 一方で同居のヌの七は人懐っこい。五作だけでなく、誰にでも尻尾を振るし、じゃれつく。今も熊手にじゃれついている。これくらい性格がよくなければ、トの一と同房でなど暮せないのかもしれない。

 五作は動物に好かれるのを自覚していて、自分が動物好きだからだろうと思っている。おかげでこの仕事に就けた。五作が動物好きで、動物にも好かれることを、五作の村では誰もが知っていた。村長の馬が五作にはよく懐き、荒れたときに大人しくさせたのを見た村長の知り合いが、この仕事場を世話してくれた。

 五作は書類上三月末に十二歳になったが、同い年の少年たちに比べ、小柄でやせている。年末に髪を刈り上げたきりなので、一寸(約3センチ)ほど伸びた髪のせいで、黒い頭の燐寸マッチ棒みたいだ。栗鼠を思わせる黒目がちの瞳、小ぶりの鼻と口で、どちらかといえば可愛い容姿のはずなのだが、うつむき、暗い表情と、目立たないよう目立たないよう振る舞うせいで、ぼんやりとした影のような印象だ。

 実際の誕生日は四月に入ってからなので、ちゃんとした日にちはわからないものの、もしかしたら昨日か今日、十二歳になった、のかもしれない。田舎では四月生まれの子を三月生まれと届けを出すのはよくある話で、尋常小学校に一年早く入学し、卒業できるし、働きに出られるからだ。もっとも法律では十二歳からしか雇ってはいけないが、色々な言い訳を使って児童労働は行われていた。事実五作も小作農の五男坊で、ろくに尋常小学校に通わぬまま、あちこちに働きに出たが、どこもとても辛かった。

 この春からここ、橘商会の畜舎に働きに来て、楽とは言えないが、動物と一緒だし、今までの仕事に比べたらずっといい。

 ぽち犬の世話は、思ったより犬と過ごす時間が少なくて、犬房の掃除、畜舎の掃除、倉庫の掃除、作業室と研究室は五作たちは立ち入り禁止なので掃除はなし、それ以外、先輩に言われることはなんでもやる。つまりは下働きだ。ここに来てまだ一週間。掃除には慣れてきた。本当はぽち犬たちの体に櫛をかけてやりたい。四月に入って日一日春めいて、抜け毛が目立ってきているのだ。でも幸造は始終用事を言いつけて、五作が犬と過ごす時間はない。

 東京郊外にあるこの畜舎では、手のり犬と手のり猫の繁殖をしている。五作は今のところ、犬の担当、というか、犬の周囲の掃除担当だ。

 倉庫と棟続きの畜舎は木造平屋建てで、入って土間廊下が伸びる左手に猫舎、犬舎と続き、奥に、施錠された繁殖のための作業室、そこから続く研究室がある。畜舎の玄関の間には警備員がいて、特別に許可をもらって銃を所持し、出入りする人間を監視している。手のり犬と手のり猫は欧米の貴族、金持ちに人気で、絹や茶に及ばないものの、外貨の稼ぎ手として、明治政府から特別の配慮を受けている。更なる外貨獲得のため、また国内ではコネなしにはほとんど手に入らないため、増産を求められていて、畜舎は去年建て直され、犬房や猫房にはまだ余裕がある。犬猫それぞれ世話係が二人いるが、今後増える予定の犬や猫のために、五作が雇われた。

「邪魔するなよ、チビ」

 激しく熊手にじゃれつくヌの七に五作は注意する。

 犬たちは仮名と数字の組み合わせで呼ばれていて名前はないのだが、五作はお気に入りのヌの七を勝手に「チビ」と呼んでいた。チビと言えばどのぽち犬もチビなのだが、ヌの七は特に幼い感じがするのだ。

「あとで運動場に出してやるからな」

 言い聞かせて、熊手の先から離す。幸造に笑われたので、他に人がいないときしか、犬に話しかけないことにしている。五作には動物に話しかけるのは子供のころから当たり前のことだった。それを笑う人がいるのはわかっているが、犬の世話をしている人に笑われたのが傷ついた。

 ぽち犬は散歩に連れていけないが、かわるがわる畜舎の隣りの高い塀で囲われた運動場へ出して、日向ぼっこや運動をさせてやる。小さな犬なので、運動はそれで事足りる。

 ヌの七はどの犬とも仲良くできるので、いつ運動場に出してもいいのだが、トの一は他の犬と喧嘩をすることがあるため、二匹だけで出すことになっている。

 熊手の先から離すだけで、ヌの七は遊んでもらえると思うのか、五作の手にじゃれつく。無邪気なヌの七をさめたような目で見ているだけだったトの1が、突然立ち上がり、五作の横を抜けて、犬房の出入り口に走っていった。扉は閉まっているので、外に出られるわけではない。トの一の動きを目の端で追うと、

「五作は烈火れっかに吠えられないんだね」

 声をかけられた。

「だ、旦那さま」

 この会社の社長、橘克己たちばなかつみが扉を開け、走り寄ったトの一を抱き上げるところだった。

 社長という肩書きにあわないほど、実年齢の三十一歳よりも更に若く見える。絣の着物に角帯を締め、綿入れの半纏を羽織って、足元は毛織りの足袋と下駄履き。それで小さな犬を抱いていると、小店舗の若旦那が家でくつろいでいるかのように見えるが、研究室でもいつもこのような格好だ。

 トの一は克己にだけ懐いている。丸まった尻尾を振り、嬉しくてたまらない様子で、克己の口元をなめようと身を乗り出す。他の人間に対するときとはまるで違う。そして克己はトの一を「烈火」と名前をつけるくらい可愛がっている。一方ヌの七は「安穏あんのん」だが、克己以外は誰もそう呼んでいないと、幸造は呆れたように言っていた。もっとも「チビ」なんてどこにでもある名前よりずっとましだと五作は思ったが、幸造には黙っていた。

「は、はい、あの、最初は唸られたんですが、今は大丈夫です」

「ふむ、珍しい。烈火ときたら、わたし以外には悪鬼のように吠えるし、噛むからね」

 幸造がひどく吠えたてられているのを五作は見たことがある。何年も世話してきていても、あんなに吠えられるのだ。

「仕事は慣れたかい?」

「は、はい」

 掃除しかしていないので、慣れたと言っていいのかわからないが。

「ふむ、その着物はわたしの古いものを仕立て直したんだね。少々地味だが、当座は仕方あるまい。ウメさんがわたしの箪笥を整理して、着てなかったものは全部出していたから、他にも縫ってもらったかい?」

「はい。ありがとうございます。着替えをいただきました。半纏も。足袋は縫い縮めていただきました」

 克己の乳母だったというウメと、女中のソデ、その娘の綾乃あやのの三人がかりで、あっという間に縫ってくれた。

 五作はこんないい着物を着たことがなかった。家にいたころは兄たちのおさがりの擦り切れた着物と、縄にぼろきれを巻いた腰紐、素足に草鞋だった。奉公先でも、着古したつくろいの目立つ着物をもらえることが年に一、二度あったくらい。ここに来るときに来ていたのはその中でも一番ましなものだったのだが、五作を見るなり、克己はウメに着るものを用意するよう言ってくれたのだ。

 今着ているのは多少の色あせはあるものの、どこも破れていない絣、使い込まれた分柔らかくなって扱いやすい角帯。それに足袋は初めて履いた。縫い縮めたところがごろごろするとはいえ、足がこんなに温かいのは初めてで、冬中真っ赤になっていたしもやけがほとんど治ってきている。下駄は大人のお古で、小さくすることができないからちょっと履きにくいが、草鞋と違って、石を踏んでも痛くないのが嬉しかった。

「ふむ。まあ、当座は寒くなくてよしとしなくてはね。ああ、安穏を運動場に連れていってやっていいよ。烈火はわたしが連れていくから。烈火が一緒だと他の犬がいるところへ出せないんだろう」

「は、はい」

 可愛がっていても、トの一の悪癖はわかっているらしい。

「掃除にいつまでかかってるんだ? …あ、社長」

 幸造が勢いよく犬舎に入ってきたが、克己がいるのに気づいてしおしおとなる。

「わたしが掃除の邪魔をしていたんだよ。五作を怒らないでやってくれ」

「あ、怒るなんて、そんな」

「うん」

 飄々とした様子で克己はトの一を抱いたまま、作業室のほうへ向かう。

「安穏を運動場に連れていってやってくれ」

 そう言いおいて。

 幸造は克己の姿が消えるまでぺこぺこしていたものの、くるっと振り返り五作をにらんだ。

「社長となんの話をしていたんだ?」

「え、あの、仕事は慣れたか、とか、そういうことを…」

「社長は研究をしていれば幸せって人だから、煩わせるんじゃないぞ」

「はい」

 幸造は、ふん、と息を吐くと、ヌの七を抱き上げ、

「さっさと掃除を終わらせたら、倉庫の整理をするんだ。荷物がぐちゃぐちゃになってたぞ」

 運動場へ向かった。人懐っこいヌの七は幸造が抱き上げても尻尾を振っていたのが、五作には恨めしく思えた。


 橘克己は遺伝子操作の天才だ。教育は尋常小学校に通っただけにすぎないが、趣味人の祖父の影響を受け、多くの書物を読み、ほとんど独学で遺伝子操作を覚えた。彼の祖父は小さな商店を営んでいたが、店はもっぱら妻に任せ、花の品種改良に熱中した。椿や花菖蒲、多くの美しい、または奇怪な花を創り出し、愛好家たちを熱狂させた。ただ、祖父は営利に走ることを嫌い、花を売る相手を厳選した。もし染井の植木職人たちに乞われるまま売っていれば、一財産築くことも可能だっただろう。

 そんな祖父を見ながら育った克己も好きなものしか創らないし、商売っ気がない。

 克己の創った手のり犬はまず趣味人、それから外国人居留地の金持ちたちに人気になった。克己の妻のセツはかつて外国人居留地で女中奉公をしていて、英語と仏蘭西語フランスごに堪能で、手のり犬の輸出を手がけるようになった。その後、手のり猫も創出し、橘商会は大きくなった。今では銀座に事務所をかまえ、大きな畜舎を郊外に持つまでになった。経営は妻のセツが担当し、克己は研究室につめっぱなし、好きなだけ研究に没頭している。畜舎隣りの社員寮には研究で遅くなったときのために、克己の部屋が用意されているが、ほとんどそこが自宅になっている。妻が暮す本宅があるというのに。克己の乳母をしていたウメが社員寮で暮らし、研究以外は無頓着な克己の世話をしている。

 セツは時々こちらに来ることがあるらしいが、五作はまだ会ったことがない。



 一体自分は何をしているのか。

 桐油紙の合羽は濡れるのを防いでくれるが、車夫のようなものを着て、身をやつしているのがみじめで耐えられない。自分は能力があり、こんな下働きのようなことをするためにいるんじゃない。

 冷えてきた尻を持ち上げ、手でこする。油紙で包んだ荷物の上に座っていても、地面から冷たさが少しずつ伝わってくるのだ。懐に入れた温石おんじゃくに冷えた両手をあてて、温もりを得る。もう春だというのに、じっとしていると寒くてたまらない。温石を取り出して、しばらく腰と尻にあてがった。里近くの傾斜がある雑木林の地面には昨年の秋に降り積もった落ち葉が、半ば崩れた姿で湿り、脚絆にも着物にもべったりと貼りついた。腰かける倒木一本ありゃしない。強い風で枝が折れようものなら、村の人間が早々に拾いに来て、薪にしてしまうからだ。実際、子供が薪拾いに来たときには、慌てて身を隠した。山菜採りにはまだ早い時期なのが救いだった。

 木の陰から、大きな畜舎と社員寮の両方の入り口を見張り、人の出入りを観察する。

 あの畜舎以外何もない田舎に、よそ者がいては目立つ。しかもこんな雑木林に。畜舎には時々、外から訪問者があるが、敷地の外にいるよそ者は明らかに不審者だ。畜舎ができ、そこで働く者の寮の賄いに、作物を買い上げてもらうことで村人は副収入を得られるようになった。畜舎のために電話線を引くという話もあるという。村長はじめ、村人の多くは畜舎の存在を歓迎しているし、細かい事情は知らないまでも、警備員がいる、高価な動物を育てているところだとは理解している。畜舎にとって不都合になりそうなよそ者には、すぐに巡査を呼ばれてしまう。

 一体いつまでこうしていればいいのだろう。



 倉庫の整理をしていたら、昼食時間に間に合わなかった。幸造はよくこういう嫌がらせをする。以前に働いていたところでもそんなことはあったし、五作はあきらめがついていた。時間を過ぎたら昼食は抜きだと。ところが、ここ橘商会の社員寮では、母ソデとともに女中勤めをしている彩乃が、五作のために食事をとり置いてくれる。もっとも五作のためだけでなく、他の社員のためにも同様で、ウメが食事抜きではちゃんと働けまいと言うからだそうだ。克己の元乳母だったウメの言うことに逆らうものは、克己も含めて、社員寮にはいない。

 五作が行くと、食堂には、裁縫をしながら彩乃が座っていた。後頭部の高い位置で髷を作りこうがい(二股の串状の髪留め)で留めた簡便な髪形、やや褪せのきている紬の着物に前掛けをしている。美人というのではないが、愛嬌のある顔をした優しい少女だ。

「お疲れさま。また幸造さんがお昼までに終わらない仕事を言いつけたんでしょ」

 縫い物を卓に置くと、袂を帯の間に押し込んで邪魔にならないようにしながら、配膳口の横の戸を通って台所へ行き、味噌汁をよそい、握り飯、漬物と一緒に五作に出してくれる。

「ありがとうございます」

 綾乃は一つ上、去年まで尋常小学校に通っていた。四歳のときに父が死に、母の実家に身を寄せたのだが、ひどく肩身の狭いを思いをしていたので、その後住み込みで母子そろって前の畜舎近くにあった社員寮に働きに来た。当時はまだ綾乃が尋常小学校に通う年齢で、放課後に母親の手伝いをしていた。ウメと同じ部屋で寝起きしていて、「本当のおばあちゃんみたい」と慕い、裁縫を習った。今では目が弱くなったウメの分も縫い物をしている。

 五作が盆を受け取ると、綾乃は裁縫に戻った。

 味噌汁はまだ温かかった。火を弱めたかまどに鍋をのせたままにしてあったらしい。味噌の香りはすっかりとんでしまっているが、五作はそんなことを考えもしない。味噌の味がして、菜っ葉と若芽が入っていて、しかも温かい。それで恵まれていると思う。味噌汁をすすって嬉し気なため息を漏らしたのを、綾乃が見て微笑んだ。

 実際、橘商会の社員寮は恵まれている。初めて食事をしたとき、白米が半分も混じっていることに、五作は仰天した。それまで奉公に出た先では、麦飯に一、二割玄米か白米が混じっているのがせいぜい、自分の家では白米はもちろん玄米もお目にかかることはなく、麦すら足りなくて、稗や粟、大根やなにやで嵩ましをしていた。感激している五作を横目に幸造は、「もうけてる会社なのに、けちくせえなあ。半分も麦が混じってる」と文句を言ったが、ソデに「幸造さんも初めて寮でごはんを食べたときは、白米が半分も入ってるって、感激してたじゃないの」とあきれられ、なんのかのと言い訳してごまかしていた。米の割合が多いのは、夜勤のある警備係たちが、時間差で食事を摂ることがあるからだ。麦より米のほうが時間がたっても悪くなりにくいので、握り飯を作って置いておけるという実利的な理由がある。

 橘商会は確かに業績のよい会社だが、社員寮の食事がこれだけよいのは珍しい。五作はここに来てから一度も空腹をこらえながら寝なくてよくなったことが嬉しくて仕方なかった。そしてたいていの会社や商店では、経営者と使用人は食事に差があるが、克己が社員と同じものを食べているのにもびっくりさせられた。克己は自室で食事をするが、それを運ぶウメの持つ盆には、五作たちと同じ献立が並んでいたのだ。

「克己さんは食事に頓着しなくて。わたしが持っていかなきゃ食べるのも忘れてしまわれる」

 と、ウメが苦笑していた。

 食べることに頓着しないのは、食うに困る体験がなかったからなんだろうと、五作は思う。自分は食べ物のことばかり考えてしまう。食事が楽しみで仕方ない。幸造は嫌がらせをして、食事の時間に間に合わないように仕事を言いつけるが、遅くなってもちゃんと食べ物が残されていて、先輩の目を気にせず食べられるほうが実は嬉しかった。出来立てで香りのよい熱々の味噌汁や、炊き立ての湯気を上げるごはん、そんな贅沢を味わおうというより、緊張せず空腹を満たせるのが嬉しかったのだ。

 五作が大きな握り飯をほおばっていると、ひょろりとした若い男が静かに入ってきた。

「湯本さん、お疲れさま」

 綾乃がまた台所へ行く。

 やってきたのは遺伝子操作技師の湯本篤志ゆもとあつしだった。

「うん。ああ、みんなもう済んじゃったんだね」

「はい、湯本さんで最後です」

「そうかあ。きりのいいところまでって思ってたら、遅くなってしまった。ああ、ありがとう。わあ、握り飯は一個でいいよ」

 湯本は帝国大卒で、仕事内容も給金も他の社員たちとは一線を画していて、陰で「学者さん」と呼ばれていた。

 五作が二個もらっている握り飯を一個だけにしてもらい、頭を下げる五作に「うん」と言うだけで、食べ始める。学者さんで、他の社員とはあまり交わらない。綾乃のことは気に入ってるらしく、食事のときはよく話をしていた。

「それ、克己さんの着物?」

「はい。いい柄でしょう?」

「ウメさんの見立て?」

「いいえ、奥様だそうです」

「ふーん」

 五作は黙々と食べ、会話には加わらない。

 そうするうち、遠くから人力車が近づくがらがらという音がしてきた。村はずれにぽつんと建っているので、ここに向かっているのは明らかだ。この先は雑木林しかない。

「お客さまかしら」

 綾乃は縫い物を置き、腰を浮かせる。

「ソデさんかウメさんが出るんじゃない?」

「いいえ、わたしの仕事ですから。それにウメさんたちは家事室で火熨斗ひのし(アイロン)をかけたり、忙しいんです」

「綾乃ちゃんは働き者だねえ」

 言ってるそばから、車が止まり、玄関で「すいやせーん」と声がかかった。綾乃が出ていく。

 五作は二個目の握り飯にかぶりついていた。綾乃の手が空いていたら、味噌汁のおかわりをよそってくれるところだが、忙しいのにそんなことは頼めない。幸造に怒られないよう、急いで食べ終えることにした。

「食べているところ、ごめんなさい、五作さん、旦那さまを呼んできてくれない? 洋介ようすけさんがおいでたと言って」

 綾乃が戻ってきて言った。

「わたしは畜舎に入れないのよ。警備員さんが入れてくれないの」

「はい」

 口の中のごはん粒を飲み込み、五作は立ち上がる。洋介さんって誰だろうと思いながら。

「また来たの?」

 湯本は呆れた様子だ。

 綾乃は台所で茶の用意を始める。

「あんなのに茶なんかいらないと思うけどなあ」

「そんなわけにいきません」

 五作が玄関に出ていくと、二十歳くらいの男がちょうど洋靴を脱いでいるところだった。インバネス、ときにトンビと揶揄される洋外套は黒いが、中に派手な色の着物と袴を身につけ、洋靴は扱いが荒いのかかなり傷んでいる。ずんぐりとした体形で、手がきれいだ。肉体労働などしたことがないに違いない。

「使用人は勝手口を使え」

 居丈高ににらんでくる。

「すみません」

 ここは社員寮で、社員は玄関を使うことになっているのだが、五作は謝った。自分の下駄は玄関の下駄箱にあって、勝手口は台所にあるのだから、玄関から出るしかないのだ。

「使用人風情が!」

 ふん、と言うと、勝手知ったる様子で男は客間に入っていく。克己がもっぱらここにつめているので、社員寮の和室が客間として使われているのだ。

 こういう人間には慣れていたので、五作は気にすることもなく外に出た。玄関に人力車が停まっていて、車夫が今のやりとりを聞いていたのだろう。

「うるせえ御仁だなあ」

 と、五作に笑ってみせた。さっき「すいやせーん」と叫んでいたのと同じ声で、どうやら客は取り次ぎすら車夫にやらせたようだ。鯉口の上っ張りと股引という動きやすい格好で、首に巻いた手拭いを外し、顔を拭いていた。

「あんなわけぇのが、ずいぶんとご立派な態度でなあ。どこの御曹司だい?」

 車夫は日に焼けているので老けて見えるが、実際は三十は越えていないようだ。標準語を話す者がほとんどの昨今、お爺さんみたいな江戸言葉は、客が車夫に求めるものを彼なりに演出しているように思えた。

「わたしはここに来て間がないので存じません」

「そうかい。御曹司にしちゃあ、くたびれた格好だし。おいおい、ちゃんとお足を払ってくれるのかよ。心配しんぺぇになってきた」

 五作は自分の意見は言わずに会釈だけして、畜舎に戻った。玄関の間には警備係の曽根そねがいて、椅子から立ち上がりもせず、じろりとにらむ。元々士族の出身という曽根は四十過ぎで、眼光鋭く、こちらに特に後ろめたいことがなくてもぎくりとしてしまうのだ。それでなくとも、警備員たちは巡査みたいな洋服を着ているので威圧的なのに。

「お、お疲れさまです。あの、旦那さまにお客さまがみえているので、お呼びしなくてはならなくて」

 しなくていい言い訳をしてしまう。五作はそもそも畜舎で働いているので、曽根の許可がなくても出入りはしていいのだ。

 曽根は、入ってよしというふうに顎を動かした。

「はい」

 曽根が偉そうだと、幸造は文句を言っていた。没落した元士族など山ほどいて、あんな威張る権利などないと不満たらたらだった。曽根の立ち居振る舞いは明らかに農民とは違い、剣の心得もあるのは隙のない仕草で知れる。元士族は警察官や兵士になる者が多い中、私会社の警備係になったのは、年齢か、偉そうな態度のせいで、公の勤めにはなれなかったからかもしれない。夜勤もある警備係は、彼らだけで一部屋に寝ていて、五作たち畜舎の担当とは交流があまりないため、曽根の事情はわからない。だが少なくとも他の警備係は五作があいさつすれば返事をしてくれるのに対して、曽根は顎を動かすだけだった。

 曽根のわきをぬけ、畜舎に入ると、土間廊下の一番奥を目指す。作業室には鍵がかかっているが、扉の横に紐が二本下がっていて。それぞれ作業室と研究室の中の鐘を鳴らすことができる。五作は研究室と札がついたほうを引いた。しばらく待つと、

「うん、なんだい?」

 克己が顔を出した。着物の襟元が下がって懐が膨らんでいて、赤茶色の尻尾が少しだけ出ている。トの一を懐に入れていて、当のトの一は眠っているようだ。

「旦那さま、洋介さまというお客さまがおみえです」

「洋介かい? うーん、また来たのか。あの子は客とは言えないねえ」

 苦笑した克己に、五作はおろおろした。

「あ、あの、お通ししてはいけなかったのでしょうか?」

「いやいや、五作は悪くない。通すもなにも、勝手に上がっていっただろう」

「は、はい」

「いいんだ、いいんだ。わたしが出ないと、会社の者を困らせるだけだからね。ふむ、いいかげんにさせないとな」

 ぶつぶつ言いながら扉に鍵をかけ、廊下を進む。五作は食事の途中だったので、あとをついていった。

「五作はこんな時間にお昼かい?」

「は、はい」

「時間になったら、よっぽどのことがなければ作業の途中でもお昼に行っていいんだよ」

 どうして自分が遅い昼食を摂っているのがわかったのだろうと、五作は首をかしげてしまった。

「鼻の頭に紫蘇の小さいのがついてる。綾乃が握り飯に入れてたんだろう」

 克己は振り返って微笑んだが、五作は真っ赤になって鼻をこすった。

 克己が行くと、さすがに曽根は立ち上がったが、軽く会釈するだけだ。

「うん」

 しかし克己も気にする様子はなく、すたすたと畜舎を出る。多分、克己くらい頓着しない社長のところでしか、曽根は雇ってもらえないに違いない。普通、社長にはちゃんとお辞儀をするものだ。

 玄関では車夫が茶を飲んでいた。綾乃は車夫にも茶を運んだらしい。

「どうも。いただいてます」

 車夫は克己に頭を下げ、克己が「ご苦労さま」と声をかけて社員寮に入っていき、五作が続こうとすると引き止めた。

「今の人、誰だい?」

「旦那さ…、社長です」

「えっ? あんな若ぇのかい? うわあ、しまった、もっとちゃんと挨拶しとくんだった」

 まいったまいった、と言いながら笑っているので、本当にまいっているのかわからない。

 五作が食堂に戻ると、残りの握り飯の横に、味噌汁のおかわりがよそってあった。

「あ、ありがとうございます、綾乃さん」

「どういたしまして。旦那さまを呼びにいってくれてありがとう」

 綾乃は本当に気働きのできる少女だ。

「あのう、洋介さんってどなたですか?」

「旦那さまの甥ごさん」

「しょっちゅう来るんだよ。克己さんに子供がいないから、自分がこの会社を継ぐと思い込んでるんだ」

 湯本が横から言う。

「学校も行かずにふらふらしてるくせに。克己さんに小遣いをせびったり、ろくでもない奴さ。あんな奴が会社を継げるわけない。もしそんなことになったら僕は辞めるよ。克己さんが社長だからこの会社に入ったんだ。あんな馬鹿の下でなんか働きたくないね!」

「湯本さんは旦那さまを尊敬してらっしゃるから」

 綾乃はにこにこしている。

「克己さんは天才だからだよ。自慢じゃないけど、僕は子供のころから秀才って言われて、自分でもうぬぼれていたけど、克己さんの創造力の前には自分なんてただ暗記が得意なだけだって思ったよ。克己さんみたいな天才は大学にも一人もいなかった」

「旦那さまは湯本さんが正確に作業をなさるって感心してらしたわ。旦那さまだけで作業をされていたときは、大雑把なせいでぽち犬がなかなか妊娠しなくて困った、って言ってらしたもの」

「いやいや、そんなことは」

 綾乃の言葉に湯本が赤面する。

「とにかく、僕の代わりならいるけど、克己さんの代わりはいないんだ。克己さん以外が社長をしたら、この会社はつぶれてしまうよ」

 会社がつぶれたら困る!

 五作は本気で心配した。

 大好きな動物と一緒だし、食事はちゃんと出るし、着物までもらって、こんなにいい仕事場は初めてなのに!

 心配が表情に出てしまったようで、綾乃がとりなす。

「五作さん、旦那さまが社長を誰かに譲るなんてないんですよ。もしそんなことが起こるとしても、何十年も先だから。だって旦那さまはとてもお若いもの」

「うん。ないない。あんな甥っ子に社長を譲るなんて、克己さんは全く考えてないよ。むこうが勝手にそう思い込んでるだけだから」

「…本当に?」

「ええ、本当です」

「ああ、本当だよ」

 …よかった。

 五作は息をつく。

「いやあ、悪い悪い。そんなに心配すると思わなかった」

 湯本は頭をかいた。

「五作さんは事情を知らないから仕方ないです」

「ごめんよー! どなたかおいでるかいー?」

 台所の勝手口から声がかかった。

「はーい」

 綾乃がすぐに応対に出る。

「新聞をもらいに来たんだ」

 配膳口のむこうから声だけが聞こえる。

「あ、はい。先週の分を紐で縛ってあります」

「これかい?」

「はい、どうぞ」

「いつもありがとう。社長さんにお礼を言っておいて」

「わかりました。お疲れさま」

「そんじゃ、また」

 すぐに戻ってきた綾乃は五作に、

「毎週、村の尋常小学校の小使いさんが新聞をもらいに来るんです。村で新聞をとっているのはここと村長さんだけだから。古新聞を子供たちがお習字の練習に使うんです。でも、お習字に使う前に、先生たちや村の人が読んでるんですよ。一週間遅れでも、新聞を読めるのが嬉しいから。旦那さまが読んだあと、食堂に出して、みんなも読んでいるでしょう」

 と、説明してくれる。五作は頷いた。もっとも食堂に置かれている新聞には気づいていたが、五作は尋常小学校にろくに通っていないので、仮名は大丈夫でも、漢字がほとんど読めないし、手に取ろうとも思わなかった。ふり仮名がうってあっても、話し言葉とは違う文章を読み遂げることができないのだ。

「五作も新聞くらい読んだほうがいいよ」

 湯本はこともなげに言う。字を読めない人間なんて想像もつかないのだろう。

「錦絵新聞がいいって、文句を言ってたのがいたなあ。あんな俗なもの、小学生に見せられない」

「錦絵新聞って俗なんですか?」

「綾乃ちゃんは見たことがないか。大学にいたときに見たことがあるけど、怪奇現象だとか、役者の噂話とか、非科学的で馬鹿々々しいことばかり書いてあるんだよ。飛行船が飛ぶ時代に!」

 でも、絵が入っていたら、漢字が読めなくても内容がわかるな、と五作は思った。

「ごちそうさまでした」

 盆を配膳口に返すと、畜舎に戻るため玄関に出た。

「おう、ぼうず、湯飲みを嬢ちゃんに返しておいてくれ。うまかった、ありがとってな。客は座ってるだけだが、こちとら、走ってくるんで、喉が渇くんだよ」

 車夫に頼まれ、食堂に引き返すことになったが。


「それで、今日はなんの用だい? わたしは仕事中なんだけどね」

 克己は洋介を睨む。

「そう、仕事ですよ、叔父さん」

 洋介はまるで気にしない。

 客間は和室だが、西洋風の卓と椅子が置いてある。外国人の客が畜舎を見に来ることがあるためだ。二間続きになっていて、奥の和室に布団を敷いて客が泊まることもできる。

「僕もそろそろ仕事を覚えたほうがいいと思うんです。母さんも…」

「義姉さんの意見はいいよ」

 洋介の母ツタは次男坊を溺愛している。兄嫁だけにたててきたが、克己は彼女にうんざりしていた。

「仕事なら兄さんに相談しなさい。店をやっているんだから、わたしよりよほど顔が広いし、あてがある」

「またまた、叔父さん。僕はこの会社を継ぐんですから…」

「洋介に会社を継がせる気なんかないよ。大体、洋介は遺伝子操作をしたこともないじゃないか」

「僕も習ってないし…。叔父さんが教えてくれたら…」

「わたしは祖父が花の品種改良をしているのを、見よう見まねで覚えたよ。祖父は別に教えてくれなかった。あとは書物だね。わたしは教えられないし、教える気もない。以前からそう言ってる。自分で覚えられなければ、遺伝子操作は大学で教えてくれるよ。入学試験に通れば、兄さんは君の学費くらい出してくれるだろう。自分で学ぶでもなし、大学に行くでもなし、それでどうやってこの会社をやろうっていうんだい」

「研究者を雇えばいいし…。叔父さんだって帝国大を出た研究者を雇っているし…」

「湯本君は研究ではなく、遺伝子操作の作業をしてくれてるんだ。それに自分で新しいものを創りだせるほど才能のある研究者がおとなしく誰かに雇われるとでも?」

 克己の言葉にしょげる様子もなく、洋介は、いいことを思いついた、というふうに笑顔になる。

「僕は研究ではなく経営をやります。叔母さんがそうでしょう」

「自分の小遣いの管理もできない人間が経営を? そもそも人力車の金は払ったのかい?」

 金の話になったので、洋介は我が意を得たりという表情になる。

「ああ! それは叔父さんに…。それと今月は色々と入用で…」

「無賃乗車をして、人に小遣いをせびりにくる人間が経営なんてできるものか」

「まさか叔母さんの親族に会社を継がせるつもりじゃないでしょうね? あいつらにそんな権利はないんだ」

 のらりくらりとしていたのが、急に真顔になった。すると克己の襟元から、トの一が顔を出し、唸り始めた。

「うわあ、叔父さん、こいつ、生意気に唸ってる!」

 克己はため息をつくと、トの一を撫で、

「せめて外国語でも勉強したらどうだ? セツさんは英語と仏蘭西語が話せるよ。セツさんと『びじねすとーく』ができるようになってから出直しなさい」

 立ち上がって客間の戸を開け、廊下に向かって叫んだ。

「綾乃! わたしの部屋から書き付けの紙(メモ用紙)と万年筆を持ってきてくれないか!」

 食堂のほうから「はい!」と声が返った。しばらくすると、綾乃が言われたものを持ってくる。

「ありがとう」

 克己は卓に戻ってさらさらと書き、

「さっさと帰りなさい。わたしは研究を邪魔されるのが嫌いなんだよ」

 玄関へ出ていく。

「え。叔父さん、それはないですよ」

 洋介が追いかけた。

 克己は洋介にかまわず、下駄をつっかけると、車夫に声をかけた。

「ここに書いた住所に彼を送ってくれないか。彼の父の店だから、運賃を払ってくれる。橘商会までこの子が無賃乗車をしようとしたってね。この書き付けを見せればわたしの字だってわかるし、必ず彼の父に言うんだよ。彼の母は払ってくれないかもしれないから。迷惑をかけてすまないね」

「へい」

 車夫は書き付けをおしいただくようにして受け取ったあと、住所を見ると懐にしまった。克己が社長と知って、丁寧に接している。

「ちょっと、叔父さん、僕はまだ帰りませんよ。まだ何も…」

 追いかけてきた洋介は、洋靴に足を入れただけで、紐を結んでいないので、よたよたしている。

 トの一がまた襟元から顔を出して、洋介にむかって唸った。車夫が、ひゃあ、っこいのに活きのいい犬だ、と声を上げたが、社長の前なので慌てて口を押える。克己はトの一をなだめ、懐に戻した。

「それから、他の車夫にこの話をして、前金以外で彼を乗せないよう、注意してくれるといいね。何度も彼の父が払うとは限らないから」

 車夫たちは客待ちのための溜まり場がいくつもあって、話はすぐに広まる。

「へい」

 車夫はにやりとした。

「叔父さん…」

「わたしは払わない。ほら、行って」

「でも…」

「帰りなさい」

 普段とはまるで違う、厳しい顔になった克己に、さすがの洋介もすごすごと人力車に乗り込む。

「こちとら、お足をいただけるところに行くだけで。失礼しやす」

 車夫は頭を下げ、威勢よく走り出した。

 郊外から東京の中心に向かう人力車は、途中で自動車とすれ違った。

 おお、あいつぁ舶来の車じゃねえか。立派だねえ。あんなのに乗るのは間違まちげぇなくお大尽さまだ。この先は雑木林だから、さっきの会社に行くんだろう。若ぇ社長だったが、やり手に違ぇねえ。あんなお人にひいきにしてもらいてぇもんだね。

 車夫は胸のうちで独りち、忘れないように、橘商会、橘商会と繰り返した。


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